ロンドンで観た彼女たちのライヴは素晴らしかった。2011年、友人同士だったカルロッタとアナによってスペインのマドリッドで結成されたハインズは、そのたたずまいからも想像のつく通り、男勝りの演奏技術によって魅せるようなバンドではない。しかし、ドラムやギターやベースを手にとって、バンドをやるという、何度となく繰り返されてきたクリシェが、このバンドの前では一度限りの奇跡としてロックンロールの性善説を伴って甦る。そして、そのパフォーマンスはロック・バンドに対して厳しい目を持つロンドンっ子たちのハートも見事に射抜いてみせた。明後日3月2日にリリースされるデビュー・アルバム『リーヴ・ミー・アローン』は、そんな彼女たちの魅力が詰め込まれた最初のマイルストーンである。そして、4月には来日公演も決定している。プライマル・スクリームのボビー・ギレスピーがラヴ・コールを送り、わずか20回目のライヴでザ・リバティーンズの前座を務めることになったこのロックンロールの奇跡をぜひ体験してもらいたい。UKの『NME』も大プッシュするこのバンドの『NME』ファースト・インタヴューをお送りする。(NME Japan 古川琢也)
「インタヴューは私たちのところでやりましょ! ビールを持ってきてね」。実際に顔を合わせる前から、この有名になったスペインの4ピース・バンドが何たるかを、ハインズのカルロッタ・コシアルスは簡潔に示してくれた。それは、彼女たちがどんなことをやっていても変わらない。熱狂が渦巻くヨーロッパ・ツアーの騒々しいライヴのステージに立っていても、カムデンの寒い昼下がりにまだパジャマを着たままでインタヴューに応じていても変わらない。カルロッタ・コシアルスとバンド・メンバー(ヴォーカル/ギタリストのアナ・ガルシア・ペローテ、ベーシストのアデ・マーティン、ドラマーのアンバー・グリムベルゲン)は永遠に目まいに見舞われているようだった。数カ月前に、マック・デマルコやパーマ・ヴァイオレッツ、ザ・ヴァクシーンズのメンバーたちが街へなだれ込んだときは慣れていたが、それは簡単な理由だ。彼らの存在がパーティを誘発させるからだ。
ハインズのモットーである「nuestras mierdas, nuestras reglas(英語ではOur shit, our rules)」という言葉には彼女たちの主張が要約されている。すなわち「やりたいようにやる」だ。そして、ハインズはそのモットーを全うしてきた最たるバンドである。「わたしたちは自分たちが聴いて楽しい曲をやりたいの」とカルロッタ・コシアルスは語る。「きっと上手くいくと思って悲しい曲を書こうとするけど、誰かが部屋に入って来たら、みんなでジャンプしだして楽しい曲になっちゃうの。どうしようもできないわよ!」
お互いの元彼を通じて知り合ったカルロッタ・コシアルスとアナ・ペローテが最初はデュオとして結成したこのバンドは、ブラック・リップスなどのアメリカのバンドに当初は影響を受けていたが、バンドの歴史は彼女たちの出身地に大きく根差している。「マドリードが世界で一番好きな場所」とカルロッタ・コシアルスは顔を輝かせる。この都市の緊密に結びついたガレージ・ロック・コミュニティが、彼女たちのエネルギッシュなライヴに生命力をもたらしているのだ。
「バルセロナはエレクトロニック・ミュージックの街って感じだけど、マドリードはガレージ・ロックの街なの」とカルロッタ・コシアルスは語る。このバンドが大きく関わっているシーンだ。アデ・マーティンはラジオ番組「プリゲーミング・ラジオ」でホストを務め、アナ・ペローテとカルロッタ・コシアルスはザ・パロッツ(激しいガレージ・ロックでローカル・シーンを率いる先輩バンド)の現れるところにはどこでも出没するようだ。このバンドの“Hello Stranger”のミュージック・ビデオに2人がやんちゃな女生徒役で主演したことから縁が始まり、昨年9月のザ・パロッツ初のロンドン公演では、いきなりステージに乱入して彼らと踊り出したりしている。ザ・パロッツのディエゴ・ガルシアは現在までのところハインズのリリースした全楽曲をプロデュースしており、この2つのバンドは共生関係にあるようで、共同で7インチの“愛のバイナル”を制作しており、彼らの絆はこれまでになく強固になっていくだろう。
「彼らはお気に入りのバンドよ」とカルロッタ・コシアルスは言い、「(でも)友達や他のバンドを見るたびに思うんだけど、どの人も私よりギターが上手いわ」と笑ってみせる。
「気持ちは腕前より強く持ってるの」と、アナ・ペローテはカルロッタ・コシアルスとデュオとして過ごし、楽器の演奏に奮闘した日々を振り返りながら言う。彼女たちの天性の魅力と楽器の素養がなかったことがバンドとしての成長をもたらした。はじけるような笑い声やキラキラした笑顔に、彼女らの騒々しいローファイなアンセムをシンガロングすることによって解き放たれる大騒ぎと、それに伴う途切れない高揚感は、ハインズのライヴを見たことがある人ならお馴染みのものとなっている。
時に物事は計画通りには進まない、とカルロッタ・コシアルスは陽気に認めている。「私たちはライヴの前にそれほど飲まないんだけど、コペンハーゲンでは真夜中まで出番がなくて。だから、すごく酔っ払ったらどうなるか試してみるのもいいわねって話になったの」。このライヴがどうなったかは火を見るよりも明らかだが、アナ・ペローテは写真で証拠を示すよう主張している。カルロッタ・コシアルスはステージで叫び、頭上で手を振りまわしていた。「私たちはかなり酔っ払ってしまって、機材がちゃんと動かないから膝を抱えだしたの」と彼女は説明する。「アンコールを演奏しに戻ろうとしたけど、その曲の残りもできなくなってたわ!」
ハインズは2015年において希少な存在だ。その才能は彼女たちの楽しいという感覚と共に育ち、その結果として、近年では珍しい、気負いとは完璧に見事に、無縁のバンドとなった。既にこのバンドは、その一挙手一投足に注目が集まるロックンロールの権利を得ていることに疑いの余地はない。そして、パーティはしばらく終わらないので安心していいだろう。
リリース情報
HiNDS Debut album 『Leave Me Alone』
2016/03/02 Release XSCP-5 ¥2,200(no tax) ¥2,376(tax in)
Release from RED Project / Sony Music Entertainment
1. Garden -04:07-
2. Fat Calmed Kiddos -03:02-
3. Warts -2:35-
4. Easy -02:24-
5. Castigadas En El Granero -03-46
6. Solar Gap -02:25-
7. Chili Town 03:17-
8. Bamboo -03:49-
9. San Diego -02:30-
10. And I Will Send Your Flowers Back -03:34-
11. I’ll Be Your Man -03:17-
12. Walking Home -03:12
Bonus track for Japan
13.Trippy Gum -04:32
14. When It Comes To You (dead ghosts cover) -02:51-
初回生産分にメンバー(カルロッタ)によるイラスト・ステッカー2種封入
日本盤のみのボーナス・トラック2曲収録
来日公演情報
HiNDS
日時:2016年4月18日(月)
場所:東京・新代田FEVER
http://www.fever-popo.com/
Open 18:30 / Opening Act 19:00 / Start 20:00
チケット料金:前売り¥5,500/当日¥5,800 (ドリンク代別)
チケット発売:ローソンチケット(Lコード:72493)、e+
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