30位 オールウェイズ『ブルー・レヴ』


一言で言い表せば:傷心から高揚へとシームレスに移行する人の心を魅了するインディ・ポップ。

ディストーションのギター、鋭い歌詞、贅沢な楽器陣を擁するカナダ発のバンドによる5年ぶりのアルバムは、より深い夢見心地のポップの領域へと果敢にも挑む内容となっている。“Pomeranian Spinster”の勢いから“Velveteen”における「Is she a perfect 10? Have you found Christ again?(彼女が10点満点なの? またキリストを見つけたってか?)」というモリー・ランキンによる繊細でパワフルな皮肉まで、『ブルー・レヴ』はそれぞれの瞬間が、迫り来る傷心を恍惚とする魅力的なときめきへと変えている。

鍵となる楽曲:“Pharmacist”

『NME』のレヴュー:「『ブルー・レヴ』は障壁にもかかわらず進化し続けること、ゆっくりでも自分の技能を磨いていくこと、動き続けることへの讃歌になっている」

29位 ファーザー・ジョン・ミスティ『クロエ・アンド・ザ・ネクスト・20センチュリー』


一言で言い表せば:フォーク界のフロントマンがこれ見よがしな再発明について延々と語る。

ジョシュ・ティルマンは無愛想で、名声に苦手なアルター・エゴでもってキャリアを築いてきた。しかし、最新作で元フリート・フォクシーズの人物は仮面の影に隠れるのを止めて、エンタテイナーという役割を引き受けた。坊主頭に上品なスーツ、洗練されたダンスの動きで大変身を遂げ、ビッグ・バンドの“Chloë”、きらめくピアノ・バラードである“Goodbye Mr. Blue”、実験的なボサ・ノヴァ“Olvidado”といった曲で昔ながらのハリウッドにふさわしい輝きを加えている。彼が振り返ることはこれからもないだろう。

鍵となる楽曲:“The Next 20th Century”

『NME』のレヴュー:「アルバムの多くはウインクと共に届けられ、過去の作品と同じくドラマチックなほど暗いものとなっている。すべての曲が鮮やかでありながら、様々な嘆きを呼び出すほど極めてダークなのだ」

28位 フレッド・アゲイン『アクチュアル・ライフ(2022年1月1日~9月9日)』


一言で言い表せば:引く手数多のプロデューサーであるスターは静的でありながらクラブが求めるサード・アルバムで上昇を続けている。

UKにおける第一線のダンス・ミュージックのプロデューサーにしてDJという立場を確立したフレッド・ギブソンにはかつてないほど注目が集まっている。2022年はスウェディッシュ・ハウス・マフィア、フューチャー、ザ・エックス・エックスのロミーなど、数々のアーティストとコラボレーションを行ってきたが、フレッド・ギブソンは今年、時間の合間を縫って『アクチュアル・ライフ』の第3弾をリリースして、率直でカタルシスのあるバンガー溢れる世界を友人やミュージシャンと共にさらに掘り下げている。2023年以降もフレッド・アゲインによるダンスフロアの制覇が続くことは想像に難くないだろう。

鍵となる楽曲:“Delilah (pull me out of this)”

『NME』のレヴュー:「フレッド・ギブソンは思慮深い表現と静的な感情を求めることで単につらいことでレイヴしたいというアルバムとはバランスをとってみせている」

27位 スティーヴ・レイシー『ジェミニ・ライツ』


一言で言い表せば:今年の悲しみのヴェールを剥がしてみせた快楽性の高いファンク・フュージョン。

2022年、笑顔はあまり見られなかったが、スティーヴ・レイシーによる恐れ知らずのファンキーさによるセカンド・アルバムはムードを明るくしてくれるのに一役買った。ものすごくスムースな1曲目の“Static”は耳から離れないR&Bで、大振りなリフとザラついたシンセによる“Bad Habit”はスティーヴ・レイシーにとって初の全米ナンバー1ヒットとなった。官能的なソウルの“Sunshine”でドーパミンが一気に放出され、蛇行して進む“Give You The World”で締めくくられることになる。さあ、悲観的になるのを止めて、携帯電話を下ろして、スティーヴと踊りに行くのだ。

鍵となる楽曲:“Sunshine”

『NME』のレヴュー:「これほど生き生きとした音楽的パレットを自由に使えるのだから、歌詞に力を入れなくても音楽に語らせることは簡単なことだったのだろう。でも、『ジェミニ・ライツ』では一皮むけたのだ」

26位 ロイル・カーナー『ヒューゴ』


一言で言い表せば:アイデンティティに関する力強い検証の中でパーソナルと政治が出会うことになった。

初期の作品で見られた気楽なアプローチを控えて、3枚目のアルバムで頭の回転の速いロイル・カーナーは新たな目的意識を提示してみせた。常連プロデューサーのクウェス、詩人のジョン・アガード、若き活動家のエイシアン・アケックといったコラボレーターを迎えて制作された『ヒューゴ』で英国系ガイアナ人ラッパーは答えよりも疑問を投げかけ、構造的人種差別を批判し、混血としての遺産の鍵を開け、複雑な父親との関係性に向き合おうとしている。

鍵となる楽曲:“Hate”

『NME』のレヴュー:「サード・アルバムでロイル・カーナーは世界に自分自身をさらしてみせた」

25位 ドライ・クリーニング『スタンプワーク』


一言で言い表せば:南ロンドンの4人組は非現実的なセカンド・アルバムで予想外の痛快さをもたらした。

フローレンス・ショウが語るように歌う歌詞が湛える潜在意識の奇妙なロジックは『スタンプワーク』でこれまで以上に狂気と混乱に満ちたものとなっている。ジャングリー・ポップ、ディープ・ファンク、ストーナー・ロックなどを網羅するドライ・クリーニングによる新たなサウンドの冒険と相俟って、バンドはこれまで謳歌したことのないレベルの自信を手に入れることになった。楽しさを織り交ぜながらも、ドライ・クリーニングは『スタンプワーク』をパーソナルな悲劇を受け入れる機会として活用している。完成度の高い成熟した作品と言えるだろう。

鍵となる楽曲:“Anna Calls From The Arctic”

『NME』のレヴュー:「何はともあれ、ドライ・クリーニングはセカンド・アルバムで独自の存在であることを証明した」

24位 ビッグ・シーフ『ドラゴン・ニュー・ウォーム・マウンテン・アイ・ビリーヴ・イン・ユー』


一言で言い表せば:実験的でありながら凝縮された20曲のダブル・アルバムでフォーク・ロッカーたちは自分たちの可能性を広げてみせた。

最初の4枚のアルバムを通してビッグ・シーフは至福のフォーク、枯れたサイケ、埃っぽいロックに身を投じてきた。通算5作目となる20曲のダブル・アルバムはタイトル通り、乱雑で無秩序でありながら、これまで以上に地平を広げている。フォークダンス調の“Spud Infinity”、リード・ギターが刻まれた“Simulation Swarm”まで、本作は音楽的にもテーマ的にも一貫性はないが、20曲の疑いようのない強度がそんなことはどうでもいいことを示している。

鍵となる楽曲:“Time Escaping”

『NME』のレヴュー:「アルバム全体を通してビッグ・シーフならではのゆるさが存在している」

23位 ヤー・ヤー・ヤーズ『クール・イット・ダウン』


一言で言い表せば:ニューヨークのロックの君主による熱き帰還。

インディ界のアイコンが2013年に『モスキート』をリリースしてから10年近くが経過したが、今年9月にようやくヤー・ヤー・ヤーズの新作が姿を現した。わずか8曲というヴォリュームだったが、その成果はスタイリッシュかつパンチが効いていて、全曲キラーで捨て曲なし、荒々しくも成熟していて、簡潔ながら広がりのある作品になった。今年は2000年代のニューヨークのインディ・シーンを描いた映画『ミート・ミー・イン・ザ・バスルーム』でノスタルジーでいっぱいになったかもしれないが、ヤー・ヤー・ヤーズは明らかにレーザーで未来を見据えている。

鍵となる楽曲:“Wolf”

『NME』のレヴュー:「『クール・イット・ダウン』はバンドが後ろを向くのではなく、前を向くことで、いかに新鮮になれるかのクリエイティヴな証だ」

22位 デンゼル・カリー『メルト・マイ・アイズ・シー・ユア・フューチャー』


一言で言い表せば:ラップ界で最も多才なアーティストの1人による思慮に富んだメロウな実験作。

きらめくピアノとあたたかいジャズのサンプリングの上でラップするデンゼル・カリーは最も実験的なアルバムにおいてもリスナーを完全に掌握している。“Zatoichi”や“Worst Comes To Worst”といったパワフルなトラックではデンゼル・カリー特有のパンチ力で新しいサウンド領域を駆け抜けるが、アルバムではより抑制された豊穣なフローが展開されている。では、その総体は? これまでも期待に背くことでキャリアを築いてきたアーティストだが、そんな彼にとっても最高の成果だろう。

鍵となる楽曲:“Walkin”

『NME』のレヴュー:「プロジェクトの度にサウンドを刷新するのは大変なことだが、デンゼル・カリーはサウスのヒップホップにおけるルネッサンス・マンとして常に10歩先を行っている」

21位 ミツキ『ローレル・ヘル』


一言で言い表せば:カルトなインディ・アイコンは示唆に富むシアトリカルな形で活動休止から戻ってきた。

2018年発表の『ビー・ザ・カウボーイ』の後、ミツキは無期限の活動休止で世間の目から逃れることになった。有り難いことに彼女はずっと離れてしまうことはなく、偉大なる復帰作、通算6作目の『ローレル・ヘル』も間違いなく珠玉の作品になった。ナッシュヴィルを拠点とするミツキは脚光を浴びる自分の地位との関係を顕微鏡で観察して、“Working For The Knife”というタイトルにあるような鋭さでアートと自己の価値の有り様を見事に分析している。

鍵となる楽曲:“The Only Heartbreaker”

『NME』のレヴュー:「『ビー・ザ・カウボーイ』に収録の“Nobody”で孤独の感情を追求した上で、ミツキの探求は『何者』かになることに向かい、同じように説得力があることが証明されている」

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