50位 ジャック・ホワイト『ボーディング・ハウス・リーチ』

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もしも、過去のジャック・ホワイトのソロ・アルバムがそれほどホワイト・ストライプスのアルバムに近くないことをこころよく思えないのだとしたら、賛否両論となっている『ボーディング・ハウス・リーチ』はそれがいいものへの理論だということを覆してみせた。 本作はスペース・ロックや、奇妙なファンク(“Ice Station Zebra”)、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド風の詩(“Abulia And Akrasia”)、そして豪勢なクイーン級のロック・アンセム(“Connected By Love”)が収録されたこれまでで最も実験的な作品だ。 私たちは「いかれたジャック」が大好きなのだ。

49位 レジー・スノウ『ディア・アニー』

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大きく伸びをするような1時間超のアルバムは、確かに最近のヒップホップの主流になっているのかもしれない。しかし、アイルランドのヒップホップの天才であるレジー・スノウによる、待望のデビュー・アルバム『ディア・アニー』ほどの注目を集めることができているアルバムはほとんどないだろう。 “Room 27”や“Mon Amour”などでは精神の暗い側面から逃れることを恐れず、『ディア・アニー』はそのプロダクションをもって、嘆くべきサウンドクラウド・ラップから抜け出し、享楽的で変化し続けるような、聴くものを浸らせてしまう楽しい世界を創っている。「僕は黒人で、変わっていて、誇り高い」 とレジー・スノウは“Bye Polar”で声高に宣言している。どうか、彼が長く続けてくれますように。

48位 ザ・プロディジー『ノー・ツーリスツ』

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ザ・プロディジーは、イースト・ロンドンの小さな会場でデビューしてから約30年が経った2018年においてなお、偉大なサウンドを奏でている。 エセックス出身のレイヴ集団による緊迫感漂う7枚目のアルバム『ノー・ツーリスツ』は、実に野生的な一枚で、試金石となっている過去の輝かしい作品群を彷彿とさせるものだ。その一つとして、“Breathe”からのギターリフを借用したような楽曲もあり、音による襲撃の攻撃部隊を招集するのに一役買っている。これまでで最もハードな楽曲群が揃った本作に収録された“Champions Of London”は、歳を取ることが必ずしも丸くなることを意味するとは限らないことを証明している。 さあ、踊ろうか。

47位 ゴリラズ『ザ・ナウ・ナウ』

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7年の不在を経て、デーモン・アルバーンの脳内に住むアニメーション・チャイルドは昨年、中身がギッシリと詰まった広大なアルバム『ヒューマンズ』とともに帰還を果たした。そして、なんと! デーモン・アルバーンは過酷なツアーの合間を縫ってスタジオに入り、前作からたった14ヶ月後に通算6作目となるアルバム『ザ・ナウ・ナウ』をリリースしてくれたのだ。前作の残骸でもなく、ランチ休憩でパッとレコーディングされたようなアルバムとも程遠い、相応しいタイトルが付けられた本作は、前作のようなゲストに重点を置くアプローチから離れ、デーモン・アルバーンが作り出す甘い逃避的なポップの核心に直接突き進んでいる。 考えすぎなくても大丈夫だよ。

46位 ファザー・ジョン・ミスティ『ゴッズ・フェイバリット・カスタマー』

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2018年は、ファザー・ジョン・ミスティにとってあらゆることがうまくいかなかった1年だった。少なくとも、主題をつける条件においては。 2015年の『アイ・ラヴ・ユー、ハニーベア』がロマンスへの酔いしれるようなトリビュート、そして2017年の『ピュア・コメディ』が人生そのものの叙事詩であったなら、シャーマンのようなシンガー・ソングライターによるこの4作目は、ピンと張りつめた離別のアルバムと言えるだろう。サウンドは耳馴染みがよく、言うなれば、薬を一錠飲んでデヴィッド・フォスター・ウォレスの『インフィニット・ジェット』を一気読みするエルトン・ジョンのようなサウンドだろうか。しかし、涙を誘う“Disappointing Diamonds Are The Rarest Of The All”や“The Palace”が教えてくれるのは、愛の神様が信仰心を失いかけているということ。彼はジェフという名前のペットを飼う予定だと言うから、そこまで落ちぶれちゃいないようだけどね。

45位 ザ・ストーリー・ソー・ファー『プロパー・ドーズ』

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かつてのヘビー級のポップ・パンクを組み合わせたような『プロパー・ドーズ』において、ザ・ストーリー・ソー・ファーはピザやスケートボードのその先に向かって進んでいることがわかる。オアシスやザ・ヴァーヴといったバンドへの愛という意外な要素を持ち出しながら、カリフォルニア出身のザ・ストーリー・ソー・ファーは自らのサウンドを押し拡げている。ブリットポップからコードを借りてきて作り上げたような“Keep This Up”や“Upside Down”は、過去の楽曲よりもさらに明るさを増している。ギャラガー兄弟が終わりのない夏に成長を遂げたように、『プロパー・ドーズ』はポップ・パンクが優雅に成長できることを証明している。

44位 デヴィッド・バーン『アメリカン・ユートピア』

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「鶏は謎めいた方法でものを考えている」とデヴィッド・バーンは“Every Day Is A Miracle”の中で私たちに教えてくれる。元トーキング・ヘッズのヒーローはこのタイトルについて皮肉として付けたものではないと否定しているが、ホラー映画さながらのライヴを披露する66歳の天才も、ポジティヴィティの力を信じているようだ。彼はこのアルバムで、自身を囲う美しく奇妙な世界の不可思議さや驚きを操り、これまで以上にひねくれた不安定なアートポップで世界に抗っている。このレフトフィールドなアプローチ(いくつかの曲は異世界のショウでかかるようなサウンドになっている)は、“Everybody’s Coming To My House”でとりわけ顕著で、コミュニティの力を讃えるエキセントリックな讃歌になっている。

43位 アンノウン・モータル・オーケストラ『セックス&フード 』

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自分たちのサウンドの周縁を探求したアンノウン・モータル・オーケストラによる4作目には、その両極の間を突き進んでいく、揺れ動く旅路とも言える作品だ。汚物が詰め込まれたような、不潔すぎてジャック・ホワイトもシャワーに行かせるような爆竹のようなリフが響く、イカした“American Guilt”の唸りに身を任せてみてほしい。もしもそれを気に入ったなら、次は雲を突き抜けるような“Major League Chemicals”のサイケデリック・ロックを試してみて。センチメンタルな気分になっているなら、優しいサマー・ポップの“Hunnybee”か、プリンスを彷彿とさせるディスコ・ジャムの“Everyone Acts Crazy Nowadays”を。ロマンスから怒りまで、本能を原動力にしたこのアルバムはあらゆる感情に立ち止まってくれる。

42位 トム・ミッシュ『ジオグラフィー』

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キッズたちが、サウス・ロンドンから奏でられるスムージーなトム・ミッシュのディスコ・サウンドに喝采を送っている。みなさんは彼がサウンドクラウドに上げているミックステープやリミックスで彼のことをお知りになったのかもしれないし、もしくはUKアルバム・チャートのトップ10にランクインしたファースト・アルバムで彼のことをお知りになったのかもしれない。「シュマルツコア」と呼ばれる、レックス・オレンジ・カウンティやマット・マルチーズといった温厚な若者たちによる音楽ジャンルの勃興に有終の美を添えるかのように、トム・ミッシュは自らの歌声をジャズのギターやヒップホップのビート、ポップのフック、そして“Lost In Paris”のゴールドリンクや“Waterbaby”のロイル・カーナーらゲストシンガーたちのヴァースと融合させている。弱冠23歳のトム・ミッシュだが、『ジオ・グラ・フィー』(彼はそう囁く)はソフトポップの時代のパイオニアになる可能性を秘めている。

41位 ティルザ『デヴォーション』

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この音楽をポストR&Bと呼ぼうが、エクスペリメンタルR&Bと呼ぼうが、そんなことは問題ではない。2013年にリリースしたEP『アイム・ノット・ダンシング』に続くデビュー・アルバム『デヴォーション』は、11曲の「まっすぐなラヴ・ソング」からなるアルバムである。時に簡素でミニマルで、霞みがかって不調和になりながらも、生々しさや優しさを常に持ち合わせているような11曲だ。ミカチューとして知られるティルザの友人でプロデューサーのミカ・レヴィが参加した『デヴォーション』は、思わず中に入り込んでしまいそうになるほどの親しみやすさを感じさせる。ハイライトはコビー・シーが参加したタイトルトラックに、陰鬱なサウンドの“Go Now”、そして1曲目の“Fine Again”だろう。2019年に控えたUK公演やヨーロッパ各国のフェスティバルへの出演で、彼女がさらなるファンを獲得するのは間違いない。

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