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トーキング・ヘッズのフロントマンであるデヴィッド・バーンは映画監督のジョナサン・デミの訃報を受けて追悼の意を表明している。

アカデミー賞を受賞し、1984年公開のトーキング・ヘッズの映画『ストップ・メイキング・センス』も手掛けたジョナサン・デミは『羊たちの沈黙』や『フィラデルフィア』といった名作で知られている。

ジョナサン・デミは心臓病と食道ガンの合併症で現地時間の4月26日朝に亡くなった。享年73歳だった。

デヴィッド・バーンは自身のオフィシャル・サイトに長文の追悼文を公開している。

その全文訳は以下の通り。

「ジョナサンとは彼が撮影して、最終的に映画『ストップ・メイキング・センス』となった80年代のトーキング・ヘッズのツアーで出会ったんだ。ツアー中にライヴが素晴らしいものになったから映画になるかもしれないと思ってね、長年の友人が紹介してくれたんだよ。彼の『メルビンとハワード』や『ハンドル・ウィズ・ケア(原題)』は大好きだったんだ。これらの映画からはそれぞれ、一般の庶民への彼の愛を感じ取ることができるからね。そうした愛が映画には溢れていて、彼のキャリアを通してマニフェストとして繰り返し出てくることになるんだけどさ。ジョナサンはものすごい音楽ファンでもあった。これも彼の映画からは明らかだけどね。それらの多くは彼の愛する無名のアーティストによってジャム・セッションで録られたものだったりしてね。彼はレゲエのアーティストやハイチのミュージシャンの音源を映画の中に予想のつかない面白いやり方ですべり込ませていたんだよ。

会った時に彼とはすごく意気投合してね、トーキング・ヘッズのマネージャーだったゲイリー・カーファーストが『ストップ・メイキング・センス』を撮影するための資金を用意してくれたんだ。ツアーの最後にロサンゼルスのパンテージ・シアターを4日間ブッキングして、それを撮影した。ジョナサンはツアーに参加して、僕らにもライヴにも慣れ親しんでいたからね。ジョナサンはこの撮影中にちょっとした悪夢も体験してたね。彼が完成させていた大規模な予算の作品『スイング・シフト』についてスタジオと出演者が再撮影を望んでいたんだ。彼はそれを日中に撮影して、夜は僕らの低予算映画を撮影してくれたんだよ。『スイング・シフト』は第二次大戦中にアメリカの軍事工場に努めていた女性労働者への共感で溢れてるんだ。そして、彼の他の作品と同じように非常にキャラクターの立った作品だった。

『ストップ・メイキング・センス』もキャラクターの立った作品だったね。ジョナサンの素晴らしいのは、ライヴをまるで演劇的なアンサンブルかのように捉えて、映画の観客にはそのキャラクターと思いがけない行動が紹介されていくんだ。そうやって、それぞれの異なる人間性と共にバンドを人として知ることになるんだよ。ある意味、登場人物が観客の友達になるんだ。僕は音楽やステージや照明に集中し過ぎて、キャラクターに焦点を当てることがどれだけ重要か分かっていなかった。それがこの映画を他とは違う特別なものにしてるんだ。ジョナサンは編集やミックスでもものすごく寛大だった。彼とプロデューサーのゲイリー・ゲッツマンはバンドの僕たちにも参加させてくれたんだ。僕らが言わなければならないことを彼らは聞きたがってくれたんだよ。そうして参加したことが僕にはすごくインスピレーションになった。僕はミュージック・ビデオを監督したことがあるけれども、ジョナサンのこうした助言が僕が長編作品を作ることにも寄与することになったんだ。

僕が『トゥルー・ストーリーズ』を進めている時にもジョナサンは手助けしてくれたし、僕も彼の映画『サムシング・ワイルド』のために曲も書いたし、『愛されちゃって、マフィア』ではスコアも担当した。それに最終的に完成することのなかった『ルール・オブ・ザ・クール』という名のロバート・ファリス・トンプソンのドキュメンタリーのテスト映像も作ったんだ。彼はその後もたくさんの作品を作り続け、そのうちのいくつかは大きな成功を収め、それ以外はそうでもなかった。彼はドキュメンタリーや音楽映画もたくさん作っていて、ドキュメンタリーは純粋な愛からの産物だった。それは無名のヒーローを讃えるものだったんだよ。ハイチの農学者や、いとこで活動家の牧師、ハリケーン・カトリーナ後にニュー・オーリンズで前代未聞のことを成し遂げた一般の女性といったね。劇映画も音楽映画もドキュメンタリーも、多くの情熱と愛に溢れていた。彼は時折、特定のジャンルの映画も非常に個人的な表現へと変えてみせた。彼の世界への視座というのはオープンで、あたたかく、活気とエネルギーに満ちていたんだ。彼はガンが寛解したのを受けて、今年はテレビ番組を撮影していたんだよ。

ジョナサン、僕らはあなたを惜しむことになるでしょう」

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