40位 ドジャ・キャット『ホット・ピンク』(Kemosabe)

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一言で言い表せば:“Mooo!”のミルクも腐らせてしまうカラフルなラップによるキス。

引退を考えているというニッキー・ミナージュの発言に寂しい気持ちを抱いた人々にとって、ドジャ・キャットの『ホット・ピンク』は少なからず慰めになったはずだ。明るく過激な現在24歳のアマララトナ・ドラミニはアニメのようなセカンド・アルバムをもって血縁相続人としてニッキー・ミナージュの王座に接近し、大々的なヒットを記録した“Mooo!”の記憶を忘れさせ、代わりに“Cyber Sex”や“Talk Dirty”を筆頭とした淫らで燃えるようなラップを投下している。

鍵となる楽曲:“Juicy”

最高の瞬間:“Bottom Bitch”でブリンク182の“Adam’s Song”のリフに乗せてラップする瞬間。

39位 オーヴィル・ペック『ポニー』(Sub Pop)

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一言で言い表せば:今年最高の新顔によるドリーミーなキャンプファイアのようなデビュー作。

自らのアイデンティティを恐ろしいレザーのフェイス・マスクで覆い隠す、クィアのカウボーイであるカナダ出身のオーヴィル・ペックのことを、その極まりない崇高さや率直さではなく、音楽で評価してしまうことは簡単だろう。しかし、彼が心の奥底に昔ながらのソウルを備えていることは明白である。心あたたまるバラードの歌い手としてロイ・オービソンの痕跡が彼にはある。

鍵となる楽曲:“Winds Change”

最高の箇所:“Roses Are Falling”における次の歌詞。「君も分かっているだろ、君は僕の最悪な部分を引き出すんだ/君のそばにいると時々、自分が悪者のような気がしてしまうんだ」

38位 サム・フェンダー『ハイパーソニック・ミサイル』(Polydor)

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一言で言い表せば:イングランド北部のスプリングスティーンによる佳作。

彼はギター・ミュージックにおける期待のホープと見なされていたのかもしれないが、『ハイパーソニック・ミサイル』はサム・フェンダーがそうした単純な栄誉には収まらない存在であることを証明している。男性の自殺やガザに住む子供たちが置かれている悲惨な状況、小さな街で抱えるフラストレーションによる重圧をはじめとした重厚なテーマに言及したデビュー・アルバムとなる本作は、サム・フェンダーに彼の世代における最も異彩を放つソングライターの1人という称号をもたらしている。

鍵となる楽曲:“Hypersonic Missiles”

最高の箇所:“Hypersonic Missiles”におけるサックスのソロ・パート。 Eストリート・バンドの元サックス奏者である故クラレンス・クレモンズもきっとお墨付きを与えてくれるだろう。

37位 ストームジー『ヘヴィー・イズ・ザ・ヘッド』(Merky)

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一言で言い表せば:グラストンベリーは始まりに過ぎなかった。

自身名義のアルバムはたった1枚ながらグラストンベリー・フェスティバルのヘッドライナーを務めた後で、ストームジーはそのタイトルが示すように期待がのしかかるなか、正真正銘のポップ・アイコンとしてセカンド・アルバムをリリースしている。『ヘヴィー・イズ・ザ・ヘッド』はクロイドン出身のストームジーが名声やそれに付随する責任に伴う経験を掘り下げた、音楽的にも様々なテクスチャ―を持つ、彼の飛躍的な野心を示すような作品になっている。

鍵となる楽曲:“Audacity”

最高の箇所:「バンクシーが自分にベストをデザインしてくれた時、神が自分を試しているように感じた」とストームジーはグラストンベリー・フェスティバルで“Audacity”を披露した際にラップしている。その後、自信と共に曲の残りをこの繰り返しで続けた時、彼はもう成功を収めたことをわかっていたのだ。

36位 BTS『MAP OF THE SOUL : PERSONA』(Big Hit Entertainment)

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一言で言い表せば:そのフックと同程度に強力な知性を兼ね備えたユング的なK-POP。

この1年間でスターからスーパースターへと変貌を遂げたBTSだが、韓国出身の7人組である彼らは自らが数字に見合う能力を持ち合わせていることを証明している。彼らは『MAP OF THE SOUL : PERSONA』でユングによる心理学の理論を用いて自らのアイデンティティを探求しながら(リフに満ちたラップ・ロックの“Intro: Persona”)、大胆不敵な“Dionysus”では古代ギリシアの神話を探求している。ホールジー(バブルガムのようなポップ・チューンの“Boy With Luv”)や(“Make It Right”を共作した)エド・シーランとのコラボレーションは、上昇気流に乗る彼らの多様性を象徴している。

鍵となる楽曲:“Boy With Luv”

最高の瞬間:“Dionysus”における思わずヘッドバンギングしたくなるような最後のセクションでの、鳥肌が立つようなJINのファルセット。

35位 デンゼル・カリー『ズー』(PH Recordings)

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一言で言い表せば:フロリダの先人たちの足跡を辿った若者。

デンゼル・カリーによる見事なセカンド・スタジオ・アルバムは、私たちに彼の故郷であるフロリダという州の偉大さを思い出させてくれる。とりわけ轟くような“CAROLMART”では、フロリダが誇るプライズとトリーナによる“So Clean”のサンプリングに刺激的なヴォーカルを乗せながら、「俺はトリーナやトリック(・ダディ)、リック(・ロス)、プライズで育ったんだ」と歌詞でも彼らの名前に直接言及している。現在24歳の彼は巧みなオマージュを織り交ぜながら、自身のアイドルに着々と近づくことに成功している。

鍵となる楽曲:“CAROLMART”

最高の瞬間:クラブ向きのバンガーである“SHAKE 88”で、デンゼル・カリーが自身の声色をフロリダのパーティーにいる典型的な女性のそれに変えるところ。淫らなデンゼルだ。

34位 ダイヴ『ディシーヴァー』(Captured Tracks)

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一言で言い表せば:ニューヨークのインディー・バンドがシューゲイズへと向かった。痛みと共に。

フロントマンのザカリー・ コール・スミスが言うように、前作『イズ・ザ・イズ・アー』が「トンネルの最後に見える光」のようなものだったのであれば、サード・アルバムとなる『ディシーヴァー』はその向こう側にあるものだと言えるだろう。依存症の治療を無事に終えたザカリー・ コール・スミスがソングライティングへのアプローチを一新して望んだ『ディシーヴァー』で、ダイヴは粛然たる現実に、歪んだギターを織り交ぜながら、従来の甘いメロディーをつらいカタルシスに置換している。

鍵となる楽曲:“Blankenship”

最高の瞬間:ザカリー・ コール・スミスが“Horsehead”のコーラスで「空気を吸いたい/そして二度と吐き出したくない」と悲しく歌い上げた時に生じる腹をえぐられるような感覚。

33位 ボン・イヴェール『アイ、アイ』(Jagjaguwar)

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一言で言い表せば:ジャスティン・ヴァーノンがこれまでのキャリアで編んだニット帽子とでも言おうか。

ジャスティン・ヴァーノンはボン・イヴェールとしての通算4作目となる本作で一つの周期を終えている。ジャスティン・ヴァーノンはアルバムをリリースするごとに、それに先立って季節に言及するプロモーション映像を公開してきており、彼は『アイ、アイ』のリリースを前に公開した映像の中で「もう秋かもしれない」と語っている。本作はボン・イヴェールのバック・カタログのそれぞれにある要素を包括したフィナーレのような作品になっており、『22、ア・ミリオン』にあった唸りを上げるエレクトロから『フォー・エマ・フォーエヴァー・アゴー』の爪弾くようなフォーク、『ボン・イヴェール』のバロック・ポップまでもが備わっている。感動的な胸を打つ作品だ。

鍵となる楽曲:“Hey, Ma”

最高の瞬間:アルバムを締めくくる“RABi”でジャスティン・ヴァーノンが「何もかも大丈夫、僕らもみんな大丈夫」と宣言するところ。

32位 デザート・セッションズ『Vol. 11 & 12』(Matador)

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一言で言い表せば:ジョシュ・ホーミ率いるスーパーグループが砂漠のジャムに迷い込んだ。他の人たちはきっと羨んでいることだろう。

2019年にデザート・セッションズのニュー・アルバムがリリースされたことはある種のサプライズだった。ジョシュ・ホーミ率いる雑多なロックスター集団が最後にアルバムをリリースしたのは2003年だったし、『Vol. 10』という何かを終わりにするには実に区切りのいい数字だったのだ。しかし、新たなミュージシャンの一行(ロイヤル・ブラッドのマイク・カーやシザー・シスターズのジェイク・シアーズ、そして正体不明のTöôrnst Hülpftという人物)と共に完成した『Vol. 11 & 12』は、砂漠のロックの深みや1970年代のサイケ、強烈なゴスを掘り下げた、実に楽しいジャム・アルバムとなっている。

鍵となる楽曲:“Something You Can’t See”

最高の瞬間:アルバムを締めくくる“Easier Said Than Done”でジョシュ・ホーミがデヴィッド・ボウイ感満載になった後でファルセットを披露するところ。

31位 オクト・オクタ『レゾナント・ボディ』(T4T LUV NRG)

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一言で言い表せば:テクノ界の次なるスーパースターが誕生した(18位の項も参照してみてほしい)。

ニューハンプシャー州出身のDJであるオクト・オクタが2019年にリリースした作品『レゾナント・ボディ』はこの上ない至福の作品だ。冒頭を飾る“Imminent Spirit Arrival”のスケルチ音から、本作には活気のあるハウスやドラムビートに満ちたテクノのサウンドスケープが広がっている。騒々しいアンセム“Spin Girl, Let’s Activate”はクラブの居住者たちに向けた喊声のようだし、エイズ患者の支援団体「アクト・アップ」の1980年代の活動家たちによるチャントや当時の音声をサンプリングした“Power to the People”は輝かしいプロテスト・ソングになっている。歓喜に満ちた作品だ。

鍵となる楽曲:“Move Your Body”

最高の瞬間:Spin Girl, Let’s Activate!”の中盤でテンポが徐々に弱まり、再びギアを上げて爽快なピアノのリフが飛び込んでくる瞬間。

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