10位 ザ・1975『外国語での言葉遊び』


一言で言い表せば:UKにおいて最大で最高のポップ・バンドは自分たちの道のりに目を向け始めた。

ザ・1975の通算5作目に収録された右肩上がりのメロディーのクオリティーは目を閉じた陶酔感のようでもある。これまでで最も整然としつつもパンチのあるリリースとなった『外国語での言葉遊び』はフロントマンのマット・ヒーリーのキャリアでも最良のソングライティングが収録されており、赤裸々でパーソナル、ないしはフィクションのストーリーテリングは『トップガン』の新作よりもイースターエッグが盛り込まれている。バンドがその名を知らしめた鋭い文化的言及の視点も失われることはなく、このレコードはサイリュームのように輝くマット・ヒーリーの愛のヴィジョンに的を絞っており、2022年ならではの待ち望まれた自由の感覚と共に生を感じることができる。

鍵となる楽曲:“Part Of The Band”

『NME』のレヴュー:「すぐに記憶に残る巨大なポップ・バンガーを書けてしまう要領の良さとザ・1975の近作に見られる複雑で神経質な歌詞の要素が組み合わされている」

9位 ロザリア『モトマミ』


一言で言い表せば:3作目のアルバムでスペインの煽動者は恐れ知らずの革新を続けている。

ロザリアはフラメンコのサウンドに実験的なポップ・ミュージックの意匠をブレンドすることでグラミー賞を受賞するスーパースターになったが、今回さらにその水準を上げてきた。フラメンコ、レゲトン、先進的なポップ・ミュージック、異形のR&B、「脱力系ゴスペル」と評される1曲など、目も眩むほどの福袋となった『モトマミ』はスリリングなのと同じくらい困惑させる内容となっている。嬉しいのはそこに愉快さもあることだろう。「ドラッグ・クイーンのメイクアップ」で変身することについて歌ったと思えば、ナオミ・キャンベルやフリオ・イグレシアスの名前も挙げていたりする。リスペクト。

鍵となる楽曲:“Cuuuuuuuuuute”

『NME』のレヴュー:「ロザリアは自身の道を切り拓いているというよりは、ウルトラ・モダンで曲がりくねった音速の高速道路を築き上げている」

8位 ノヴァ・ツインズ『スーパーノヴァ』


一言で言い表せば:ロックの反逆者がジャンルを超えた激しい喝を入れてきた。

DIY精神と共にこの2人組はド派手なロックのフレーヴァーにR&B、ラップ、ポップへの愛を盛り込んだセカンド・アルバムを作り上げ、自立性の促進、性的自由、抑圧の拒否について言及している。MOBO賞、ならびにマーキュリー・プライズにもノミネートされた本作で彼女たちはシーンでも無視できない地位を確立することになった。このアルバムはノヴァ・ツインズが独自の流儀でドアを蹴破った音なのだ。

鍵となる楽曲:“Antagonist”

『NME』のレヴュー:「ロック界における決定的な新しい声として支持されているノヴァ・ツインズだが、プレッシャーをものともせず、パワフルかつ遊び心のある華やかでファンタスティックなセカンド・アルバムを作ってみせた」

7位 シャーロット・アディジェリー&ボリス・ププル『トロピカル・ダンサー』


一言で言い表せば:ベルギーのデュオによるクラブ仕様のデビュー作は軽快さとユーモアをもって大きなトピックに取り組んでいる。

人種差別、女性蔑視、そして言うまでもなく社会的言説の崩壊に日常的に取り囲まれている中で、ゲントを拠点とする2人にとって『トロピカル・ダンサー』のリリースは決定的な瞬間になったことが証明された。ソウルワックスによるレーベルであるディーウィーと契約した2人はこのレコードで「被害者意識」を超えて自分たちの物語を取り戻すことができたと語っている。「怒りたいのなら、ぜひ」とシャーロット・アディジェリーは語っている。「でも、そんなことにこれ以上自分のエネルギーを使うつもりはない」その代わりにユーモアとやさしさ、ダンスフロアを熱くするナンバーが詰まったアルバムの頂点に君臨しているのは鋭い皮肉、拒絶的なコメントへのジャブ、痺れるようなビートなのだ。

鍵となる楽曲:“It Hit Me”

『NME』のレヴュー:「このコラボレーションではカラフルなダンス・ポップのメロディーに女性蔑視的なメディアへの意地の悪い痛烈で鋭い毒舌が対比されている」

6位 リナ・サワヤマ『ホールド・ザ・ガール』


一言で言い表せば:イギリスで最も特異なクリエイターの1人がスタイリッシュに戻ってきた。

「セカンド・アルバムの難しさ」というジンクスがあるが、それはあくまでジンクスだったようだ。2020年発表の傑出したデビュー・アルバムに続く『ホールド・ザ・ガール』は様々な影響を受けながらも、アルバムが扱うテーマやジャンルの裏には説得力をもたせる正直さがある。アルバムは音楽の坩堝ともなっていて、“This Hell”はシャナイア・トゥエインとABBAが出会ったようだが、ザ・コアーズ、『ティーンエイジ・ドリーム』期のケイティ・ペリー、グウェン・ステファニーのフレーヴァーも聴くことができる。そのすべてを踏まえると、その全体像はまさにサワヤマになっているのだ。

鍵となる楽曲:“This Hell”

『NME』のレヴュー:「ベスト・ブリティッシュ・ポップ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」

5位 ケンドリック・ラマー『ミスター・モラル&ザ・ビッグ・ステッパーズ』


一言で言い表せば:世界に衝撃を与えたラップの傑作

愛するゲームを5年間も傍観していたラップ界の絶対的な存在はついにフィールドに戻って、『ミスター・モラル&ザ・ビッグ・ステッパーズ』で同業者を圧倒してみせた。通算5作目となるアルバムはケンドリック・ラマーが誰よりも簡潔に社会を分析しながら「私はあなたたちの救世主ではない」と強調することで、逆説的な作品になった。しかし、このアルバムはなお癒やしの教訓を与えてくれる。自分の問題を言葉にすることが遠くへと連れて行ってくれることもあるのだ。10年前に会ったグッド・キッドは確かに成長していた。

鍵となる楽曲:“Count Me Out”

『NME』のレヴュー:「魂を剥き出しにすることでケンドリック・ラマーは世代の呪縛から自分たちも逃れられることを分かってほしいと願っている」

4位 フォンテインズD.C.『スキンティ・フィア』


一言で言い表せば:ダブリン発の5人組は冒険的で深い影響を与えるサード・アルバムで新境地を開拓した。

NMEアウォーズでベスト・バンド・イン・ザ・ワールド賞を受賞したことについて訊かれたグリアン・チャッテンはウインクと共に次のように答えている。「僕らの他のアルバムと較べても『この世代のバンド』というか、クレイジーな賛辞を受け入れられる作品だと思う。だって、今回はそれに値するからね」今のところ、最も倒すべきバンドの一つがフォンテインズD.C.だろう。

鍵となる楽曲:“I Love You”

『NME』のレヴュー:「よりよきアイルランドのための闘いには、その危機の深さを映し出す曲こそがふさわしい。際限なく心をつかむ栄光と共に『スキンティ・フィア』はそうした課題へと勝ち誇るように立ち上がる」

3位 ビヨンセ『ルネッサンス』


一言で言い表せば:スーパースターによる全曲捨て曲なしのアルバムはダンスフロアへと誘う声になっている。

ダンスフロアへの勝利の賛歌として彼女は黒人アーティストが先駆者となってきたハウス、ディスコ、バウンスといったジャンルを取り入れている。ボールルームの力を借りた“Alien Superstar”から、ビッグ・フリーダをサンプリングしたハウス・アンセムの“Break My Soul”まで『ルネッサンス』は力強く官能的かつ華やかで、「力を抜いて楽しむ(release the wiggle)」以上の曲で埋まっている。

鍵となる楽曲:“Cuff It”

『NME』のレヴュー:「ビヨンセは『ルネッサンス』で彼女のレパートリーに輝かしいアルバムを追加することになった。今回はブラック・カルチャーをハウス・ミュージックやダンス・シーンへの最前線へと戻す使命の先導的な役割を果たしていく作品となっている」

2位 ウェット・レッグ『ウェット・レッグ』


一言で言い表せば:このデュオはインディに活気と楽しさを取り戻すことになった。

ワイト島出身の2人は“Chaise Longue”の弾けるような陶酔感で2021年の夏を彩った奇抜なバンドに過ぎない可能性もあった。しかし、翌年、リアン・ティーズデイルとへスター・チャンバースが当然のごとく成功を収めるのを見て感じたのは喜びであり、安心感だった。ウィットがありながら、あたたかくもあって、バカバカしいほど笑えるこのデビュー・アルバムで2人はドミノ・レコーディングスの先輩であるアークティック・モンキーズやフランツ・フェルディナンドの足跡を辿って、独創的なスタイルとパーソナリティ、気品を兼ね備えた前評判に応える作品を届けながら、イギリスのギター・ミュージックに大いに必要とされている笑顔を届けている。

鍵となる楽曲:“Angelica”

『NME』のレヴュー:「彼女たちのデビュー・アルバムは遊園地での目も眩むレースのようで、言葉によるもぐら叩きのようにウィットと皮肉でうるさい低音をはねのけている」

1位 アークティック・モンキーズ『ザ・カー』


一言で言い表せば:クリエイターの無限の好奇心が滲み出していてる誠実で息を呑む傑作。

アークティック・モンキーズの長年の友情がもたらす静かな奇跡は、外部の人間から見ると何も変わっていないように見えることだ。ここ10年間というもの、シェフィールド出身の4人組は砂漠でハイになり、西海岸のロックスターのファンタジーという夢を叶え、地球に戻る前に月のメキシコ料理店に飛んでいったりしたわけだが、オープンな共同作業を通してインナーサークルの精神性は維持することになった。それは無限のように解放された『ザ・カー』という作品を見出すことだった。その控えめな自信には驚かされるが、バンドはこのアルバムの制作を昔の修道院でジャムするところから始めた。そして、モーグのシンセサイザーやループのピアノによる実験は張り詰めたアレンジの上に散りばめられ、偉大な曲でも相乗効果の力は隠しきれないことを思い出させることになった。

『ザ・カー』は心を込めつつもワイルドな筆致に溢れ、感情の幅も広がっている。フロントマンのアレックス・ターナーは若い頃の孤独と弱さについて歌い、潜在意識を垣間見せながらも、そこに対比されるのは渦を巻くようなオーケストラだったりする。アルバムの骨格は4人の仲間たちが重厚な感情に取り組んで、突破口に近づこうと自身の楽器の音を変化させていくのに重ねられている。「Keep reminding me that it ain’t a race(レースじゃないことをずっと忘れさせないでくれ)」とアレックス・ターナーは最後の“Perfect Sense”で歌う。彼の考えている視座がここまではっきりと聴こえたことはなかった。新しい型を採用して探求した年月を経て、本作はバンドにとって新たな始まりとなるだろう。

鍵となる楽曲:“Body Paint”

『NME』のレヴュー:「バンドにとって通算7作目となった大作はこれまでの彼らの歩みを要約するものになった。鋭いソングライティング、絶え間ない革新、不滅のチームワークだ」

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