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本日9月11日は10月に来日公演を行うリチャード・アシュクロフトの誕生日。ザ・ヴァーヴで90年代に数々の名曲を遺してきた彼だが、そんな彼の誕生日を記念して、今回はUKのNMEが選ぶ1990年代の名曲1~100位をお送りします。ニヒルなグランジの底なし沼を覗き込むか、目が眩むようなブリットポップで現実逃避するか、もしくはライオット・ガールのパワーを充電するのか。いずれにせよ、数々の名曲をお楽しみください。

来日公演の詳細はこちらから。

http://ashcroft-japantour.com/

100位 クーリオ feat. L.V. “Gangsta’s Paradise”


クーリオはアメリカで料理番組に「主演」して暇をつぶしたりしていたが、1995年、ほんの少しの間だけ、彼はクールの象徴だった。ヒップホップの過激な言葉遣いを控えた“Gangsta’s Paradise”は、ゴスペルの影響を受けて宗教色を帯びたラップとなっている。この曲でクーリオは大柄なL.V.をフィーチャーしつつ、スティーヴィー・ワンダーの楽曲“Pastime Paradise”をサンプリングして、楽曲をギャングスタ・ライフの落とし穴を歌ったダークな物語に仕上げている。


99位 ブラック・グレープ “Reverend Black Grape”


ハッピー・マンデーズが内部分裂した結果、ショーン・ライダーとベズは共に夕日の彼方へ去って行ったが、持ち前の野太いビートとグルーヴに、まだ大勢のファンは魅了されていた。“Reverend Black Grape”は、ブラック・グレープとしてのファースト・シングルであり、ハッピー・マンデーズの“Step On”よりも売り上げ枚数が多かったのだ。とはいえ、楽曲の中でカトリック教会、教皇とナチスを対比させたために、物議を醸すことを免れなかった。


98位 ポール・ウェラー “The Changingman”


「モッド・ファーザー」ことポール・ウェラーが3枚目のソロ・アルバム『スタンリー・ロード』をリリースする頃には、彼はソロ・アーティストとしての地位を確立し、ザ・ジャムやスタイル・カウンシルといったバンドなしに活躍していた。“The Changingman”は、時代に対するポール・ウェラー流のマントラとしての役割をうまく果たしたのかもしれない。つまり、絶え間ない進化と限界への挑戦が必要だという認識が、打ち鳴らされる重厚なリフと白熱する即興フレーズに支えられているのだ。


97位 スヌープ・ドッギー・ドッグ “Who Am I? (What’s My Name)”


「彼女は一番デカいタマのニガーが好きだって、分かるか?/そいつは俺だ、俺がそいつさ(She want the nigga with the biggest nuts, and guess what? / He is I, and I am him)」。スヌープ・ドッグことカルバン・ブローダスがドクター・ドレーとタッグを組んでリリースしたデビュー・アルバム『ドギースタイル』からのファースト・シングルに、「卑下」という言葉は影も形もない。スヌープ・ドッグの力の抜けたレイドバック・スタイルは、過激な暴力性があるN.W.A.をよりファンクに、よりメロディアックに変化させ、ウエスト・コースト・ラップの転換点となるもう1つの重要なファクターとなった。


96位 ニュー・ラディカルズ “You Get What You Give”


ニュー・ラディカルズは、1999年に発表したスタジオ・アルバム1枚を残して活動を停止し、残念ながら2000年代には動きを見せていない。しかし、彼らは90年代きっての一発屋として愛されていることに満足しているようだ。心地良いギター・ポップの“You Get What You Give”は、世界中のヒットチャートで旋風を巻き起こし、U2のギタリスト、ジ・エッジをして「自分がこの曲を書きたかった」と言わしめた。


95位 ガンズ・アンド・ローゼス “November Rain”


度が過ぎる? ガンズ・アンド・ローゼスが? まあ、“November Rain”のオリジナル・ヴァージョンは、無意味にも18分もあったとも言われている。そして、このミュージック・ビデオの制作には、わずか150万ドル(約1億8,000万円)しかかかっていない。しかし、この呆れるような破天荒さによって、“November Rain”は、仰々しいオーケストラから、スラッシュの永遠に終わらないソロまでが詰め込まれた、見事なキラー・チューンに仕上げられることになった。尊大なギターの爆音が、これほど壮大な曲もないだろう。


94位 レフトフィールド feat. ジョン・ライドン “Open Up”


これはUKチャートでナンバーワンをとってもおかしくない曲だったが、残酷な偶然の一致で首位の座を逃してしまった。レフトフィールドが、ジョン・ライドンのあざ笑うようなヴォーカルに、脳天にガツンとくるエレクトロニカをミックスした曲をリリースした時、大ヒットは間違いなしだった。しかし「燃えろ! ハリウッドよ、燃えろ!(Burn! Hollywood Burn! )」と吠えたてる歌詞は、不幸にもこの曲のリリースと同じ週、カリフォルニアで起こった山火事の延焼の最中に響いてしまったのだった。


93位 ジェイムス “Laid”


無邪気にかき鳴らされるメロディに騙されてはいけない。“Laid”を歌うティム・ブースは、「近所の奴らが上からの騒音に文句を言ってる、でも、彼女がイクのは上に乗ってる時だけなのさ(The neighbours complain about the noises above, but she only comes when she’s on top)」という歌詞のように、魅力的かつ難解になっていき、その後、彼はアメリカのカレッジ・ラジオのファンになっていた。それにしても、あのスネア・ロールには誰も抗えるわけがない……。


92位 ドクター・ドレー feat. スヌープ・ドッギー・ドッグ “Nuthin’ But A ‘G’ Thang”


ドクター・ドレーは、ゆったりとしたディープなグルーヴと重厚なベースが特徴のウエスト・コースト・ラップの新たな系統となるGファンクを世界中に発信した。しかし、この曲は腕の良いドクター・ドレー一人ではなく、スヌープ・ドギー・ドッグを主役に迎え、彼は男臭さのにじむ気だるいラップを披露している。「ビッチを見つけ出す前に、避妊具を見つけないとな(Before me dig out a bitch I have to find a contraceptive)」と彼が喉を鳴らすと、片方の目は既にポルノグラフィーの方を向いているのだ。


91位 パルプ “Babies”


メジャーの最先端、もしくは少なくともメインストリームにいる状態で、パルプは自身の楽曲の中でも最も愛されているこの曲をリリースした。これはガールフレンドのクローゼットに隠れて、彼女の姉との物語を妄想するという内容だ。こんなの、彼らの実体験に決まってるではないか。曲が展開していくと、ジャーヴィス・コッカーが「彼女といたのは、彼女が君にそっくりだったからだよ…ああ神様!(I only went with her ‘cos she looks like you… My God!)」と訴えている。何というか、1992年のピークじゃない?


90位 ア・トライブ・コールド・クエスト “Can I Kick It?”


デ・ラ・ソウルやジャングル・ブラザーズと共に、いわゆる 「意識の高い」ラッパーたちで構成されるネイティブ・タンという集団の一員でもあり、その中でもア・トライブ・コールド・クエストはリラックスした会話形式のこの曲で人気を博し、イギリスでも大ヒットとなった。きっかけはこの曲のボイラーハウス・リミックスだ。このリミックスはルー・リードの“Walk On The Wild Side”をサンプリングし、映画『フランキー・ワイルドの素晴らしき世界』のイントロなど、様々な音を取り込んでいる。


89位 ベル・アンド・セバスチャン “The Boy With The Arab Strap”


ベル・アンド・セバスチャンというバンドは、図書館であなたに向かって「シーッ」と言ってくるような読書家タイプに思えるかもしれないが、この楽曲では彼らはいつもより卑猥で、その踏み込んだ発言で知られるアラブ・ストラップのヴォーカル、エイダン・モファットに敬意を表してこの楽曲を捧げている。スチュアート・マードックは陽気でうねる様なこの曲で「君は10大オナニーのヒットパレードをいつも更新し続けている(You’re constantly updating your hit parade of your ten biggest wanks)」と歌い、ウインクしている。いつもは大人しいはずの彼がね……。


88位 メタリカ “Enter Sandman”


メタリカが最高に暴れ回っている曲だ。“Enter Sandman”がキャッチーになり過ぎることを危惧したヴォーカルのジェイムズ・ヘットフィールドは、これまでにないほど不穏な歌詞を出来るだけ掻き集めた。例えば、「そいつはお前のベッドの下にいる猛獣だ(It’s just the beast underneath your bed)」と、ゆりかごの中の子供の死を思わせる様な歌詞。メタリカが数年後にグループセラピーを始めた理由が瞬時に理解できる……。


87位 マニック・ストリート・プリーチャーズ “A Design For Life”


リッチー・エドワーズの失踪後、3人体制での活動継続を余儀なくされたマニック・ストリート・プリーチャーズは、“A Design For Life”で、ニッキー・ワイアーのほぼ完璧な歌詞を壮大なストリングスのアレンジと組み合わせ、バンドが窮地に追いやられても、エリート主義に立ち向かい、階級対立の傷跡を誇らしげに示している。そして、ジェームス・ディーン・ブラッドフィールドも、この曲で彼の最上級のヴォーカル・パフォーマンスを披露している。


86位 オアシス “Wonderwall”


“Wonderwall”は、ノエル・ギャラガーの元妻のメグ・マシューズについて書かれたのか、それとも後に彼が言い張るように「空想上の友人」についてなのかは、ノエル本人のみぞ知るところとなっている。しかし、そんなことはまったくどうでもいい。我々がどんな風に解釈しても、“Wonderwall”は、時代を超える希少な名曲で、どの世代にとってもシンガロングできるアンセムの傑作で、優しくて、酔っ払いみたいで、共感できるものなのだ。


85位 ソニック・ユース “Sugar Kane”


ソニック・ユースがブッチ・ヴィグのプロデュースで『ダーティ』をリリースした時には、随分と驚かされた。ブッチ・ヴィグはニルヴァーナの名作『ネヴァーマインド』を手掛けたばかりだったからだ。しかし、“Sugar Kane”ではドル箱であったグランジのヒット路線を狙わず、キム・ゴードンとサーストン・ムーアがそれぞれ自身の強みにこだわり、裂けるようなリフと荒れたギター・サウンドで彩られた騒々しいポップ・メロディを世に送り出すこととなった。


84位 ノー・ダウト “Don’t Speak”


聞くところによれば、グウェン・ステファニーはバンドのベーシストであるトニー・カナルと別れた後、“Don’t Speak”の初期の安っぽいヴァージョンをボツにしたと言われている。リハーサルが少し気まずくなったのかもしれない。しかし、曲のテンポを落として歌詞を追加するという彼女の判断は、良い結果をもたらした。彼らのトレードマークだったスカ・ポップから、失恋バラードへの劇的な転向を図ったこの曲は、バンド史上最大のヒット作となった。


83位 ハッピー・マンデーズ “Step On”


モンスター・ヒットとなったハッピー・マンデーズの画期的なアルバム『ピルズ・ン・スリルズ・アンド・ベリーエイクス』に収録されているこの曲は、ジョン・コンゴスが1971年に発表したヒット曲“He’s Gonna Step On You Again”を元ネタとして大雑把に作られたものだった。しかし、原曲に大きく手が加えられて、まるで別の曲のようなゾクゾクするパーティ・アンセムに仕上がった。そして、自信たっぷりな卑猥さを最大限に発するこの曲は、20数年たった今でも人々の頭を混乱させている


82位 2パック feat. ドクター・ドレー “California Love”


ウエスト・コースト・ヒップホップの2大アイコンによるコラボレーションが、彼らの故郷であるカリフォルニアへの賛歌を生み出した。この曲は、2パックが婦女暴行の罪で服役していた刑務所から釈放後ほどなくしてリリースされた。ドクター・ドレーは、ジョー・コッカーの往年の名曲のサンプリングに爆発するようなビートをミックスし、2パックと共に好き勝手に暴れている。ハイプ・ウィリアムズが監督したミュージック・ビデオでは映画『マッドマックス』の世界観を踏襲しており、『マッドマックス』のキャラクターに劣らぬ2人の迫力に圧倒される。


81位 ライド “Vapour Trail”


オックスフォード出身のシューゲイザー・バンドであるライドの楽曲については、シューゲイザーの先人であるマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン以上に優れており、特にデビュー・アルバム『ノーホエア』収録のこの曲“Vapour Trail”は、マイブラに劣らず素晴らしい曲である。ローレンス・コルバートのドラムから、終盤のストリング・カルテットという楽曲の音の幅だけでなく、奥底に漂うあらゆる悲しみをすくい上げていくマーク・ガードナーの陰鬱なヴォーカルにも驚かされる。まさに珠玉の1曲だ。


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