30位 アークティック・モンキーズ “Tranquility Base Hotel + Casino”


舞台を月面に移したアークティック・モンキーズは、通算6作目となる『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』のタイトル・トラックで、私たちを月のリゾート・ホテルへと案内してくれた。リゾート施設の案内人を務めるアレックス・ターナーは、「技術の進歩」によって「すっかり乗り気」になっているし、便利な電話交換主のマークへと姿を変えてインターネットも楽しんでいる。これだけでは奇妙と呼ぶには不十分だと言うかもしれないが、バンドメイトたちが金属音や電子音といった各々の風変わりな要素を音楽面に付け加え、映画のサウンドトラックとしても機能するような、不穏な空気に満ちた楽曲を完成させている。

29位 アリアナ・グランデ “thank u, next”


インターネット上ではまだ「サタデー・ナイト・ライヴ」への出演で知られるピート・デヴィッドソンとの破局が話題になっているのかもしれないが、アリアナの視線は既に、痛みをポップ・ミュージックに変えるという自身の最も得意とすることに向いている。アリアナ・グランデは失恋に傷心する代わりに、上品で優雅な、記憶にある中で最も最高な(そして最もすぐに拡散しそうな)楽曲の一つと共に立ち直ってみせている。

28位 トラヴィス・スコット “Sicko Mode”


至高の楽曲群がそろった『アストロワールド』の中でもハイライトとなっている“Sicko Mode”で、トラヴィス・スコットは大物たちの仲間入りを果たしたことを宣言している。3つのパートで構成されるこの楽曲で、ヒューストン出身の彼は不気味なオルガンや揺れるベースの低音、『スコーピオン』のほとんどの楽曲を軽く凌駕するドレイクのラップを融合し、(スムージー店の)ジャンバ・ジュースやボナルー・フェスティバルについてのリリックを披露している。

27位 ブロックハンプトン “1998 Truman”


ブロックハンプトンはアビイ・ロード・スタジオでレコーディングされた最新作『イリデセンス』に先駆けてリリースした、この押し退けるような実験的ヒップホップ・トラックで、性的虐待疑惑が持ち上がった結成メンバーのアミアー・ヴァンの脱退という憂き目に遭いながらも、これからも生き延びて、成功する能力を持っていることを証明している。清々しいほどに率直なリリック(子供向け映画『マダガスカル』やパスタのリングイネにも言及している)が詰め込まれた、熱狂的で焼け付くようなこの楽曲で、ブロックハンプトンは本領を発揮して、混沌とした精神崩壊から激しいコーラスへと飛び移っている。彼らの一番の強みは、もしかするとその折衷主義なのかもしれない。その本領が発揮されている“1998 Truman”には拍手喝采を送るはずだ。

26位 デヴィッド・バーン “Everybody’s Coming To My House”


楽しげなホーンやダンサブルなオーケストラの演奏に乗せて、世界的に高評価を得ている最新作『アメリカン・ユートピア』の中でも最も傑出した楽曲である “Everybody’s Coming To My House”で歌われているのは、それとは対照的な孤独についてだ。パーティーの前にパラノイアにとり憑かれたデヴィッド・バーンは、「僕はもう一人になることはない」と繰り返し言い聞かせ、長年のコラボレーターであるブライアン・イーノは、この軽快なオルタナティヴ・ポップでもその確かな手腕を発揮している。それでも、デヴィッド・バーンは悟ったようにこうも嘆いている。「僕たちは人生の観光客でしかないんだ……そして、二度と家に帰れることはないんだよ」

25位 ヴィンス・ステイプルズ “Get The Fuck Off My Dick”


ヴィンス・ステイプルズほど器用に虚勢を張れる者はほとんどいないだろう。“Get The Fuck Off My Dick”がリリースされるより前、ヴィンス・ステイプルズは「永遠に黙ってろ」と題して自身の引退と引き換えに200万ポンドを集めるクラウドファンディング・キャンペーンを立ち上げている。ヴィンス・ステイプルズは引退する代わりにキャンペーンを撤回して、行儀の悪い従来の彼らしさを取り戻している。 “Get The Fuck Off My Dick”がリリースされるや否や、この曲は今年の最も傲慢なヒップホップ・ソングの一つとなった (メモを取っておくといいよ、エミネム)。

24位 シェイム “Friction”


「救いのない者を救おうとしたことはあるか?」とチャーリー・スティーンはシェイムのデビュー・アルバムの中でも傑出した楽曲である“Friction”で問いかけている。意気揚々と人をからかうような、あざ笑いにも似た彼のヴォーカルから判断するに、おそらくその答えは盛大な『ノー!』なのだろう。堪忍袋の緒が切れる寸前の瞬間を閉じ込めたような楽曲で、チャーリー・スティーンはそのザラついた唸り声を、切迫したギターやループペダル、伸縮自在なベースの欠片の上で遊ばせている。

23位 エイサップ・ロッキー feat. スケプタ “Praise The Lord (Da Shine)”


ちょっといいかな。世の中にはフルートを使ったラップのバンガーがまだ足りていないと思うんだけど、どうかな? エイサップ・ロッキーとスケプタはそんな誤りを正すために手を組み、ほろ苦いアンセムの中で神秘性と自己顕示をミックスさせて次のようにラップしている「俺は神を讃えた/その後で法を犯した」。スケプタは「DMXを聴いた。彼の才能を垣間みたよ」とラップし、DMXが2001年にリリースした“Who We Be”で使っていたフロウを拝借している。この事実をもう少し尊重するとすれば、スケプタは既にスーパースターの称号を得ているにもかかわらず、今も先人たちへのリスペクトを持っているということだろう。

22位 セイント・ヴィンセント “Fast Slow Disco”


“Fast Slow Disco”という曲は、実に特殊な経緯で誕生している。セイント・ヴィンセントことアニー・クラークは、ポップなバンガーの書き方に多少なりとも精通しているテイラー・スウィフトから『マスセダクション』の収録曲“Slow Disco”を「ポップ・ソング」にしてみてはどうかと提案されたのだという。そうして生まれたのがこの “Fast Slow Disco”なのだから、まさに素晴らしい提案だった。“Slow Disco”よりも力強さを増した “Fast Slow Disco”は、オリジナル版を包んでいた霞むようなメランコリーからはすっかり距離を置いている。一方で「ここに来られて嬉しいけど、離れることが待ちきれない」という歌詞は、ダンスフロアで踊りながら繋がりを希求しているような雰囲気を纏い、その悲しみに新たな意味が加わっている。素晴らしき「悲しきバンガー」が世に多く流通した2018年において“Fast Slow Disco”もそんな楽曲の一つとなった。

21位 マット・マルチーズ “Greatest Comedian”


気取った皮肉屋のマット・マルチーズは、この「シュマルツコア」のヒット曲で2018年に自らの道を切り拓いてみせている。若者たちのロマンスを歌った“Greatest Comedian”で、マット・マルチーズは自身の愛を「最高品質の堅木のドア」や「戦時中の最後のパン」になぞらえている。そう、私たちと同じようにね。グラつくようなベース・ラインを背にしながら、マット・マルチーズは微動だにせずに悲喜劇的な情事を歌い上げている。「神様はきっと僕が知っている最高のコメディアン/君を遠くへ追いやってしまうんだ」とマット・マルチーズは囁く。自分の気持ちを打ち明ける時、これは複雑で遠回りな方法なのかもしれないが、思春期に好きな人に告白する時の気まずさを見事に言い表している。

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