Photo: Mark Seliger

ミック・ジャガーとの30分間のインタヴューのために予約されたロンドン西部の広々としたホテルのスイートルーム、『NME』の取材班が静かに案内されたその部屋にザ・ローリング・ストーンズの伝説的なフロントマンの姿はなかった。スタッフの話ではミック・ジャガーは隣の部屋で着替えている最中だという。どうやら、さっきのジャケットが気に入らなかったようだ。

結局、彼が選んだのはシンプルなスタイルだった。上品な水玉模様のシャツに、ハリウッドのZ世代のトップスターたちが最近こぞって愛用しているような、仕立ての良いレザー・ジャケットだ。ティモシー・シャラメ、オースティン・バトラー、ジェイコブ・エロルディといった面々も最近同じようなスタイルを披露している。この服装の選択は、ミック・ジャガーの現在のクリエイティヴ精神――モダンで時代に即していながらも最高にクールであり続けること――を象徴しているのかもしれない。

ザ・ローリング・ストーンズの新作はまさにそうしたものとなっている。ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク、バハマで数年をかけてレコーディングされた通算25作目のスタジオ・アルバム『フォーリン・タングス』は、ロック、カントリー、ソウル、ファンク、パンク、ディスコといったバンドお馴染みのサウンドをパワーアップさせたグレイテスト・ヒッツのような作品であり、最近の生活や愛を歌ったミック・ジャガーのウィットに富んだ歌詞がそこに活力を吹き込んでいる。ノスタルジックでありながら現代的。クラシックでありながら未来を見据えている。親しみやすさと新鮮さが同居している。

「始めた時はストーンズはブルース・バンドだった」とミック・ジャガーは語っている。「ブライアン・ジョーンズが本当に純粋主義者で、キースと私はそこまでではなかったと思う。ブルースは好きだったよ。ただ、常にいろんな種類のポップ・ミュージックが好きだった。だって、初めて自分たちで書いたシングルは“The Last Time”だからね。あれはゴスペル・ソングのコピーだったんだ」

ミック・ジャガーはその長いキャリアを振り返りながら、手に負えなくなったリアム・ギャラガーをディナーパーティーから追い出したエピソードなどと共に新作『フォーリン・タングス』について語ってくれた。

初めて『NME』があなたにインタヴューしたのは1964年でした。その時のことを覚えていますか?

「それは随分と昔のことだね。子どもの頃に読んでいた頃の『NME』は何でも好意的に取り上げることで有名だった。レヴューは星3つか4つで、星1つなんてことは決してなかったんだ」

どうして変わったんでしょうね?

「誰に対してもすごく辛辣なことで有名になっていったんだ。誰も褒められなかった。例外は誰も聴いたことがなく、おそらく二度と耳にすることもないような無名の連中だけだった」

その評価基準の中でザ・ローリング・ストーンズはどんな位置づけだったんでしょう?

「何度もかなり厳しい時期を体験したよ。『NME』の目から見て“新しい”存在じゃないとイケてるバンドとは見なされなかったからね」

当時のインタヴューでは発言に気をつけていたんですか?

「いや。あんまり気をつけていなかったね。何でも話していたよ。口にすべきじゃない、ひどいことを言う人もいたけどね」

1974年2月の号では自分たちのファースト・シングル“Come On”を「本当にひどい」と言っています。

「あれはかなりひどい代物だったからね」

同じインタヴューの中であなたはザ・ビートルズのことを「退屈で、うぬぼれている」とも語っています。

「時には真実を口にすることもあるってことだね(笑)。彼らは多くの素晴らしいことを成し遂げ、多くの道を切り拓いてきた。それまでアメリカで有名になったバンドなんていなかった。当時は閉鎖的な世界だったんだ」

ザ・キュアーのロバート・スミスも参加しているニュー・アルバム『フォーリン・タングス』の話に移りましょうか。

「ああ。アンドリュー・ワットが彼を呼んでいたから、いくつかの曲を聴いてもらったんだ。ほぼ完成していたからね。『何かやってもらおう』と私が言ったら、“Never Gonna Lose You”で歌ってくれて、すこしシンセサイザーも弾いてくれたんだ」

“Divine Intervention”ではギターも弾いていますよね。

「そう。インディっぽいリックを弾いてくれたんだ」

キース・リチャーズは自分の領域に入ってきたことにどんな反応を示したのでしょうか?

「彼はその日はいなかったんだ。キースはグリニッジかコネチカットかどっかにいたんだよ」

“Covered In You”ではポール・マッカートニーがベースを弾いていますよね?

「そうなんだよ。『ハックニー・ダイアモンズ』に収録されている“Bite My Head Off”と同じセッションだった。新曲のほうがもっとファンク風のベース・パートなんだ」

ポール・マッカートニーはザ・ローリング・ストーンズのアルバムに参加できて「嬉しかった」と語っていましたが、スタジオでの彼はどんな様子でしたか?

「すごくやりやすかったよ。もちろん、ポールのことはだいぶ前から知っているからね。知らない間柄じゃない。ただ、一緒にベースを弾いてくれたことはなかった。そこは違ったよね。アンドリュー・ワットに『彼はこの曲を気に入ってくれるかな? パンク・チューンだから、オーバードライヴの効いたベースにしたい。シンプルにいこう。余計なことは抜きで』と言ったよ。そうしたら、ポールはまさに求めているものをやってくれたんだ。10分くらいだったと思う」

“Never Wanna Lose You”ではブルーノ・マーズがカウベルで参加しているんですよね?

「(笑)ブルーノはヴォーカルを仕上げていた時にロサンゼルスのスタジオに来てくれてね。いくつかの曲を聴かせたんだ。でも、うちのスタジオでは誰もが働くことになっているからね。『ビールでもビスケットでも何でもいいから取ってきて、カウベルを叩いてくれよ』と言ったんだ」

スタジオにグラミー賞受賞の大スターをつかまえて、カウベルを頼んだんですか?

「そうなんだよ。でも、彼はやりたがってくれてね。彼はパーカッショニストでもあるからね。そう考えると、私みたいだね。私も人のレコードでマラカスを演奏するのが好きだから」

レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスはチャック・ベリーのカヴァーである“Beautiful Delilah”でドラムを叩いています。

「彼が叩いたのは10小節くらいなんだ。アコースティックな曲だから、自分でバス・ドラムをやろうと思っていたんだけど、アンドリュー・ワットがチャド・スミスを連れてきたから、出番がなくなってしまったんだよ。チャド・スミスも大々的な参加でないことは分かっていたんだ」

エイミー・ワインハウスの“You Know I’m No Good”をカヴァーしようと思ったのはなぜだったんですか?

「アルバムに少し漂うブリティッシュっぽさの一環だと思う。アルバムのうち10曲はロンドンでレコーディングしたんだ。あの曲はほぼ彼女のアレンジでやったんだ。キーもそのままだった。ホーン・セクションのパートをハーモニカで吹いたんだけど、楽しかったよ。マイナー・キーでハーモニカを吹くのはいつだって楽しいからね」

チャーリー・ワッツが亡くなってから5年になりますが、“Hit Me In The Head”はチャーリー・ワッツの音源なんですよね?

「ああ。彼が見事に叩いてくれたんだ。亡くなる前の2021年にロサンゼルスでやったんだよ」

『NME』がチャーリー・ワッツの生前最後の映像インタヴューを行った際、携帯電話を持っていないことであなたをイライラさせていたと語っていたんですが……。

「ああ。あれは大変だった。彼は過去の時代を生きているようだった。いいかい、誰もがiPhoneを持っている時代だよ。60年代じゃないんだからさ」

でも、彼はそういう人でしたよね。

「そう。そういう人だった。彼のことが本当に惜しまれるよ」

リアム・ギャラガーがあなたの家を出ていくように言われた時のことを聞かせてもらってもいいですか?

「リッチモンドの家に彼が来たことはなんとなく覚えているよ。かなり出来上がっていたんだと思う」

彼が自分でそう言っていたんでしょうか?

「でも、取っ組み合いの喧嘩になったというわけじゃないんだ。彼もそろそろ帰る時間だと気づいたんだと思うよ。確か、ディナーパーティーみたいな集まりだったと思う」

来年はグラストンベリー・フェスティバルが帰ってきますが、またヘッドライナーを務めることはありますか?

「あそこでライヴをやるのは難しいんだ。ステージがすごく変わっていてね。すごく分断された作りで、観客から遠く離れてしまう。普段なら15メートルくらいせり出した花道があるんだけど、グラストンベリーでは3メートルくらいしかなかった。もちろん、丘を見上げてみんなの姿が見えるのは最高だし、素晴らしい体験だよ。それは間違いない。またやりたいかって? イエスと言っておくよ」

つまりザ・ローリング・ストーンズのステージはまだ終わっていないということですね?

「そうあってほしいね。今年はライヴをやらないと思うけど、来年はストーンズとして何らかのライヴをできればと思っているよ」

今年はなぜ無理だったんです?

「キースが納得してくれなかったんだ。ツアーとか、そういうものに対してあまり乗り気じゃなかったみたいでね。そうなると、長期滞在型の連続公演といった話になってくるんだ」

ラスベガス公演のような感じですか?

「いや。自分としてはハリー・スタイルズがアムステルダムやロンドンでやっているような感じを考えている。まあ、彼も1ヶ所にとどまるわけではなく、世界を回っているんだけどね。でも、来年はライヴの日程を組めればと思っている。決まったら知らせるよ」

次のアルバムの構想もあるのでしょうか?

「ああ。三部作になるかもしれないね。すでに曲作りは始めているんだ。他の人の曲になるかもしれないけどね。曲を書いていると、『これは自分たちじゃないけど、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなら合うかも』なんて思うことがあるからね」

最近は他のアーティストのために曲を書くことも多いんですか?

「そこはとてもオープンなんだ。曲はたくさんあるし、そのすべてがローリング・ストーンズに合うわけじゃない。だからといって曲作りを止める必要はないだろう? アイデアが浮かんだら、とにかく書いてみるべきなんだ」

おすすめの新しいアーティストはいますか?

「最近はサム・フェンダーをよく聴いているね。好きな曲がたくさんあるんだ。あの『ピープル・ウォッチング』というアルバムは素晴らしかった。あのアルバムは卓越した作品だったと思う。それより前の作品も好きだよ。『セヴンティーン・ゴーイング・アンダー』、あのアルバムにもいくつかいい曲があるよね」

サム・フェンダーの音楽のどんなところが好きですか?

「初めて曲を聴く時というのはいつも同じような感じなんだ。まずは全体的な雰囲気、そしてグルーヴだね。ロック・ミュージックだけど、彼の曲には素晴らしいサビがある。それが重要な要素なんだ。歌詞も興味をそそられるものが多かった。大人になっていく体験が反映されているんだ」

“Tumbling Dice”のゲストにサム・フェンダーを迎えたら合うんじゃないですか?

「ああ、彼は向いているかもしれないね」

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