PRESS

Photo: PRESS

2013年発表の『モダン・ヴァンパイアズ・オブ・ ザ・シティ』以来6年ぶりとなる通算4作目のアルバム『ファーザー・オブ・ザ・ブライド』は、全18曲におよぶヴァンパイア・ウィークエンドにとってこれまでで最も収録曲数の多いアルバムとなっている。2019年というストリーミングの時代において、フロントマンのエズラ・クーニグ自身、楽曲数が多いことで聴かれる確率が低くなる曲ができてしまうことは自覚しているとしながらも、「そうする必要があった」アルバムであることを強調している。本作のリリースに至るまでの6年の間に、ヴァンパイア・ウィークエンドはソングライティングの中核をエズラ・クーニグと共に担ってきたロスタム・バドマンクリの脱退を経験し、エズラ・クーニグ個人としても、ビヨンセら他のアーティストへの楽曲提供や、ネットフリックスの番組「ネオ・ヨキオ」の制作など、様々な経験をしてきた。ここに紹介するのは、ロンドンで行われたレーベルによるエズラ・クーニグのオフィシャル・インタヴューとなる。アルバムの制作から離れていた6年の期間についての話はもちろん、今日においてギター・ミュージックを鳴らし続けることや、本作のプロデューサーを務めるアリエル・レヒトシェイドへの絶対的な信頼などに言及しながら、待望の最新作について詳細に語っている。

――18曲の大作が生まれました。ストリーミングの時代になってアルバム単位で聴く人が少なくなったとよく言われる中で、6年ぶりの待望の新作が2枚組アルバムのボリュームを持っているのは何らかの意思表示のような気もするのですが、どうして今回、18曲入りの作品にしようと思ったんですか。

「18曲を収録することで特に何かを訴えたかったわけではなくて、そうする必要があったんだ。当時はヴァンパイア・ウィークエンドが10曲、11曲を収録したアルバムを作るということが想像できなかった。ラッキーなことに、曲を書き始めたらどんどんアイディアも生まれてきた。そうでなければ18曲も収録できなかった。それと、このアルバムで作り上げたかった世界は大きいもので、多彩な曲を収録できるようなコントラストのある世界にしたかったんだ。前作は一色だけれど、今作では同じような道を辿りたくはなかった。アルバムごとにダークになってインテンスな感じにする道も選べただろうけれど、それよりももっとオープンな内容の作品にしたかったんだ。ダブル・アルバムというのはヴァンパイア・ウィークエンドの4作目としては最適で、僕がインスパイアされたザ・ローリング・ストーンズの『メイン・ストリートのならず者』やブルース・スプリングスティーンの『ザ・リバー』、フリートウッド・マックの『牙(タスク)』といったダブル・アルバムのことを考えてみた。そうしたら、こうしたアルバムは僕の大好きなアルバムだということに気づいて、自分たちがダブル・アルバムを作るタイミングにも適していると感じたんだ。それで音楽業界の人たちにも相談したら、そうすることの良し悪しを語られるわけだけれども、18曲というのは真剣に聴いてくれるような人たちのための作品だな、なんて言われてね。僕たちもストリーミングにおいては最後のほうの曲は聴いてもらえる確率が低くなるのはわかっていて、そういった意見も言われて、それはそうだけれども、ヴァンパイア・ウィークエンドはアルバム志向のバンドであって、これまでもそういう芸術形式で活動してきた。幾分ストリーミング率が低くなったところで、それはあまり気にすべきことではないんだ。僕たちのコア・ファンは、アルバムという形で僕たちの音楽を経験したいと思ってくれている。この時代は少し音楽から離れていると、速い速度でかなり違った様子になっていて、歳を取ったせいもあるけど、なぜ音楽が好きなのか、ということに気づくんだ。自分の書いた曲がリリー・アレンやビヨンセといった他のアーティストの作品に収録されることになったりして、僕も彼女たちのことは尊敬しているけれど、昔からソングライティングだけをやるということに躊躇を感じているんだ。それは僕が興味を持っていることではないんだよ。ヴァンパイア・ウィークエンドのアルバムを作ることには興味はあるかもしれないけれどね。1曲ずつシングルを出し続けたり、曲を10曲書いたほうが金儲けができるなんて言われようが、それは僕には意味のないことなんだ。ヴァンパイア・ウィークエンドの各章がどのようなストーリーになるべきかという直感は常にあって、それが音楽業界という大きなくくりに関係していなければならないわけではない。それと、18曲収録されているというのは、僕にとってダブル・アルバムのような作品で、オールドスクールなダブル・アルバムだけれども、18曲でも一枚のアルバム扱いされている作品も普通にある。年齢のいっている人たちの中には、僕がクラシック・アルバム(名盤)を作ろうとしているのではと思う人もいるかもしれないし、若い人たちは単なる1枚のアルバムと取るかもしれないね。でも、そういったことはどうでもいいんだ。なんでもありなんだよ」

――様々なものがこれまでとは変化した作品ですが、だからこそ「変わり続ける勇敢なバンド」というあなたたちらしさは不変だと思いました。本作の制作にあたって、あなた個人にとって一番の挑戦は何でしたか?

「一番の挑戦はアルバム作りの前にあったね。3枚のアルバムをリリースしてツアーを精力的にこなして疲労困憊していて、再びアルバムを作るということにワクワクしなくなっていた。 僕の考えていた進むべき次の章の世界にヴァンパイア・ウィークエンドを想像できなかった。それに、2年間ほど音楽ファン、アマチュアの存在に戻って他のことをやってみたいと思ったんだ。それが最も難しいことだったね。2014年に活動をひと段落して、2014年から2016年の間は、世の中が変化するのを見ていても自分が何を言いたいのかわからなかった。でも、そういった休みを取ったのは正解だったよ。その間に何人かのファンを失うことになったかもしれないけれど、その後はすさまじい勢いでインスピレーションも湧いてきたし、音楽を作ることが楽しみで仕方なかった。そうなるまでには困惑していた時期もあったけれど、自分に厳しくはしていなかったんだ。心配などしないようにしていた。3枚もアルバムを作ったのだから、次のアルバムを作らなかったとしてもそれはそれでいい、と思っていた。数年間はレコード契約もしないでいた。どこのレーベルにも所属していなかった。急いでそうする必要性を感じていなかったんだ。困惑の時期ではあっても、他のことに集中して、焦らず自分の人生を楽しめた時期でもある」

――様々な要素がぎゅっと詰め込まれて、我々はまた読み解く喜びのようなものが味わえる作品でもあります。出来上がった今あらためてご自身で聞いて、この作品の三本の柱は何か、と尋ねたらどう答えますか?
 
「ソングライティングだね。はっきりしない答えだけれど、このアルバムは以前と比べて、ヴァンパイア・ウィークエンドにとって新天地を切り開くような曲が数曲含まれている。僕はストレートなソングライティングに刺激を受けたんだ。古いジャズのスタンダードであろうが、カントリー・ミュージック、フォーク・ミュージックであろうがね。それまでと同じヴァンパイア・ウィークエンドの持つヴァイブや妙なところがありながらも、もっと明確な曲を書きたかった。それがこれまでの3作とはまったく違うところだ。曲によってはもっとストーリー性があって、そのシチュエーションもシンプルなものとなっている。以前の僕は奇妙なアイディアが大好きで、(共にファースト・アルバムに収録された)“Oxford Comma”とか“Mansard Roof”といったおかしな名前にエキサイトしていた。このアルバムではもっとシチュエーションに興味があって、皮肉なのは、ほとんどのソングライターはそういう風に曲を書いているわけだけれど、僕にとってそれは新しくて珍しいことなんだ。例えば、ある瞬間を歌った曲で、ある朝2人の人間が一緒にベッドに寝ながら会話を交わしている、といった内容、そういう曲は今までのヴァンパイア・ウィークエンドとは違う。今回のアルバムでは、シンプルでいわゆるトラディショナルなソングライティングがひとつの柱となっている。もうひとつの柱はギターだね。単なる楽器ではあるけれど。ギターは前作でも使われてはいるけれど、バックグラウンド的に使われていた。ギターは重要な役割は果たしていなかった。ギターという楽器が流行らないものとなって、僕には常に『流行らないものには弱い』という弱点があって(笑)、“Giant”という古い曲があって、日本盤には収録されているかもしれないけれど、この歌はカトという古代の哲学者の引用句で締めくくられていてね。“The winning cause pleases the gods, but the losing cause pleases me”という歌詞(注:曲中では、“The winning cause, it pleases God, the losing cause pleases me”となっている)なんだけど 、これは僕がいつも共感してきたことで、世間であろうが神であろうが、人気のあることに見返りを与えるけれど、時として人気のないことに自分は喜びを得るんだ。ギターがまったく流行らなくなり始めた時に僕は『ギターだってそんなに悪いもんじゃないよ』なんて思い始めた(笑)。だから、このアルバムではギターを再び受け入れているんだ。僕にとって最初の2枚、特にファースト・アルバムで感じられるエネルギーのほとんどは、僕がギターでちょっとの間興奮していた時に生まれたエネルギーだ。そこから“A-Punk”や“Cousins”、“Cape Cod Kwassa Kwassa”といった曲も生まれている。短時間で書いた曲だ。僕のとても繊細さに欠けるギター演奏から生まれている。僕がギターにちょっとの間夢中になっていた時に書かれた曲なんだ。それから数年の間は、ギターから生まれた曲はなかった。でも、このアルバムでは“Sunflower”のようにギターから始まる曲があって、僕が最も気に入っているギター演奏の一つなんだけど、ギター・ネックを上下に行ったり来たり指を動かして練習用の曲みたいなんだよね。または“Harmony Hall”とかね。またギターのリフに興味を持つようになったんだ。このアルバムがクラシック・ロックに影響を受けているのがわかると思う。ギターが再び重要な役割を果たしている。僕が弾いていないパートでも、とりとめもなく即興演奏しているパートがある。昔はそういう即興演奏は大嫌いだった。即興演奏はうっとうしいミュージシャンの典型で、僕は大嫌いだった。ヴァンパイア・ウィークエンドでは不要なもののないクリーンな形が好きだからね。でも、僕も年齢を重ねて即興演奏するようなミュージシャンに愛着を持つようになって(笑)、もしかしたらこのアルバムではこういったところは1回しか出てこないかもしれないけれど、歌と歌の間にちょっと出てくるギターとかが突然良いと思えるようになったんだ。そういうパートは、曲に荒さが出て、歯ごたえがよくなる、ちょっとした要素となる。ほんの少しだけ荒さのある曲が気に入っていたんだ。だからギターが大きな要素となっている。3つ目の柱は(頭を悩ませた後で)……コントラストかな。ヴァンパイア・ウィークエンドでは珍しくないことだけれど、このアルバムでは特に重要な要素となっている。このアルバムは、様々な要素を詰め込むのを楽しんだ作品だ。ダニエル・ハイムが参加した3曲は、オールドファッションのカントリー・ソングのデュエットにルーツはあるけれど、カントリー・ソングは作りたくなかったから、2人でグルーヴやらミュージシャンシップを楽しみながら制作したんだ。収録される18曲がそれぞれ目的のあるものにすることも重要だった。ダブル・アルバムに収録される4曲も同じエネルギーを持っているというのは好ましくなかったからね。18の異なったヴァイブで、異なったタイプのエネルギーにしたかったんだ。ソングライティングの面においては同じでも、コントラストのある内容にしたかった。次に来る曲とかなりのコントラストがあるようにして、2枚のアルバムの間に境界線があるような感じにしたんだ。(10曲目に収録された)“My Mistake”はジャジーなバラードで、(11曲目の)“Sympathy”はアップテンポの騒がしい曲になっている。この2曲はムードもエネルギーも違うけれど、歌詞においての視点は共通しているのかもしれない」

――この6年間、前作のツアーがあったり、ネットフリックスでアニメ「ネオ・ヨキオ」 のプロデュースをしたり、お子さんが生まれたりと様々なことがあったわけですが、2年ほどレコーディングはまったくしなかったとおっしゃりましたよね?

「そう、仕事はしていなかった。ここではっきりと言っておきたいのは、このアルバムに6年間費やした訳ではないんだ。前作と同じくらいの期間をかけて作っていたけれど、ただ前作からリリースになるまでにもっと時間がかかってしまったというだけなんだ」

――制作はコンスタントに続いていたんでしょうか。どこで、どういう風にレコーディングが進んでいったか簡単に教えていただけますか?

「2年間休みを取って、アニメーションの仕事をしたり、リラックスしたり、その後、1年間ほど曲作りをして、本作の主なプロデューサーであるアリエル(・レヒトシェイド)と仕事を開始できるようになった。アリエルはハイムの最新作を手がけていて、彼がその仕事を終えるのを待たなくてはならなかった。僕はアルバムをレコーディングしたいとうずうずしていたけれど、アリエル以外とは作りたくなかったから、それだったら仕方ないな、ということで待っていたんだ。アリエルの良いところは、一度スタートしたプロジェクトは終わるまできちんと仕事をしてくれるところでね。ハイムのアルバムはまだ終わらないのか、なんて僕たちもイライラしてはいたけれど、僕も彼が最後まで仕事をこなしてくれるのをわかっていたからね。だから、診療所の待合室で待たなければならないけれども、腕の良い医者が他の患者同様に自分のこともきちんと診てくれるのはわかっている、といったのと同じなんだ。それで、アリエルのことを少し待っていて、1年ほどは僕1人で他のアーティストに曲を書いたり、アイディアをまとめたりして、そうこうしている内にアリエルも僕たちと仕事ができるようになった。そこで僕の溜めていたものを彼に聴いてもらったりして、すぐにレコーディング作業に入ったんだ。気づけばアリエルと毎日のようにスタジオに入るようになってから2年が経過していた。レコーディングして、レコーディングを終えた後は、一番楽しくない作業のミキシングとマスタリングという永遠に終わらない作業に入った。気がつくと6年が過ぎていたんだ。本当に早かったよ」

――彼のスタジオで作業していたのですね?

「そう、彼の自宅のスタジオだよ。彼はもうひとつスタジオを持っているけれど、僕はカジュアルな形で音楽を作ってきたからね。子供の頃は友人の家でやっていたし、大学に入ってからは(元バンドメイトである)ロスタムが自分の寮にスタジオを作っていて、そこで作業していた。だから、とてもカジュアルな環境で作業するのが好きなんだ。ほとんどアマチュアのような環境でね」

――前作からの6年間で、アメリカでは大統領が変わるなど世界や社会のあり方も変われば、音楽の流行や聞き方など、とにかく様々なものが随分と変わりました。そういったこの6年間の時代の変化は、今回のあなたたちの作品や歌詞にどう影響を与えていると思いますか?

「それはどうなのかな。このアルバムの歌詞は、何年も前からあったものも何曲かあるからね。僕たちの音楽はハッピーな音楽だと思われているけれど、僕自身は楽観主義というよりも悲観主義だから。オバマが大統領だった時にも、僕自身は世界の状況には決して満足している訳ではなかった。今、人々が抱えている不安はトランプが大統領になるだいぶ前からあったのだと思う。だから、過去よりも事態が悪化しているのではなくて、人々が今になって状況が悪いことにもっと気づいたということなんだと思う。民主党を支持するリベラルなタイプとして育った人の大勢が特にそう感じているんじゃないかな。1984年に生まれた僕の年齢に近い人たちで、レーガンが大統領時代に生まれて、民主党のビル・クリントン時代に育った人たちだ。その後、ブッシュが大統領になって酷い時代になってイラクへの侵攻があった後に、民主党のオバマが大統領に戻った。だから、あるひとつの歴史観は、というか少なくとも自分の人生で知っている政治は、悪い状況から良くなって、また悪くなって良くなるといった具体だ。その一方で、富や平等や失業率といったグラフを見てみると、あまり変化が見られていないわけでね。問題によっては政党は関係ないんだ。つまり、何が言いたいのかというと、トランプは人としても大統領としてもユニークな存在だけれども、僕の歌詞は人間でいることの意味、人生の目的、他人との関係、こういったコンセプトであることに変わりはなくて、曲によっては世の中のことよりも自分がその時にどうだったかが反映されている歌詞になっている。自分の人生が世の中といかに交差しているのかをみるのは面白いけれど、それがいつでも明確というわけにはいかないんだ」

――日本では昨年、フジロックフェスティバルに出演をしてくれました。あなたにとって日本とは、どんな国ですか?

「日本は毎回楽しんでいるよ。具体的にフジロックフェスティバルの話をすれば、フジロックフェスティバルは素晴らしいフェスで、山の中が会場になっていて、出演アーティストも変わっていて、僕たちはボブ・ディランと同じステージに立つことができたわけでね。最高だったよ。東京で過ごす時間はいつも特別なものとなるし、刺激をたくさん受けるんだ。僕が10代だった頃には、アメリカのインディ・レーベルからリリースされる日本人アーティストも僅かながらにいたんだ。コーネリアスとかがそうだ。ヴァンパイア・ウィークエンドを聴いてくれる人には、そういった日本人アーティストの音楽がいかに影響力の強いものだったのかががわかると思う。多様な音楽を鑑賞して、そういった音楽を自分たちなりにまとめる、というアイディアがね。90年代の日本人アーティストにはそういったことを代表するアーティストが何組かいて、僕にとっての刺激となっているよ。だから、日本は常に刺激的で、東京はニューヨークよりも店や服のクオリティが高くて、ヴァンパイア・ウィークエンドとしてはファッションからもかなり影響を受けている。自分がどの服を着るかということではなくて、曲が衣服に影響を受けることもある。東京にいると音楽とファッションの繋がりを最も意識するな。アルバム作りの終わりの段階で日本に行って、ソニー・ミュージックのスタジオにも行けたのもエキサイティングだったよ。新曲を携えてまた日本に行くのを楽しみにしている。前回はあまり新しい曲は披露できなかったからね」

インタヴュー:妹沢奈美

NME Japanではヴァンパイア・ウィークエンドの新作『ファーザー・オブ・ザ・ブライド』の国内盤リリースを記念して、オフィシャル・リリース・パーティーを開催します。

このオフィシャル・リリース・パーティーではヴァンパイア・ウィークエンドのアーティスト・グッズが当たるプレゼント抽選会も開催される予定です。抽選会は日本盤購入者が優先されますので、日本盤ないしは日本盤の帯を会場にお持ちください。

リリース・パーティーの詳細は以下の通り。

日時:5月14日(火)20 時より
場所:Beatcafe(東京都渋谷区道玄坂 2-13-5-B1)
ファースト・ドリンク:¥500(税込)

Copyright © 2019 TI Media Limited. NME is a registered trademark of TI Media Limited being used under licence.

関連タグ