Sandy Kim

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驚くことではないが、ツアーでの暮らしは今では少し控え目なものになっている。観客を圧倒する前はリラックスした状況にしておくことを望んでおり、一晩中騒いだ日々はもうここにはない。「俺たちももう若くはないからね」とドラマーのチャド・スミスは冗談を飛ばす。「全員個室があって、一緒に過ごす共同のスペースがあるという感じで、30年前はカオスだったけれど、今はお茶を飲みながら新聞でも読んでいるだけだよ」

チャド・スミスは年齢を重ねて落ち着いたことに満足しているのかもしれないが、リード・シンガーであるアンソニー・キーディスは同じ見解を持っているわけではないようだ。ニュー・アルバムに収録のヒップホップのグルーヴにエネルギー溢れるブギーが展開する“One Way Traffic”で彼は「成熟」して「退屈になってしまう」ことを激しく非難している。「Friends got married, had them dogs / Now they read those catalogues / This commerce makes me nauseous / When did life get so damn cautious?(友人たちは結婚して犬を飼っている/カタログを読み/そんな商売には吐き気がする/いつ人生とはそんなしょぼくれたものになるのだろう)」これは60歳の大台に達することへの反動なのだろうか?

「60歳なんて俺には何の意味もないね」とアンソニー・キーディスは語り、すぐに質問を遮っている。「誕生日とか何周年とか、とにかく数字にまつわるものには何の価値も置いていないんだ」

でも、時には振り返るのもいいことだ。40年にわたって生業を続けてきた彼らはそれ相応の高揚、アドレナリン、そして悲劇的な喪失を経験してきた。アンソニー・キーディスとは10代の頃から知り合いだった結成メンバーであるギタリストのヒレル・スロヴァクは1988年にヘロインのオーヴァードーズで亡くなっている。4人の親友はサード・アルバム『ジ・アップリフト・モフォ・パーティ・プラン』が初めて全米アルバム・チャートにランクインしたことで献身的なファンベースを築き始めていた。2022年4月でヒレル・スロヴァクは60回目の誕生日を迎えるが、その存在はリハーサルでも感じられたのだろうか?

「ヒレル・スロヴァクのエネルギーというのは本当に決して消えたことはないんだ」とアンソニー・キーディスは語り、時間をかけて適切な言葉を選びながら、1983年、レッド・ホット・チリ・ペッパーズがあまり見込みのない駆け出しのサイケ集団だった頃の最大の後悔を振り返っている。ヒレル・スロヴァクとドラマーのジャック・アイアンズは一時期、既にレコード契約もあったホワット・イズ・ディス?に集中するためにバンドを脱退していた。

Gus Van Sant

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「最初の年の最初のアルバムにヒレル・スロヴァクが参加してくれていたらと思うよ」とアンソニー・キーディスは語っている。「1984年にいくつかテレビに出演したんだけど、それを観て思うのは『くそ、ヒレルがいてくれたら良かったのに。彼がバンドの生みの親なんだ。彼の子どもなのに』ということだよね」ここでアンソニー・キーディスは一旦言葉を止めて、意識を現在へと戻している。「とにかく、なるようにしかなるようにならないわけだけど、人生はそういうものだからね。でも、ヒレルは今も心にいるんだ。30年、40年、50年、60年、100年経とうがね」

しかし、アンソニー・キーディスは年金生活者になっても“Give It Away”をやり続けているのだろうか?

「先のことを考えるのに時間を使う人間ではないんだ」と彼は笑っている。「今日、何をすべきかは分かっているよ。そうした曲をライヴで見事に披露しなくちゃいけないし、バンドの精神衛生状態にも依るよね。ツアーというのは壮大な生き残りを賭けたテストみたいなものだから。どうなるか見てみるよ。でも、自分はいつも楽観的で、自分たちのやっていることを止める理由は見つからないけどね」

新作『アンリミテッド・ラヴ』と世界を回るウイニング・ランの後、次の作品までは6年も待たなければならないのだろうか?

Sandy Kim

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「そんなことはないよ」とアンソニー・キーディスは吉報を伝える雰囲気で語っている。「文字通り、いくつかの曲をリリースしていくことになるんだけど、近い将来、さらに荷台に乗せた分の曲が出ることになっても驚かないでほしいね。みんなに聴いてもらいたい曲がたくさんあるんだ」更なる詳細を求めたが、アンソニー・キーディスが説明することはなかった。これまでも多くのリークに見舞われてきたため、彼が沈黙を保ちたいのも無理はない。

一方、ジョン・フルシアンテは喜んで説明してくれた。『アンリミテッド・ラヴ』の後も次なるアルバムをリリースする「大まかな計画」があると彼は語っている。バンドはリック・ルービンとのセッションで「約50曲をレコーディングした」という。「自分たちの気に入っている十分な数の音源があるんだ」とジョン・フルシアンテは語り、『アンリミテッド・ラヴ』の次のプロジェクトについて「このアルバムで作った激しさとは違ったリラックスしたエネルギーがある」と述べている。

レッド・ホット・チリ・ペッパーズが新たに多作な時期に入ろうとしているのであれば、『アンリミテッド・ラヴ』はその先駆けとして完璧なアルバムと言えるだろう。フレッシュで、恐れ知らずで、もちろんファンキーなアルバムはレッド・ホット・チリ・ペッパーズを構成してきたあらゆるDNAの鎖が入っており、ジョン・フルシアンテの株も加わっている。幸いなことに彼らはもうバイクに乗ったギャングではない。つまり、カリフォルニアの不滅の男たちはすぐには遠くに走り去ってしまうことはないということだ。彼らにはまだまだやるべきことがたくさん残っている。

レッド・ホット・チリ・ペッパーズは通算12作目となるニュー・アルバム『アンリミテッド・ラヴ』を4月1日にリリースする。

Gus Van Sant

Photo: Gus Van Sant

リリース詳細

UnlimitedLove_Packshot (1)
アーティスト:Red Hot Chili Peppers / レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
アルバム・タイトル:『Unlimited Love / アンリミテッド・ラヴ』
リリース:2022年4月1日(金)
※国内盤CD ボーナス・トラック1曲追加収録 ¥2,860(税込)/WPCR-18503
1. Black Summer / ブラック・サマー
2. Here Ever After / ヒア・エヴァー・アフター
3. Aquatic Mouth Dance / アクアティック・マウス・ダンス
4. Not The One / ノット・ジ・ワン
5. Poster Child / ポスター・チャイルド
6. The Great Apes / ザ・グレイト・エイプス
7. It’s Only Natural / イッツ・オンリー・ナチュラル
8. She’s A Lover / シーズ・ア・ラヴァー
9. These Are The Ways / ジーズ・アー・ザ・ウェイズ
10. Whatchu Thinkin’ / ワッチュ・シンキング
11. Bastards of Light / バスタード・オブ・ライト
12. White Braids & Pillow Chair / ホワイト・ブレイズ・アンド・ピロー・チェアー
13. One Way Traffic / ワン・ウェイ・トラフィック
14. Veronica / ヴェロニカ
15. Let ‘Em Cry / レット・エム・クライ
16. The Heavy Wing / ザ・ヘヴィ・ウィング
17. Tangelo / タンジェロ
18. Nerve Flip / ナーヴ・フリップ ※日本盤ボーナス・トラック

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