5位 ヤード・アクト(7/30 RED MARQUEE)

実は彼らがメジャーと契約したのは30歳を過ぎてからのことで、楽曲はスポークン・ワードっぽい語り口を基調としたものだったりする。なので正直、UKでなんであれほど盛り上がっているのか、掴み切れていないところがあったのだけど、ライヴをやっと観られて納得がいった。そこには音源とは別物と言えるぐらいの熱量とグルーヴがある。ザ・スペシャルズに乗って登場した時点で、彼らの姿勢が窺い知れたが、1曲目の“Rich”からフロントマンのジェームス・スミスの統率力は素晴らしいものだった。時に高らかに、時に声を抑えて観客を煽り、あっという間に空間を自分たちのものにしていく。リーズ出身の彼らのパフォーマンスには抽象と具象、都市と田園、知性と肉体といった並列するものが同居し、それが興奮を生んでいく。モーターヘッドの“Ace of Spades”のカヴァーもその一例だろう。いまだ淡いのかもしれないけれど、UKのギター・バンドへの希望を確かに感じさせてくれたステージだった。

4位 デイヴィッド(7/29 RED MARQUEE)

1曲目の“You and I”が始まって、袖から現れた途端、その存在感に驚かされる。今年観たどのアーティストよりもレッド・マーキーが小さく見える。アップテンポの曲調に合わせて、ステージを左右に動き回って観客にアピールしてみせるが、もっと大きなステージでやらせてくれと言っているようだ。2曲目の“Bleed Out”ではバク宙までやってのけ、空間を席巻していくその様は嵐のようだ。“Here with Me”では会場の手が左右に揺れ、“Don’t Forget About Me”や“Sleep Well”といった叙情的な曲ではその表現力を見せつける。ビリー・アイリッシュと同じくインタースコープ傘下のダークルーム所属ということもあって、目下大注目のアーティストだが、いろんな境界を突破してロック・ミュージックにアプローチする彼の原動力となっているのはその規格外の反射神経に他ならない。最後はもちろん“Romantic Homicide”で、そのキャリアがどこまで大きくなっていくのか、楽しみになるアーティストだった。

3位 ウィーザー(7/30 WHITE STAGE)

Photo: Taio Konishi


14年ぶりのフジロックで、3日目の大トリとくれば、ウィーザーのステージが楽しくないわけがない。序盤の“The Good Life”を終えたところでリヴァース・クオモは「ウィーザーの歴史を振り返る旅に出ます」と日本語で語っていたけれど、いわゆる出し惜しみや変化球はなし、聴きたい曲やキャリアを彩ってきた曲をやるということだろうと思っていたら、実にその通りになった。前半は『ピンカートン』、後半は『グリーン・アルバム』に比重を置きながら、『メイク・ビリーヴ』や『レッド・アルバム』などに収録の佳曲が入ってくるという構成で、“Island In The Sun”の後には「苗場、いいところですね。日が差す。大雨が降る。みんなスキーします」というリヴァースらしいMCも飛び出す。全体としてはウィーザーというバンドが時の試練に耐える曲を書いてきた事実が改めて浮かび上がる構図で、最後の最後の“Buddy Holly”まで長年にわたって続けてきたバンドにしかできない至福のステージになっていた。

2位 ザ・ストロークス(7/28 GREEN STAGE)

Photo: Taio Konishi


この日のライヴではサード・アルバム『ファースト・インプレッションズ・オブ・アース』より“Fear of Sleep”がライヴで初めて演奏される一幕があったのだが、その際、ジュリアン・カサブランカスは次のように語っていた。「確か、この曲を最後に演奏したのは29年前の日本だったんだ」彼らしい、ちょっとした冗談だったのだけれど、バンドと日本の関係を象徴していた気がする。お互いずっと前から知っているのに常に初めてのような雰囲気がザ・ストロークスのライヴにはずっとあったのだが、今回のフジロックはこれまでで最もバンドがリラックスしていた気がする。1曲目に演奏された“The Modern Age”に始まり、“Barely Legal”も、“Soma”も、最初から完成していたロックンロールをそのままやる、それが見事に機能している。そして、それはバンドと日本が積み上げていた関係があるからこそだとも思う。最後の“Last Nite”を終えて、観客に向かって両手を合わせるジュリアンの姿が目に焼き付いている。

1位 フー・ファイターズ(7/29 GREEN STAGE)

Photo: Taio Konishi


横綱相撲と言えるライヴだった。“All My Life”から始まったステージは1曲目から全力疾走で、次の“The Pretender”もデイヴ・グロールの声が少しきつそうだが、観客からのシンガロングを受けて、勢いのままに突っ走っていく。そう、この日のライヴは細部を見ていけば、決して完璧というわけじゃなかった。しかし、そんなことはまったく気にならない。今の時代にロックをやる宿命を背負ったバンドがヘッドライナーとして観客の期待に応えること、それが特別なことになるのをフー・ファイターズほど知っている人たちはいない。だから、“Big Me”ではウィーザーのパトリック・ウィルソンを迎えてみせ、アラニス・モリセットとは亡くなったばかりだったシネイド・オコナーの“Mandinka”をカヴァーしてみせる。後者の共演は世界中のメディアで報じられることになったが、世界でもフジロックでしか観られないもの実現してくれるのが彼らなのだ。そうした彼らの心意気は“Best of You”と“Everlong”のエンディングまで消えることはなかった。

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