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さてさて、なんて幸先のいいスタートだろう。まだ2月すら終わっていないのだから、確かに時期尚早なのかもしれない。けれど、惜しまれつつ2018年が去ってからというもの、既に現時点でたくさんの素晴らしいアルバムがリリースされているのだ。ここで一度、それらのアルバムの歌詞に目を通して、楽曲に耳を傾けてみるというのはいかがだろうか? 素晴らしい時というのは、そう長くは続かないのだから(ネタバレ注意:今後のリリース・スケジュールを見る限り、これからも続くことは確実だけれども)。まあ、とにかく! 愛に満ちたエレクトロニカはお好きかい? 騒々しいパンクは? もしくは、完璧に近いシンガー・ソングライターのほうがいい? それとも、政治的なヴェテラン・スカ・バンドがお好み? なんてこった。君はすごく幸運だね。

それではここに、(現時点で!)1月から『NME』のオフィスで大音量でかけられているアルバムの数々をご紹介しよう。

リファファ 『ジャーゴ』

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ニューデリー出身の一風変わったニュー・ジャズ集団、ピーター・キャット・レコーディング・コーのフロントマンであるサーヤカント・サハニがリリースした8曲からなる本作には、拍手喝采を送りたくなるような8曲のエレクトロニックのバンガーが詰め込まれている。フォー・テット、用心しておいて。

NMEのレヴュー:「多くを語るまでもなく、サーヤカント・サハニは本作で自らの道を切り拓き、ムーディーなアンビエントの楽曲や、ヘヴィーで獰猛な、精密なエレクトロニックの楽曲といった近年のインド音楽を形作ってきたサウンドから自らを切り離すことに成功している。『ジャーゴ』は、リファファが南アジアで最も傑出した音楽を創り出せることを証明している」

シャロン・ヴァン・エッテン 『リマインド・ミー・トゥモロー』

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ニュージャージー出身のシンガー・ソングライターであるシャロン・ヴァン・エッテンは、『リマインド・ミー・トゥモロー』からの最初の楽曲となる“Comeback Kid”で5年ぶりとなる帰還を果たし、本作では内観(“I Told You Everything”)から獰猛な一面(壮大な“Seventeen”)、ありのままの姿(“No One’s Easy To Love”)に至るまで、代わる代わる新しい側面を見せてくれている。

NMEのレヴュー:「“No One’s Easy To Love”に力強いベースラインやドラム・ビートが織り込まれているかと思えば、身に染みるようなシャロン・ヴァン・エッテンのヴォーカルが原動力の、耳に忍び込むような“You Shadow”は、レイドバックした一際目を引く楽曲になっている……これまでの彼女の作品の中でも、最も中毒性のある見事なアルバムだと言えるだろう」

ザ・トワイライト・サッド 『イット・ウォーント・ビー・ライク・ディス・オール・ザ・タイム』

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ザ・キュアーのロバート・スミスからも寵愛を受けるスコットランド出身の破滅論者たちは、通算5作目となる本作でその所以を証明している。フライトゥンド・ラビットのフロントマンであるスコット・ハッチソンの死後にレコーディングされた本作は、悲しみや内なる悪魔、音楽の持つ救済の力やそれがもたらす希望について歌った、瞑想のような一枚だ。

NMEのレヴュー:「自らの悪魔に支配される代わりに、ザ・トワイライト・サッドは悪魔を飼い馴らすために11曲からなる悪魔払いを生み出した。避けられない感情について歌った濃密なこの1枚には、生存のための闘いに勝利した彼らの内なる物語が綴られている。私たちは、このアルバムを聴くことができることに感謝すべきだろう」

ジェイムス・ブレイク 『アシューム・フォーム』

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かつて不安定なエレクトロニカに自身のアイデンティティを見出し、多くのアーティストの楽曲にクレジットされてきたことで知られるプロデューサーのジェイムス・ブレイクは、積み重なった層の一つ一つが剥がれていくような大胆で輝かしいアルバムと共に帰還し、メンタルヘルスや新しい交際関係を思うがままに考察している。アンドレ3000が参加した楽曲も素晴らしい。

NMEのレヴュー:「『アシューム・フォーム』でジェイムス・ブレイクはかつてないほどに冴えわたり、焦点が定まっている……本作のオープニング・トラックで灯されるのは、彼が新たに見つけた光だ。かつて彼を南ロンドンから乗せてきた、霞みがかったアンビエントの夜行バスはもういない。そこには彼が見つけた新しい光が広がっているのだ」

フィドラー 『オールモスト・フリー』

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ロサンゼルス出身のガレージ・パンク集団は、通算3作目となる本作で自らのサウンドを押し拡げ、さらに磨きをかけている。シラフになることへの葛藤を歌った息を呑むほどに率直な歌詞の数々は、陽気で能天気なパーティー・チューンでコーティングされたこのコレクションに、より一層の力強さをもたらしている。

NMEのレヴュー:「第一級のフックや見事なまでに率直な歌詞が詰め込まれた『オールモスト・フリー』は、フィドラーのベスト・アルバムだと言えるだろう。多種多様な楽曲による膨れ上がるようなこのコレクションは、それら一つ一つを繋ぐ無防備に侵入する大胆不敵なパンクのリフによって、そのサウンドにさらなる重みが付け加えられている」

スニークス 『ハイウェイ・ヒプノシス』

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これまでの(素晴らしい)ポスト・パンクのアルバム群から見事な跳躍を遂げている。エヴァ・ムールチャンによる通算3作目となる本作は、90年代のレイヴや彼女の出自であるポスト・パンクのシーンの上に描かれた、控えめに言っても最上級の作品である。短く凝縮された楽曲群からなるこのアルバムは、まるでバンガーがゆっくりと逆再生されているような1枚だ。

NMEのレヴュー:「『ハイウェイ・ヒプノシス』はスニークスによる最も長い(わずか28分だが)アルバムであり、細部にまで注意が払われたエレクトロニックの楽器群が何層にも積み重ねられた本作は、スニークス史上最もエモーショナルなアルバムである……自信に満ちたアーティストによる、実にユニークな作品だ」

ブリング・ミー・ザ・ホライズン 『アモ』

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キャリアも15年目に突入し、デスコアを標榜していたキャリアの初期が何光年も昔の話になったシェフィールド出身の彼らは音を探求する長い冒険に出発して、アンビエントやエレクトロ・ポップを取り入れた、ダニ・フィルスも参加したポップ・メタルのアルバムを生み出している。

NMEのレヴュー:「ブリング・ミー・ザ・ホライズンは本作で、自分たちがお咎めを受けることなくやりたいようにやれる力を持ったバンドであることを証明している。このアルバムを聴いた時に感じる驚きほど心が踊るものはないだろう。難しい理屈はないし、ヘヴィ・メタルでもない。ただひたすらにソングライティングが素晴らしいのだ」

ザ・スペシャルズ 『アンコール』

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ヴェテラン・スカ・バンドの現存するメンバーたちが、20年ぶりとなる通算8作目のアルバムの中で、EU離脱や緊縮財政政策、保守党支配、ブラック・ライヴス・マター、メンタルヘルスについて言及している。何という安心感だろう。彼らはメロウなスカやレゲエ、ファンク・ディスコという信頼できる手段を用いて、体制に中指を立てている。

NMEのレヴュー:「これらの楽曲は、社会における悪性腫瘍を切開し、冷酷にもハッキリとそれらを露出させることで、それらを治癒するためのものだ……私たちは今、『アンコール』のような真っ当に歯向かっていくアルバムをかつてないほどに必要としている」

ボーイ・ハーシャー 『ケアフル』

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ジョージア州サバンナ出身のボーイ・ハーシャーは、忘れることのできない恋愛が持つ古来の引力や愛の複雑さを歌った脈打つような本作で、自らのダーク・ウェイヴなエレクトロニックのポップな側面を探求している。

NMEのレヴュー:「ボーイ・ハーシャーはファクトリー・フロアやクリス・カーターを彷彿とさせる闇にぶら下がりながら、自らの最も荒んだ息の詰まりそうな側面を探求し、最も無防備で楽観的な側面を(ドラマ『ブラック・ミラー』に登場する)サン・ジュニペロの中で晒け出している」

アリアナ・グランデ 『thank you, next』

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ポップ・ミュージック最大のビッグ・ネームの1人となったアリアナ・グランデは、自身のキャリア・ハイとなった『スウィートナー』からわずか6ヶ月後に(ほぼ)サプライズでリリースした12曲からなる本作で、悲劇とトラウマを純粋なポップ・ミュージックの魔法へと変貌させている。

NMEのレヴュー:「とりわけ、『thank you, next』はセルフケアのドキュメントになっている。このアルバムは、未来に希望すら持てないような、悪しき時を切り抜けるためのガイドブックなのだ」

スタッツ 『アザー・ピープルズ・ライヴス』

Robin Pearson

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この清々しいレトロ・ポップのコレクションは、スタッツの頭脳であるエド・シードによって監修され、1年間に及ぶジャム・セッションがまるでグルーヴ・アルマダがデヴィッド・バーンをやっているかのような首尾一貫したアルバムとして縫い合わされている。

NMEのレヴュー:『アザー・ピープルズ・ライヴス』は驚くべきことを成し遂げている。平穏で落ち着いたアルバムでありながらも、その中核は実に不安定で、不安とミステリーで沸き立ち続けているのだ。

AJトレイシー 『AJトレイシー』

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『NME』にロング・インタヴューも掲載されているラドブローク・グローブ出身のAJトレイシーは、UKラップがドリル・ミュージックだけではないことを証明している。AJトレイシーは自らをスターにのし上げたグライムを携え、この喜びに満ちたデビュー作で最先端のヒップホップからガレージまでを飛び回ってみせている。

NMEのレヴュー: 「グライムの国際的な爆発に始まり、あらゆる場面で期待を上回ってきた昨今のUKラッパーたちを写した、漠然とした現代のUKラップを記録したドキュメントとなっているAJトレイシーのデビュー・アルバムは、ここ最近における最高の収穫かもしれない」

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