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今年の6月16日で『ザ・クイーン・イズ・デッド』はリリースから30周年を迎えた。あのアルバムのすべての歌詞を暗唱できるという人でも、このアルバムについて本当にどこまでご存じだろうか。例えば、ザ・ローリング・ストーンズやザ・ストゥージズ、マリファナなんてものがその音作りに影響していたということを知っている人はいるだろうか。あるいは、リンダ・マッカートニーやハゲ頭のトランペット奏者がもう少しで参加するところだったということなどは? ザ・スミスのメンバー自身が語るこの名盤のすべてを楽曲ごとに御紹介しよう。

1. The Queen is Dead


王室に毒を吐きかける、焼けつくような6分間のオープニング・トラック

ジョニー・マー(ギター):「俺はとにかくザ・ストゥージズのファンだからさ、デトロイトのガレージ・バンドのような攻撃的な曲をやろうって考えてたんだ。それとヴェルヴェット・アンダーグラウンドにも影響を受けてる。この曲は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドをカヴァーするザ・ストゥージズをザ・スミスがカヴァーしてるってとこかな。ちょうど『VU』(1985年にリリースされたヴェルヴェット・アンダーグラウンドのアウトテイクを集めたコンピレーション・アルバム)がリリースされたところだったから、ちょっとばかり“I Can’t Stand It”に敬意を表したんだよ。この曲は最後の数分をカットしたんだ。カットする前のヴァージョンは、言うなれば俺たちがマラソンを完走して、ヴィクトリー・ランをやってる感じだったね」

アンディ・ルーク(ベース):「俺とマイク、ジョニーでこのヘヴィーなリフをジャムってたんだ。優に20分くらい演奏しながらお互いの顔を見て、『これは本当にイケるぞ』って思ってたね。ジョニーのお陰で気分がよかったよ、それまでに聴いた中で最高のベースラインの一つだって言ってくれたからさ。だから、めちゃくちゃ舞い上がってた。で、これ以上はよくならないって思ったところにモリッシーがやってきて、さらに歌詞をつけたってわけ」

スティーヴン・ストリート(エンジニア):「ザ・スミスが特別な存在で、実に真摯に音楽に取り組んでいるバンドだっていうのは明らかだった。当時、アンディに関してドラッグ中毒の噂が飛び交っていたのは知ってるけど、正直言って、スタジオでは全然そんな様子は見受けられなかったよ。このアルバムでの彼のベース演奏は本当に素晴らしいけど、このトラックのベースはまた格別だね」

モリッシー(ヴォーカル):「品位に欠ける、不意打ちを食らわせるようなやり方で王室を非難することは避けたかった。だけど気づいたんだ、時とともに人々が共有していた幸福感が少しずつ消失していって、すっかり陰鬱な、まったく悲痛な何ものかに取って代わられていたっていうことに。王室とイギリス女王という概念そのものが高められて、実際よりずっと有益であるかのように思われているんだ」

2. Frankly, Mr Shankly


ラフ・トレード・レコードのボス、ジェフ・トラヴィスを揶揄したとされる最高におかしいミュージックホール・ソング

アンディ・ルーク:「これはちょっとトボけた曲だけど、モリッシーのパフォーマンスのおかげでまともな形になって、意味のあるものになってる。ユーモラスだよね。詞はいくらかジェフ・トラヴィスについてだって分かるけど、校長をおちょくってるみたいだよな。モリッシーは炎に手を突っ込んじまったね」

モリッシー:「コンドームに手を伸ばしかけたんだけど、『いや違う、文句を言いたい、愚痴をこぼしてやる』って思ったんだ。不満を垂れるっていうのはとても男らしくない行為だから、僕がすごく得意とするところなんだよ!」

マイク・ジョイス(ドラム):「演奏もレコーディングもすんなりできたよ。要するに、俺たちは何でも演奏するんだ、どんなタイプの音楽でも。俺たちは常にオープン・マインドだった。サウンドチェックで“Purple Haze”を無断でコピーしたことさえあったよ」

ジョニー・マー:「バンド活動の一部として、俺たち全員で毎晩1960年代のキッチンシンク映画を見るってのがあったんだ。ちょうどそういう映画をビデオテープで買えるようになってさ。それが当時の最先端だったんだよね。ザ・スミスにいるってことは、半分はロックンロール・バンド、もう半分は1960年代の映画を地で行くってことだったんだ。俺たちはその世界にどっぷり浸かってたわけだけど、この曲はまさにその雰囲気が出てるね。あまり知る人はいないけど、モリッシーはリンダ・マッカートニーにハガキを書いて、この曲でピアノを弾いてもらえないか依頼したことがあるんだ。返事はノーで断られたけど、ぜひ弾いてほしかったね。俺たち全員、彼女の大ファンだったからさ」

3. I Know It’s Over


「粗野な恋人」のために捨てられたと歌うモリッシーの詞が心をとかす

ジョニー・マー:「あの頃はいつも曲を書いていたんだ。それでモリッシーと俺が揃うと、俺は両膝の間にウォークマンを挟んで座ってさ。文字通り、お互いの顔が30センチくらいの距離にあるんだ。俺がまず『こんなのができた』って言って、最初から最後まで曲を弾いてみせると、それが終わるまで二人とも息を止めてるんだ。終わると二人して息を吐く。それから俺が『これで決まりだ』って言って、ウォークマンの録音ボタンを押すと、また二人して息を止めるんだよ。その数日後には、モリッシーが詞を書き上げるんだ」

アンディ・ルーク:「ダークで深い曲だね。照明を絞ってレコーディングしたんだ。全員が曲に入り込んでたよ。ビールから何からあって、マリファナも大量にやったね!」

スティーヴン・ストリート:「この曲では最後のリフレインのところに、トランペット奏者を加えてみたんだ。僕はかなりいいと思ったけど、モリッシーはあの時、ザ・スミスのメンバーじゃない人間が参加するのを不愉快に感じていたようだね。僕は気に入ってたよ、トランペットが何とも悲しい音色で。僕はそのカセットを持ってるんだ。いつの日かボックス・セットに収録されることがあるかもしれないよ」

マイク・ジョイス:「トランペット奏者は幾つかアイデアを出し始めて、最後にはシャーリー・バッシーばりのファンファーレをやったんだ。あれはケッサクだった。今までで最高に面白かったことの一つだよ。モリッシーはひたすら機嫌が悪かったな。トランペット奏者はてっぺんがハゲてて、頭の両サイドに髪の毛があったんだ。クルクル回るネクタイをしてなかったのが惜しかったね。気のいいヤツだったよ」

4. Never Had No One Ever


その暗いギターがモリッシーの最も惨めだった時代を物語る

ジョニー・マー:「俺はザ・ストゥージズの“Raw Power”を聞いていた16歳の時の自分が、実家の寝室にいるという雰囲気のものを作ろうとしていたんだ。“Raw Power”の好きなところは、美しさと暗さの両方が表現されているところだね。俺たちは『クイーン・イズ・デッド』のアルバムでそれを出したかったんだ」

アンディ・ルーク:「モリッシーは夜遅くにこの歌詞を書いたんだ。いつもは午前中に書いてたんだけどね。曲の最後の方に彼の笑い声が少し聞こえるよ。シャンディーガフを2、3杯飲んだんだろうね」

モリッシー:「この曲は20歳の頃に感じてた不満感についての曲さ。20歳になっても、生まれ故郷であり、家族みんなが住んでた街をリラックスして歩くことがなかった。家族は元々アイルランド出身なんだけど、その街に1950年代から住んでたんだ。俺はいつも混乱していた。なぜ『これが俺の生まれ育った街なんだ』って感じないのかってね。気楽に街を歩けたことがなかったよ」

5. Cemetry Gates


モリッシーが軽快なポップの伴奏にのせて、盗作者に向けて鋭い非難を浴びせてみせる

ジョニー・マー:「この曲はモリッシーと自宅のキッチンで作ったんだ。一人で演奏した時は確信がもてなかった。だけど、これがパートナーシップの良い例さ。だって、モリッシーはこの曲をすごく気に入って、難なく簡単に作り上げたんだからね。実はボツにしようとしてたところだったんだ」

スティーヴン・ストリート:「この曲には、ザ・スミスの最高の要素がすべて詰まっているよ。それに、なんて素晴らしい歌声と歌詞なんだ。ちょっとした心地よい安心感さ。繊細だけど、パワーがあるんだ」

マイク・ジョイス:「“cemetery”のスペルミスだって? 俺も“sincerely”で同じ問題を抱えてるよ!」

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