10位 ベック(8/19 MARINE STAGE)

Beck2
最近では定番となっている“Devil’s Haircut”で幕を開けたが、なんと今回は”Loser”も早々に披露。初期の代表曲2曲をいきなり投下してしまうわけだが、この日のライヴはその後もベックが、いかに充実したキャリアを歩んできたかを雄弁に物語るものだった。17年ぶりにサマーソニックのステージに立ったベックだが、2017年発表の最新作『カラーズ』からの“Wow”や“Colors”のカラフルなサウンドがスタジアムを彩り、“Sexx Laws”のファンクネスがオーディエンスの身体を揺らし、『グエロ』からの“Girl”でハイライトを描き出す。“Up All Night” では同じくサマーソニック出演者であったDAOKOがゲストとして参加し、世代や言語を超えたコラボーレーションまで披露してみせる。恒例のアンコールではニュー・オーダーの“Blue Monday”やトーキング・ヘッズの“Once in a Lifetime”も挟み込まれ、美しい花火で締めくくられることとなったパフォーマンスは音楽の祝祭感に溢れたものとなっていた。

9位 フライング・ロータス(8/17 SONIC MANIA)

FlyingLotus2
開演前、スクリーンに大きく浮かび上がる“PUT ON YOUR 3D GLASSES”の文字。期待感に胸を昂らせながら3Dメガネを装着する。“Getting There”で幕を開けたフライング・ロータスのステージは、強烈な没入感をもって序盤から観客の意識を別次元の世界へ引きずり込んでいく。歪な生命体のような形の台の後ろに立つ彼は、絶妙なバランス感覚で蠢めくビートを次々と織りなし、中盤、『ツイン・ピークス』のテーマ、それに続き『攻殻機動隊』のリミックス音源が流れる頃には、よもや平衡感覚さえも奪われるような感覚に。その後も“Zodiac Shit”などを披露したフライング・ロータスは、音楽と映像を見事に融合させて一つの作品に仕上げており、その奇才振りを痛感した。最後はケンドリック・ラマーとのフィーチャリング曲“Never Catch Me”で締めくくられ、終わった後もしばらく知覚をハックされたような余韻を残すステージだった。

8位 パラモア(8/19 SONIC STAGE)

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“Ain’t It Fun”でのグラミー賞受賞や、メンバーの脱退/再加入、フロントウーマンのヘイリー・ウィリアムスの結婚、そして離婚など、バンドを取り巻く状況は最後に出演した2009年のサマーソニックから目まぐるしく変化してきたパラモアだったが、文字通り「遺恨」を払拭するかの如く最新作の“Grudges”から幕を開けたステージは、実に痛快なものだった。“Still Into You”や“Rose-Colored Boy”という近年の比較的ポップな楽曲も、“Crushcrushcrush”や“Ignorance”といった過去のロックなナンバーも、その両方のサウンドを同じ温度で受け止める観客から伝わってくるのは、パラモアがエモのシーンを飛び出し、アメリカの次世代を担うポップ・ロック・バンドに成長しつつあるということだ。もちろん代表曲の“Misery Business”も前述の“Ain’t It Fun?”も披露されるのだが、最新作の“Hard Times”がラストを飾っていたことも印象的だった。

7位 フレンドリー・ファイアーズ(8/18 SONIC STAGE)

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ファースト・アルバムからの“Lovesick”で幕を開けたフレンドリー・ファイアーズのステージ。7人体制によるステージで序盤から厚みのあるサウンドを展開し、観客は1曲目にして彼らが期待通りのダンスフロアを提供してくれることを確信する。 “Jump In The Pool”ではエド・マクファーレンがカウベルを高く掲げて叩き鳴らし、観客からも大きな歓声が。新曲 “Can’t Wait Forever”、再びファースト・アルバムの “Skeleton Boy”と続くと、もはや踊る足を止めることは出来ない。ここからはセカンド・アルバム『パラ』からの楽曲も挟まれていくのだが、なんといっても白眉だったのは今年リリースされた“Love Like Waves”だ。シーンに復帰するまで時間のかかった彼らだが、そのクリエイティヴィティが落ちていないことは、この曲への会場の熱気が証明していた。その後の“Paris”で最高潮に達した彼らのステージはそのブランクをものともしない、揺るぎないものだった。

6位 アレッシア・カーラ(8/19 MOUNTAIN STAGE)

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ようやく彼女のフル・スケールのステージを観られたその感慨はひとしおだった。デビュー作の“I’m Yours”からステージが始まるや否や、彼女の歌声に一瞬にして心を奪われてしまう。そして、ステージの後半には数々のヒット曲が待ち受けているのだ。映画『モアナと伝説の海』の主題歌となった“How Far I’ll Go”や全米5位を獲得した“Here”、来たるニュー・アルバムからの最初の楽曲となった“Growing Pains”、“Scars To Your Beautiful”に、そして、最後を飾ったゼッドとのコラボレーションである“Stay”。けれど、そのステージはヒット曲に彩られた豪華絢爛なエンタテインメントだったかというと少し違う。現在22歳の彼女だが、「サンキュー」とカタカナで書かれたシンプルなTシャツも含め、こうしたヒット曲を飾らないキャラクターと圧倒的な声で乗りこなしていく。そこには声だけで楽曲のメッセージを真摯に照らし出してみせる歌の強さがあったのだ。

5位 クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(8/18 MOUNTAIN STAGE)

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もうライヴでの実力は十二分に証明済みだ。でも、やっぱり彼らのステージを観る度に、バンドというもののマジックに圧倒される。お決まりとなっている“Singin’ in the Rain”のSEから幕を開けたクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのライヴは、“Feet Don’t Fail Me”と“The Way You Used to Do”という最新作『ヴィランズ』からの2曲であっという間に会場のヴォルテージは沸点に達する。ジョシュ・ホーミの口からは「アリガトウゴザイマス」と日本語も飛び出す場面も。序盤から中盤にかけて”No One Knows”や“My God Is the Sun”というキャリアを彩った名曲も早々に披露されていくが、そのテンションが落ちることはない。ロックンロールを不穏かつ気骨溢れる獣へと甦らせる術をこの人たちは知り尽くしている。シンプルに光の柱を立てたステージも、そうした研ぎ澄まされたロックンロールを引き立てる。最後に演奏された“A Song for the Dead”は文句なしにカッコよかった。

4位 ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(8/18 MARINE STAGE)

All Photo ©SUMMER SONIC All Right Reserved.

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最新作『フー・ビルト・ザ・ムーン?』の1曲目に収録された“Fort Knox”から幕を開けたステージは、そのまま“Holy Mountain”、“Keep On Reaching”、“It’s A Beautiful World”とアルバムの曲順通りに楽曲が披露されていく。話題となったハサミ女子ことシャルロット・マリオンヌももちろんステージに。当然、オアシスの名曲の数々も披露されていくことになるが、やはり究極の質問が頭に浮かぶ。“Whatever”も、“Half the World Away”も、“Wonderwall”もその輝きを失わないのはなぜなのだろう。クライマックスにはあの曲が演奏されて、それはスタジアム全体の大合唱に包まれることになるのだが、今回のツアーではその後にザ・ビートルズの“All You Need Is Love”という反則技が待ち受けていて、それがすごい。ホーンの壮大な音色で曲が始まった途端の歓喜といったら。フェスティバルのヘッドライナーを務める責任、それをやっぱりこの人はよく分かっているのだ。

3位 テーム・インパラ(8/18 SONIC STAGE)

TameImpala
なぜフロントマンのケヴィン・パーカーの生み出すサウンドがそれこそカニエ・ウェストからトラヴィス・スコットにまで求められるのか、そうした才能の片鱗を存分に感じさせてくれるライヴだった。“Nangs”、“Let It Happnen”、“The Moment”といった『カレンツ』の楽曲からスタートしたライヴだったが、テーム・インパラの描くサイケデリアは多くのインディ・バンドの鳴らすそれとは違う。もちろん、緻密な音響で奏でられるアンサンブルによる浮遊感はあるのだけど、そのサウンドは徹底的なまでの強度に裏打ちされている。そして、それはロックへの愛から鳴らされているものなのだ。インディの箱庭を抜けて強靭なロック・サウンドで鳴らされるそれは至福の快感を約束してくれる。そして、彼はポップ・ミュージック全体のサウンドを塗り替える先駆者でもある。リアーナがカヴァーしたことでも知られる“New Pesron, Same Old Mistakes”で締め括られるまで、彼らが作り出したもう一つの世界からなかなか抜け出すことができなかった。

2位 チャンス・ザ・ラッパー(8/19 MARINE STAGE)

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1曲目の“Mixtape”が始まった瞬間、そのあまりのサウンドの画期性に笑いだしてしまった。スタジアムでもチャンス・ザ・ラッパーはあくまでチャンス・ザ・ラッパーだった。激しさもしなやかさも艶やかさも、ユーモアもシリアスさも兼ね備えたシカゴで磨き上げられたアーバン・サウンドが大観衆を虜にするのはあっという間のことだった。“Blessing”ではゴスペル・ショーのような壮大なサウンドが広がり、“Angels”では早速スタジアム全体が揺れ、「コンニチワ」とチャンス・ザ・ラッパーも日本語で挨拶して、これが初めての来日公演であることを告げる。“Work Out”や“What’s the Hook”といった今年リリースされたシングルも披露しながら、“No Problem”ではグラミー賞に言及しながらメジャー・レーベル3社を風刺する映像が流れ、そして“All Night”でスタジアムはお祭り騒ぎとなっていた。最後は“Same Drugs”でハンドクラップが一面に。いくつものルールをそのポジティヴさで変えてきてしまった彼だが、チャンス・ザ・ラッパーが見せてくれたのは2018年の音楽シーンに突きつけられた正論そのものだった。

1位 ナイン・インチ・ネイルズ(8/17 SONIC MANIA)

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インダストリアル・ロックという言葉を持ち出すまでもなく、キャリアの初期からデジタルとフィジカルの融合を最大のテーマとして取り組んできたナイン・インチ・ネイルズだが、まさにそんなキャリアの集大成とも言えるライヴだった。今回のツアーは序盤で“Wish”が演奏されるという、かなり早い段階からエンジンをかけていくセットリストになっていて、面白いのがステージ上の照明だ。人力でその位置を動かすことによって曲ごとに演出を変えていくのだが、そのパフォーマンスとしてのシンクロニシティは完璧。こうしたところでもアナログとデジタルが融合している。一寸の隙もない完璧な黄金比のサウンドはライヴが進んでいくにつれて神々しさを増し、ロック・バンドとして2018年にできることを飽くなきまでに追求したものとなっていく。“The Hand That Feeds”、“Head Like a Hole”、“Hurt”というラストの怒涛の3連打で完璧にノックアウトされたのは言うまでもなく、トレント・レズナーという人の哲学が具現化されたようなステージだった。

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