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遅くなってしまいましたが、NMEが選ぶアルバム・オブ・ザ・イヤー2019の邦訳版をお送りします。昨年を彩った50枚を振り返ってみてください。

50位 ザ・ジャパニーズ・ハウス『グッド・アット・フォーリング』(Dirty Hit)

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一言で言い表せば:失恋とそれに伴う崩壊が儚いポップを通して描かれる。

アンバー・べインがスポットライトの当たる場所へと足を踏み入れていく過程を見るのはまさに啓示のようなものだった。失恋についての作品と謳われる彼女のデビュー作だが、元交際相手であるマリカ・ハックマンと共演した“Lilo”のミュージック・ビデオや、セックスをしなくなったことについて歌ったバンガーである“We Talk All The Time”を筆頭に、ある意味ではそれは正しいと言えるだろう。しかし、このアルバムの本質と言える部分は、彼女がバラバラになった破片をかき集め、自分自身を取り戻そうとしているところにある。「何か別の物を探してる」と彼女は“Maybe You’re The Reason”で歌う。「自分を見つけたの。私は違う人間だった」

鍵となる楽曲: “Maybe You’re The Reason”

最高の瞬間:“Lilo”のミュージック・ビデオには間違いなく涙を誘われるが、楽曲に影響を受けて彼女のギグにエアマットのライロを持ち込んだファンもいたほどだった。クラウド・サーフィンはさぞ快適だったことだろう。

49位 ジュース・ワールド『デス・レース・フォー・ラヴ』 (Mom + Pop)

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一言で言い表せば:広い心の持ち主であるサウンドクラウド・ラッパーが完璧な形で作り上げたエモ・ラップの逸品。

シカゴ出身のラッパーであるジャラド・アンソニー・ヒギンスは悲しくも生前最後の作品となってしまったセカンド・アルバムで、自らが創生の一端を担ったエモ・ラップのサウンドを成熟させてみせている。2000年代のエモに薬物依存やメンタル・ヘルスについての息を呑むほどに正直な歌詞が組み合わせられた本作は、説得力を持った現実的なアルバムである。彼が亡くなってしまったのは悲劇だが、彼が遺した遺産は紛れもないものだ。

鍵となる楽曲:“Robbery”

最高の瞬間ジュース・ワールドの折衷主義を象徴する特異な楽曲“Hear Me Calling”で鳴らされる爽やかなチャチャチャ。

48位 レックス・オレンジ・カウンティ『ポニー』(Sony)

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一言で言い表せば:苦しみを共有することから逃げることのない耳に優しい感動的なポップ。

人生における輝かしい瞬間を描写したセンチメンタルなラヴ・ソングでファンを獲得してきたことで知られるレックス・オレンジ・カウンティだが、彼はサード・アルバムとなる本作で成功に伴って悲しみに襲われたことを明かしている。これまでの作品にあったメロディーの起爆力こそ失われていないものの、『ポニー』で書かれる歌詞は暗い領域へと向かったものとなっており、放浪的なジャズやスローなジャム、バロック・ポップの上で、人生におけるタフな瞬間が描かれている。

鍵となる楽曲:“10/10”

最高の箇所:アレクサンダー・オコナ―がアルバムを締めくくる感動的な“It’s Not The Same Anymore”で「もうこれまでとは違う/良くなっているんだ」と歌う箇所。

47位 チャーリーXCX『チャーリー』(Asylum/Atlantic)

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一言で言い表せば:カルト的ポップスターとして前衛的なポップを探求していた年月はここに繋がっていた。

ファンはチャーリーXCXのニュー・アルバムを5年間待ち侘びていた。彼女はその間に“Boom Clap”や“I Love It”を初めとしたヒット曲に代表されるラジオ向きのシンセ・ポップから、PCミュージックの面々を招いた輝かしい実験的なポップへと移行している。長年期待されていたメインストリームでの大々的な成功こそまだ収めていない彼女だが、これまでの過渡期の集大成とも言える『チャーリー』が待つ価値のあった作品であることは言うまでもない。

鍵となる楽曲:“Gone”

最高の箇所:“Shake It”の冒頭を飾る見事に加工されたヴォーカル。

46位 スニークス『ハイウェイ・ヒプノシス』(Merge Records)

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一言で言い表せば:ワシントンD.C.出身のパンクスであるエヴァ・ムールチャンはベースを捨ててスピードを上げている。

アルバムの死は定期的に警告されてきたことだが、スニークスのような存在の周囲では今も活力に満ちた状態で留まり続けている。1990年代のレイヴにアンビエントのサウンドや騒々しいポスト・パンクが組み合わされた短く簡素なサード・アルバムに収録されている楽曲はそれぞれが単独でも生き延びる力を持っているが、それらが本当に映えるのは文脈の中でこそだ。アルバムに漂う脅威的な瞬間に満ちたピンと張り詰めた不遜なトーンは、これら13曲によって成り立っている。彼女自身が“Ecstasy”で歌っているように、まさに「スニークス万歳」である。

鍵となる楽曲:“The Way It Goes”

最高の箇所:アーバン・アウトフィッターズと映画『死霊のはらわた』がコラボしているかのようにアルバムのタイトルをチャントする表題曲での悪魔的な囁き。

45位 マドンナ『マダムX』(Interscope)

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一言で言い表せば:究極のポップ・アイコンによるラテン・ポップの時代性との接触。

ここ数年における自身のベスト・アルバムとなる本作で、マドンナは母親にして、子供であり、教師で、スパイで、修道女で、聖人でもある「マダムX」というオルターエゴに身を包んで帰還を果たしている。自身の新たな化身の名をタイトルに冠したアルバムも同様に想像力豊かなものとなっており、ポルトガルのリスボンに拠点を移して以来、彼女が触れてきたラテン・ポップやバトゥーキの音楽からの影響が取り入れられている。とどのつまり、『マダムX』は彼女の唯一無二のバック・カタログ群にそびえ立つ、折衷的で鮮やかな新しいフェーズを象徴している。

鍵となる楽曲:“Medellín”

最高の瞬間:“Crazy”のコーラスで聴ける輝かしいポップのワルツ。

44位 マギー・ロジャース『ハード・イット・イン・ア・パスト・ライフ』(Debay Sounds)

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一言で言い表せば:話題のスターがやりきってみせた。

マギー・ロジャースのオンライン・ストアでは「魔女のようなフェミニストのロック・スター」であることを宣言する彼女の幅広いマーチャンダイズを購入することができる。メリーランド出身のマギー・ロジャースはメジャー・レーベルからのデビュー・アルバムとなる本作で、まるで魔術師が地球の資源を使って音楽の魔法をかけているかのごとく、ハイキング中に録音したフィールド・レコーディングを“Alaska”や“Burning”のような楽曲に取り入れ、自身のブランディングに後ろ盾を与えている。魅力的な作品として仕上がった本作は、既存の枠に囚われないこの若手のソングライターが、ポップのキラー・フックの書き方をも十分に理解していることを証明するものとなっている。

鍵となる楽曲:“Back In My Body”

最高の瞬間:アルバムの最後を飾る“Back In My Body”でクレッシェンドが押し寄せ、マギー・ロジャースのヴォーカルによる壁が高まった後、収まっていく瞬間。

43位 コールドプレイ『エヴリデイ・ライフ』(Parlophone)

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一言で言い表せば:ファンには申し訳ないが、彼らはありきたりなものから逃げ出したのだ。

ポップ・カルチャー全体が環境に対する責任やグローバル的な政治意識、スピリチュアリティといったコールドプレイが本拠地としてきた分野に傾いてきているなか、クリス・マーティン率いるバンドは長年にわたって作ろうとしてきたアルバムを遂に完成させ、そこには楽曲や絶品の歌詞、それからなんと、罵りまでもが詰め込まれている。

鍵となる楽曲:“Orphans”

最高の箇所:“Arabesque”でジャズ界のヒーローであるフェミ・クティがサックスを奏でる時。

42位 アンダーソン・パーク『ベンチュラ』(12 Tone Music / Aftermath Entertainment)

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一言で言い表せば:アンダーソン・パークの神話のような三部作の最終作。

カリフォルニア出身のラップ・クルーナーがリリースした本作は、野心的な若者がスターに昇り詰めるまでを記録することとなった、『マリブ』や『オックスナード』といったこれまでの系譜に続く作品となっている。冒頭に収録されているソウルフルな“Come Home”にアンドレ3000が参加していることは、彼が人を惹きつける魅力を持っていることを証明していると言えるだろう。三部作と呼んで差し支えない作品群の締めくくりとしてリリースされたこのアルバムは、すべての最終作がそうであるように、豊穣なアレンジや素晴らしい人生の反映といった過去作の側面を踏襲しながら、それらをさらなる高みへと導いている。

鍵となる楽曲:“King James”

最高の箇所:“Winners Circle”でサンプリングされている90年代のギャングスタ映画『ブロンクス物語/愛につつまれた街』のセリフ。「愛することを許されている女性は生涯に3人/彼女たちは10年に1度、偉大な戦士の如くやって来るんだ」

41位 テイラー・スウィフト『ラヴァー』(Republic Records)

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一言で言い表せばテイラー・スウィフトは蛇たちを振り払い、代わりにハートの絵文字を叩きつけている。

通算6作目となる前作『レピュテーション』でのテイラーは怒りに満ちていた。ヘビのヴィジュアルによって補完された執念深い歌詞に満ちた前作は、自身を傷つけた人々に音楽を使って復讐するためのアルバムだった。その次回作となる『ラヴァー』はまったく異なるトーンに満ちている。テイラー・スウィフトは態度を180度変え、夢のような愛が広がるアルバムを作り上げたのだ。将来的にファースト・ダンスでの人気曲になるであろうタイトル・トラックから、交際相手であるジョー・アルウィンに捧げられた愉快な“London Boy”に至るまで、『ラヴァー』は光り輝くポップ・チューンの豪華絢爛なコレクションとなっている。

鍵となる楽曲:“Lover”

最高の箇所:“The Man”での家父長制に対する痛烈な批判。肝に銘じてほしいものだ。

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