NME Japanでは今年のフジロックフェスティバルでベスト・アクトの1〜20位を選んでみました。とはいっても、多くのアーティストが出演するフジロックです。すべてのアーティストを観ることはできません。なので、観られた範囲の中で、あくまで独断で、編集部で観たいと思ったアーティストのなかから、議論を重ねて、このランキングを作成してみました。みなさんのベスト・アクトとぜひ較べてみてください。
20位 ベニー(7/29 GREEN STAGE)
清々しいステージだった。19歳の時に発表したガス・ダパートンとのコラボレーション曲“Supalonely”が一躍世界的ヒットとなって大きな脚光を浴びることになったニュージーランドはオークランド出身の彼女だが、赤の遊戯王のTシャツで登場した時点でそのチャーミングな人柄が滲み出る。2000年発表の“Kool”から始まったステージは“Soaked”といった代表曲を挟みながら、前半で早くもサッカー日本代表のユニフォームに着替えるなど、サービス精神に満ちたもので、中盤からは新曲モードに入って、“Love Rollercoaster”や“Morning Routine”といった曲を披露しつつ、“Green Honda”終わりではムートンのブーツも脱ぎ捨て、靴下でステージを続行してみせる。引き続き“Sports Mode”といった新曲を挟みながら、“Sheesh”では右から左まで最前列のみんなとハイタッチして、最後はもちろん“Supalonely”。その攻めの姿勢も含めて未来はまだこれからという彼女の声が聞こえるようだった。
19位 デンゼル・カリー(7/28 WHITE STAGE)
冒頭からDJがニルヴァーナだったり、システム・オブ・ア・ダウンだったりをかけるという大技中の大技をかまし、「サワゲー」「アバレロー」と日本語で観客に向けて声を掛けてくる時点で、アーティストとしてのキャラクターが伝わってくる。しばらくして登場したデンゼル・カリー本人は最新作『メルト・マイ・アイズ・シー・ユア・フューチャー』より“Walkin”と“Ain’t No Way”を披露してみせる。クラシックなヒップホップの雰囲気がありながら、あくまで現在進行系のパフォーマーとしての力をエネルギッシュに発散させてみせる様は日本のオーディエンスとの相性もバッチリなのではないだろうか。スケジュールの関係で前半しか観られなかったのだけど、日本の国技である相撲をテーマにした“Sumo | Zumo”を初め、映像含めてかねてから語られてきた日本愛を爆発させていた。最後に披露されたレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの“Bulls on Parade”のカヴァー、観たかったな。
18位 100ゲックス(7/30 WHITE STAGE)
レッド・マーキーではジョン・キャロル・カービーがフルートやパーカッションも交えた編成で独自のグルーヴを提供するなか、正反対とも言えるサウンドが鳴り響くホワイト・ステージに駆けつける。ステージ上にあるのは正面右後方にあるゴミ箱をひっくり返したような、ちょっとした機材台のみ。2010年代後半に登場したハイパーポップの旗手はバンドという肉体性をその佇まいからして否定してみせる。展開されるのは節操なくジャンルを横断した雑種サウンドで、“Billy Knows Jamie”にはリンプ・ビズキットの片鱗を感じるし、“Torture Me”はEDM直系で、“hand crushed by a mallet”はユーロダンスを彷彿とさせる。しかし、映像的演出があるわけでもなく、2人の挙動とサウンドでこの空間を成立させてしまっているのがすごい。終盤はファースト・アルバムの“Money Machine”を初めとした代表曲が投下され、セントルイス出身の愉快な知能犯の初来日は“gec 2 Ü”で幕を閉じることになった。
17位 FKJ(7/30 RED MARQUEE)
開演予定時刻から10分を過ぎてもなかなか始まらない。ステージを見ながら機材関係で難しいところがあるのだろうかと思っていると、それは現実になった。FKJという人の魅力は、これだけラップトップ1台でかなりのサウンドが作れるようになった時代であるにもかかわらず、テクノロジーを無視することなく、ループやシーケンスを駆使しながら、自分の肉体性へと回帰させてライヴを作り上げていく点だと思っている。それだけに今回の2度の機材トラブルというのはその核心に近い部分に触れるものだった。でも、観客の反応はあたたかいもので、ステージが中断している間も拍手が寄せられ、アル・グリーンの“Let’s Stay Together”から始まったリミックス・セクションは超満員のレッド・マーキーの温度が一段と高くなったし、“Vibin’ Out”でジューン・マリージーが登場すると歓声が湧き上がる。その中で彼がピアノを弾く時の繊細なタッチが印象的だった。
16位 ノー・ウォーリーズ(7/28 WHITE STAGE)
初めて観ることのできたノー・ウォーリーズのライヴだが、基本的な構成はジャミロクワイを彷彿とさせるようなヴォリューム感たっぷりのハットを被ったアンダーソン・パークが堂々のエンタテイナーっぷりでノレッジのトラックによるノー・ウォーリーズの楽曲を披露しながら、数曲を披露すると、アンダーソン・パークは袖に引っ込み、ノレッジがDJセットを披露するというもので、渾身のパフォーマンスを見せつけるというよりは、風通しのよい茶目っ気と遊び心に溢れたものとなっている。“What More Can I Say”や昨年リリースされた“Where I Go”を披露しつつ、ノレッジは彼らのルーツとなってきた楽曲をプレイしていく。アンダーソン・パークという人は本人自体がプレイヤーとして圧倒的な身体的グルーヴの持ち主だけれど、それとは別に歌を軸に先人たちの音楽と繋がるチャンネルも作っておきたいという気持ちがあったのだろう。そんな飾らなさを感じたステージだった。
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