ザ・1975のフロントマンであるマット・ヒーリーは10月9日にテキサスで行った公演でマレーシア政府のLGBTQ+に関する法律に抗議して、同国でのパフォーマンスを禁止されたことについて語っている。
ザ・1975のマット・ヒーリーは7月21日にグッド・ヴァイブス・フェスティバルのヘッドライナーのステージでマレーシアのLGBTQ+に関する法律に抗議して、ライヴを早く切り上げる事態となっている。その後、フェスティバルの残りの日程は中止され、ザ・1975はマレーシアでのパフォーマンスを禁止されている。
グッド・ヴァイブス・フェスティバルの主催者であるフューチャー・サウンド・アジアはフロントマンのマット・ヒーリーの「猥褻な振る舞い」によってフェスティバルが中止になったとして1,230万マレーシアリンギット(約3億8000万円)を損害賠償として求めている。ザ・1975のヘッドライナーのステージを受けて、マレーシアのLGBTQ+コミュニティからは批判が寄せられており、LGBTQ+コミュニティの生活にとって事態を悪化させるものになるという意見も出ている。
マット・ヒーリーは10月9日の公演で“Love It If We Made It”を演奏する前にこの件についての自身の考えを時間をとって語っている。
「さて、紳士淑女のみなさん」とマット・ヒーリーは始めている。「残念ながらダラスのみなさんは貧乏くじを引いたかもしれません。というのも、今回の公演はステージだけでなく、様々な状況へと余波を与えるもので、人種差別主義者だとか、いろいろ言われますが、そうした空虚で浅はかな批判は気にしません。そうすることで、この公演は意図されたものをやることができ、矛盾や偽善を暴き、そういうことをするために自分自身のことを使っているのです」
マット・ヒーリーは続いてマレーシアでの出来事に直接言及している。「みなさんには関係ないんですが、残念なことにインターネットには愚かな人たちがたくさんいて、誰しもにマレーシアのこと、あそこで起きたことについて喋るなと言われ続けてきました。ただ、長くなりますが、話したいと思います」
彼は「率直に言ってムカついた」としながら次のように続けている。「ザ・1975は予告なしにマレーシアにやってきたわけではなく、政治的な見解を口に出し、どんなライヴをやるか、全部知っていた政府によってフェスティバルのヘッドライナーに招待されたんです。マレーシアのフェスティバル主催者はバンドについて詳しく、それが招待の根底にはありました」
「私がロスにキスしたのも政府を挑発するための行動ではなく、それまでに何度もやってきたザ・1975のパフォーマンスの一部です。同様にあの夜はセットリストを変更することもなく、自由を支持し、同性愛を支持する曲を演奏しました」
「マレーシア当局のLGBTQの人々に対する偏見に譲歩するように、いつも通りのライヴをやらないことにしていたら、それこそ彼らの政策を消極的に支持することになってしまいます。リベラルの人は『沈黙が暴力を生む。自分のプラットフォームを使え』と好んでよく言いますが、それをまっとうしたのです」
マット・ヒーリーは「事態が複雑になったのはここからです」として「マレーシア当局は彼らの権威主義的な神権政治において同性愛は犯罪であり、死刑に値するため怒っていた」ことに触れている。
「最も不可解だったのはLGBTQの人々を支持するステージを続けたバンドに対してリベラルの人たちも怒ったことです。多くのリベラルな人々がパフォーマンスがマレーシア政府の文化的慣習に対する敵意を無神経に露わにしたもので、キスはアライシップのパフォーマンス的行為だと言ってきました」
「パフォーマンス的だとステージ上の人間を批判するという発想自体が極めて退屈でつまらないものです。パフォーマンスをするのがパフォーマーの仕事です。ステージというのは本質的にドラマ化されたアーティストの表現の場で、だから人々は公演を観に来ます」
「他にもリベラルだという人がキス自体が植民地主義の形態になっていると言ってきました。ザ・1975は過去の邪悪な白人に連なるもので、東洋世界に西洋の考えを押し付けているというのです」
「ザ・1975のパフォーマンスが植民地主義なんて言葉の意味が完全に逆です。ジュリアン・カサブランカスといった人たちはツイッターで私たちを批判していますが、植民地のアイデンティティ政治を使ったこうした揶揄はフェスティバルが中止になった失望を表現する便宜的な手段でした。趣味の悪い形で、パフォーマンスできないことを嘆くものになったからです」
ジュリアン・カサブランカスはグッド・ヴァイブス・フェスティバルへの出演が中止になったことを受けて「変えなきゃいけないけど、戦略的にならなければならない」とこの一件についてコメントしていた。
マット・ヒーリーは10月9日の公演で次のように続けている。「もしアーティストがその巨大なプラットフォームを利用することでリベラルな美徳を擁護する責任があると本当に考えているのであれば、コンセンサスを鸚鵡返しすることで得られる評価ではなく、行うことで直面する危険や不都合によってアーティストは判断されるべきです。ロサンゼルスの自宅にいながらプロフィール写真を変更することについては、特に驚くようなことでも勇敢なことでもありません。そうしたことにムカついているのです」
マット・ヒーリーは「マレーシアでは公共の場での同性愛が軍の執行機関によって禁じられており、アーティストが何をすることが許され、何を期待されているのか、明確な一線が引かれています」と説明している。彼は「他の場所ではその一線はそれほど明確ではない」として、アメリカの特定の州では「身体的自律性とジェンダーの表出を制限する非自由主義的な法律が支持されている」ことにも言及している。
「ザ・1975がマレーシアの慣習に合わせようとしないことに憤慨してツイートした人々はミシシッピ州のでたらめなトランスジェンダーを巡る法律を私たちが黙認したら呆れるのでしょう」
「アーティストが招かれた場所の配慮に合わせるべき責任があるという考えは危険な前例になります」
先日、マット・ヒーリーはここのところの物議を醸したコメントについて「傷つけてしまった」人々に謝罪している。
マット・ヒーリーは今年2月にポッドキャスト『アダム・フリードランド・ショウ』でした発言が物議を醸していた。「クィア・ベイティング」という批判を受けていたハリー・スタイルズについては「許されているんだろうね」と語っている。共同司会のニック・マレンはラッパーのアイス・スパイスの出自についてハワイアン、イヌイット、中国人の血は入っているのだろうかと述べ、これらの国や地域のアクセントを物真似していた。また、ポッドキャストにはドイツの強制収容所にいる架空の日本人看守の真似をして笑う場面も存在していた。
「別の部分で誇張した自分自身を演じていたようなところがあったんだ。印刷物であれ、ポッドキャストであれ、21世紀のロックスターの役割を果たそうと見当違いの試みをしてきた。それで面倒なことになっていたんだ」とマット・ヒーリーは続けている。「何かのふりをすることでしか本当の自分が見つからないこともあるし、セラピーを受けるよりも注目を集めるために攻撃的な印象を与えることを好むとも言えるかもしれない」
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