30位 アリアナ・グランデ『thank u, next』(Republic Records)

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一言で言い表せば:リアルタイムで届けられた早すぎる人生への返答。

生き残った人間が再び喜びを見つけ出していくことについてのアルバム『スウィートナー』に続いて届けられた『thank u, next』は、全世界が見守る中で喪失について掘り下げ、大きな混乱を経験することの難しさについて考える作品となった。寛大で、思いやりを持った、誠実なアルバムだとも言えよう。「作り笑いなんて願い下げよ」と“Fake Smile”でアリアナ・グランデは歌う。「傷ついたときも、それを嘘でごまかすつもりはない」というこの曲の一節は『thank u, next』全体を貫く理念の宣言となっている。

鍵となる楽曲:“Fake Smile”

最高の瞬間:アリアナ・グランデは“thank u, next”の中でこれまでの交際相手の欠点を非難する代わりに、より寛大な態度をとってみせている。「愛を教えてくれた人、辛抱を教えてくれた人、痛みを教えてくれた人」と彼女は歌っている。「今は素晴らしい人間
になれたわ」

29位 シャロン・ヴァン・エッテン『リマインド・ミー・トゥモロー』(Jagjaguwar)

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一言で言い表せば:シャロン・ヴァン・エッテンは驚くべきハートランド・ロックの傑作で広々とした景色を映し出してみせた。

シャロン・ヴァン・エッテンが永遠に「告白型のシンガー・ソングライター」の範疇に留まっていると思い込んでいた者たちが間違っていたことは、このワイドスクリーンな通算5作目のアルバムで証明された。ブルース・スプリングスティーンの系譜を継ぐ市井の人々を歌ったロックである“Seventeen”や“Comeback Kid”から、気概溢れるドリーム・ポップの新機軸“Memorial Day”や“Jupiter 4”といった楽曲に至るまで、本作は彼女のキャリア史上最大規模かつ最も大胆な実験が行われている。以前の彼女のアコースティックでローファイなバラード・アルバムはあっという間に遠い記憶となってしまったのだ。

鍵となる楽曲:1980年代的なスタイルの“Comeback Kid”はシャロン・ヴァン・エッテンが声を上げる復帰曲となった。彼女は4年間、音楽活動から離れて演技(素晴らしかったが、悲しいことにドラマ「ザ・OA」は打ち切りとなった)、心理学の勉強、育児に取り組んでいた。

最高の瞬間:“Hands”の感情剥き出しで勇ましいコーラス。

28位 ジェイペグマフィア『オール・マイ・ヒーローズ・アー・コーンボールズ』(EQT Recordings)

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一言で言い表せば:この実験的なヒップホップはインターネットのユーモアに根差している。

『オール・マイ・ヒーローズ・アー・コーンボールズ』はジェイペグマフィアらしいパンク精神のあるラップに、ダークでコミカルな叙情性、オフビートのアドリブ、ビデオ・ゲーム音の断片が合わさって、彼にとってこれまでで最もパーソナルなアルバムとなった。意外なカヴァー曲“No Scrubs”や、優しく囁くように歌う“Grimy Wifu”に顕著なように、彼はローファイR&Bの領域にも手を伸ばしている。“PRONE!”の「一つの銃弾がスティーヴン・バノンをスティーヴン・ホーキングに変えた」といった一節は彼による面の皮の厚いウィットを証するものとなっている。

鍵となる楽曲:“Jesus Forgive Me, I Am A Thot”

最高の瞬間:ジェイペグマフィアはTLCの“No Scrubs”のカヴァーとなる“BasicBitchTearGas”でミーハー女をあぶり出そうとしている。

27位 カノ『フードルズ・オール・サマー』(Parlophone)

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一言で言い表せば:グライムの主導者が若者を腕で抱きしめる。

ロンドンのラッパーであるカノにとって今年はすごい1年となった。ドレイクの援助によって復活を果たした胸打つドラマ「トップ・ボーイ」に出演し、また、通算6作目のニュー・アルバムをリリースした彼は、本作で問題を抱えている地元ロンドンの若者に賢明な助言を与えている。本作は彼のスタイルについての宣言であり、アニメ「ファミリー・ガイ」でウィル・スミスが子どもたちに「職に就いてママやパパを助けるんだ」とラップで諭すのとは違い、このアルバムは相手に寄り添うことに徹している。

鍵となる楽曲:“Trouble”

最高の瞬間:あまりに感動的な“Trouble”で彼は次のように語っている。「どんな喧嘩も握手さえできれば終わらせることができるんだ」

26位 PUP『モービッド・スタッフ』(Rise Records)

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一言で言い表せば:トロントのパンクスは人生を肯定するシンガロングで鬱を吹き飛ばす。

モッシュピットの奥から叫びたくなるフック、人生のマントラ、短いジョークが詰まったPUPのサード・アルバムはついに彼らをパンクの最前列に到らしめた。ヴォーカルのステファン・バブコックは痛烈なユーモアで鬱について歌っている。“Morbid Stuff”は喜びに満ちた前向きな曲で、何とか生きていこうとしている人を応援してくれるハンドブックだ。

鍵となる楽曲:“See You At Your Funeral”

最高の瞬間:ステファン・バブコックは“Full Blown Meltdown”という相応しいタイトルの1曲で次のように叫んでいる。「間違いは犯さない。自分がしていることはちゃんと分かっているんだ。俺はただ、大の大人が子どもみたいに弱音を吐いても世界がうんざりしていないのに驚いているだけだよ」

25位 ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ『ゴースティーン』(Ghosteen Ltd)

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一言で言い表せば:ロック界の影の男は胸の内をさらけ出している。

多くの人は2016年の前作『スケルトン・ツリー』をニック・ケイヴの苦難の探求と受け止めた一方、それは実際には彼の息子アーサーが2015年に亡くなる前に制作されたものだった。以降、彼は映画やウェブサイト、トークを交えたツアー、そしてこの圧倒的な『ゴースティーン』で、すべてをむき出しにして、勇敢に内面を打ち明けてきた。繊細な感触と映画的な視点を持った本作は、3次元的で、熱にうなされた夢を描きながら、愛や喪失、悲しみといった全方位を旅した末に「平穏が訪れるだろう」という結論を下している。

鍵となる楽曲:“Leviathan”

最高の瞬間:最終曲“Hollywood”でニック・ケイヴは、どんなに悲しみが深かろうと「誰だって誰かを失っている」と締めくくっている。計り知れない謙虚さだ。

24位 エンジェル・オルセン『オール・ミラーズ』(Jagjaguwar)

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一言で言い表せば:ノース・カロライナのシンガー・ソングライターである彼女はカラー・フィルターを強化している。

劇的な壮麗さが過剰とも言えるほどに満ち溢れたエンジェル・オルセンの『オール・ミラーズ』は冷酷な正確さで傷心さえをも撃ち抜いていく。鳴り響くシンセサイザーと渦巻くストリングスがスペースを奪い合う本作は、その知性と野心の中にそびえ立っている。

鍵となる楽曲:“All Mirrors”

最高の瞬間:その豪勢なオーケストラ・アレンジが目一杯に広がっていく魔法のような“Tonight”だろう。

23位 AJトレイシー『AJトレイシー』(Self-released)

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一言で言い表せば:“Ladbroke Grove”でおなじみの彼がグライム、ダンスホール、トラップ……そしてカントリーまで!?

グライムからキャリアを始めたAJトレイシーは昨年2月に『NME』に「俺は伝説的なグライムMCだからね」と語っている。けれど、様々なインスピレーションを得たセルフタイトル作で、彼は翼を広げている。AJトレイシーはキラーチューン“Doing It”以外にも、ダンスホール(ザ・ノーツが参加した“Butterglies”)から、ややカントリー調のラップ(“Country Star”)までを探求している。さらにティーンエイジャーの頃に大好きだったガレージ・サウンドへのオマージュを捧げている“Ladbroke Grove”はやはり完璧で、AJトレイシーが伝説的存在であることを証明している。

鍵となる楽曲: “Ladbroke Grove”

最高の瞬間:“Horror Flick”でそのホラー・コア・スタイルから離れた時、「両親を大切に思う」「クールな男」であることを私たちに確信させてくれる。ほっ。

22位 ジェイムス・ブレイク『アシューム・ホーム』(Polydor)

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一言で言い表せば:彼は絶望的な場所に愛を見つけた。

2016年にリリースされた『ザ・カラー・イン・エニシング』は、グレーとブルーが滲んだぼやけた水彩画が表現するような荒涼とした聴き心地だった。これに次ぐ本作『アシューム・ホーム』は、少しギアを変え、不安定なノイズの破裂音をあたたかく鳴り響くピアノへと差し替えている。もちろん、これはジェイムス・ブレイクが(女優のジャミーラ・ジャミルと)恋に落ちたからであり、時にそれは見えないバルーンの城で歩道を弾むように歩くようなサウンドに聴こえる。

鍵となる楽曲:“Can’t Believe the Way We Flow” 

最高の瞬間:「さあ家に帰って、みんなの悪口を言おう」、彼は“Power On”でこう提案している。私たちはシンプルにジェイムス・ブレイクの大ファンにならざるを得ない。

21位 カニエ・ウェスト『ジーザス・イズ・キング』(GOOD Music)

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一言で言い表せば:“I Am A God”と言っていた男は考えを改めた。

カニエ・ウェストの新たな試み、つまり以前の不安を放棄し、信仰への献身を再確認するゴスペルのみで構成された楽曲を冷笑するのは簡単だが、遅れに遅れたこのプロジェクトは驚くほど謙虚な作品だった。 サンデー・サービスのライヴ・セッションから生まれた本作は、神、彼の妻、家族、神、(ファストフードの)チックフィレ、神、そして神を称賛している。神の祝福を受けて復活を遂げたのだ。

鍵となる楽曲:“Follow God” 

最高の瞬間:“God Is”の喉が割れるようなヴォーカルで、カニエ・ウェストはセックス依存症の克服と新たな人生の目的を得るために信仰が役立ったことを認めている。

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