インキュバスの来日公演が迫ってきた。6年ぶりということで、日本のファンにとっては少し間が空いてしまったところがあるけれど、インキュバスは今ひとつのターニング・ポイントを迎えている。2022年に体調を崩してバンドを離れていたベーシストのベン・ケニーに代わって、紅一点のニコル・ロウが正式メンバーとして加入し、2001年に発表されたバンドのキャリアを代表する名作『モーニング・ヴュー』を再レコーディングしたアルバム『モーニング・ヴューXXIII』が5月10日にリリースされることが決定している。結成から30年以上を数えるベテラン・バンドではあるけれど、もう一度原点に立ち返ってバンドを再起動する――そんな姿勢が垣間見える格好となっており、そんなタイミングで実現するのが今回の来日公演ということになる。果たしてメンバーは今の状況をどう捉えているのか、フロントマンであるブランドン・ボイドにメール・インタヴューをさせてもらった。
――オーストラリア・ツアーの最中ですが、調子はいかがですか?
「今のところ順調だよ。オーストラリアとニュージーランドはいつも僕たちに寛大で、今回の旅でもそれを再確認したよ」
――オーストラリア公演のセットリストを拝見したんですが、初期の曲を数多く演奏している印象を受けました。セットリストはどうやって決まっていったんでしょうか?
「セットリストを作るというのは、情報の小さな生態系のバランスをとるような試みなんだ。自分たちが演奏していて楽しい曲、相手が聴きたいと思っている曲、その夜のムードが求めている曲、そしてインプロヴィゼーションに適した甘美なカオスのためのスペースも残している。その他の要素も考慮するけどね」
――現時点で楽しんで演奏できている曲、バンドとしての手応えを感じられる曲なんかがあったら教えてもらえますか?
「バンドの全員を代表して言うことはできないけど、僕が最近とても楽しんで演奏しているのは最新EP『トラスト・フォール(サイドB)』に収録されている“Karma, Come Back”だね」
――驚かされたのは後半のカヴァーです。ポーティスヘッドの“Glory Box”とデヴィッド・ボウイの“Let’s Dance”というのはどういったところから出てきたのでしょうか?
「ただただ素晴らしい曲たちだよね! カヴァーする曲の決め方は、たとえ短いものであっても、僕たち全員がその曲を書いてみたかったと思うかどうかなんだ。この2曲は確実にそうだね」
――リハーサルなんかでは、よく他のアーティストを演奏することなんかはいまだにあるのでしょうか?
「そうだね。いつも上手く演奏できるわけではないけど、もしリハーサルスタジオで成功して、僕たちが笑顔になれれば、人前でも試してみるんだ」
――今回のツアーからベーシストのニコル・ロウが正式加入していますが、彼女はどうですか?
「ニコールはレシピから突然”グルメ”を作ってしまう食材という感じだね。彼女は素晴らしいよ」
――5月10日に『モーニング・ヴューXXIII』のリリースが予定されています。あの名作を改めてレコーディングした作品ですが、このプロジェクトはどういうところから始まったものだったのでしょうか?
「パンデミックの渦中に『モーニング・ヴュー』のライブ・ストリーミングを作曲とレコーディングを行ったマリブの家でやったんだ。それに対する結果と、このアルバムが僕たちやリスナーにとってとても意味あるものになった事を祝う機会を持てて、嬉しく思っている。ライヴ録音をおよそ20周年を記念してアルバムとして出すアイデアもあったんだけど、ミキシングをするうちにきちんとした再録音をするのに十分な素材があって、そしてそれは僕たちにとって楽しい挑戦になると思ったんだ。だからやってみた! そして僕らはその出来栄えにとても満足してるよ!」
――名作『モーニング・ヴュー』は当時マリブのモーニング・ヴュー・ドライヴにある一軒家でレコーディングをすることにしたアルバムですが、レコーディングの雰囲気について振り返ってもらっていいですか?
「あれは僕たちの人生において、とてもエキサイティングな時期だった。アルバム『メイク・ユアセルフ』を引っ提げた大規模なワールド・ツアーを終えて、僕たちは確かな手応えを感じていたんだ。でも、それと同時に、前作を2年間全力で作り続けた事に疲れ切っていた。だから、窓のないスタジオにこもって、作曲やレコーディングをするよりも、海の見える郊外の家へエスケープするほうが素晴らしい選択肢に思えたんだよ。結果的にそれはバンドとしてとても必要な事だった。疲れを癒すという意味だけでなく、広々とした空間とインスピレーションをこのモーニング・ヴュー・ドライブの家は与えてくれたんだ」
――あのアルバムがこうして20年以上経った今も愛されている作品になった大きな要因はあなた自身では何だと思いますか?
「僕は作品と身近すぎてその質問に答えるには適任じゃないし、ただの憶測になっちゃうけど。その瞬間に僕たちがアーティストとして存在していた場所に正直に語りかけ、そしてそれがリスナーのみんなに語りかけ続けるものになったからだと願っているよ。僕自身、何十年経っても心に残っている”帰る”アルバムがあるんだけど、僕たちの作ったアルバムが誰かにとってのそんな存在になっているかと思うと感謝の気持ちでいっぱいになるんだ」
――高校生でバンドを組んだ時から数えると、30年以上の歳月が流れたわけですが、マイク・アインジガー、ホゼ・パシーヤスとバンドを続けてこられたのは何が大きかったと思いますか?
「僕たちはお互いが大好きなんだ! そして、一緒にアートを作ることをおもいっきり楽しんでいるんだよ」
来日公演詳細
2024年5月1日(水)東京ガーデンシアター
スペシャル・ゲスト:BAND-MAID
18:00開場/19:00開演
チケット:
SS席:14,000円 / S席:12,000円 / A席:10,000円
更なる公演の詳細は以下のサイトで御確認ください。
https://kyodotokyo.com/pr/incubus2024.html
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