ling-tosite-sigure-high-res-@-camille-blake-78

ベルリンでのレコーディングは
自分とバンドに対するテストだったり、それは光を求めてのテストだったりしたんですよね。
これがうまくいけば、自分の音楽人生においてもまだまだ出会ってない音楽や音があるんだなっていう

──最新作『es or s』という作品はドイツのハンザ・スタジオでレコーディングされた作品ですけど、すごく音がファットですよね。

「そうですね。ファットでしたね。タイトル、ファットにすればよかったと思うぐらい(笑)、ファットでしたね」

──あれはなんでなんですかね?

「あれはいまだに分かんないです。それこそ人によっては違いが分かんないでしょうし。でもそれはそれでいいなと思っていて、そういうところも楽しみに今回作っていたところもあるんですよ。そういうところを意識して聴く人、単純に作品として聴く人、音に詳しい人でも分からないって言っていた人もいましたし、誰が聴いても分かるっていう人もいますし、そういういろんな意見があって、すごく面白いなと思っていて。僕はやっぱりエンジニアとしてもサウンドチェックからやっているので、最初に音をブースで聴いた瞬間に 『これは絶対にいい作品になるな』っていう確信を持てたんですけど、それが電圧の問題なのか、ブースなのか、楽器も違ったりはするので、一概には言えないんです。でも、感覚としては全然違いましたね。ストレスがないというか、今まではぎゅっと整った管のなかに音を通している感じだったんですけど、それがバッと広がって、上にも下にも伸びて、そのなかに自分が好きなものを入れて、音源として届けられるような感じだったので、ミックスしている時もどういう音色で聴かせようかなというところに自然に意識を持っていけたんですよね。いつもはもう少し管が狭いので、これを入れるには何を引かなきゃいけないんだろうとか、もうちょっとやっぱり整理整頓しなきゃいけない部分とかもあったりしていて、もう少し窮屈な感じもあったんです。

元々は僕が以前ベルリンに一人で行った時に、曲がたまたまできたのでその場でレコーディング・スタジオを予約して、ピアノの弾き語りを録ったんです。その時の声だったりピアノの感触がすごくよくて、その時にもしかしたら空気とかって入るのかなって思って。そういうのあんまり信じないほうなんですけど、元々写真を撮っている時にそれを一番感じていて。景色が違うので当然違うんですけど、フィルムで撮っているときにやっぱり空気が写るなとずっと思っていて、それは撮っている自分の感覚なんで人に押し付けられるものではないんですけど、何回行ってもやっぱり違うなとは感じていて、その時に初めてこれは音もそうなのかもしれないなと思ったんですよね。それこそプラシーボ(効果)もあるかもしれないんですけど。でも、それをいつかバンドで試してみたいと思っていて。時雨としてベスト・アルバムを出した後のタイミングで、次何やりたいかなと思った時に、実現出来るか分からないけど、海外で作品を録ってみたいなと思って。もう年々CDの売上が減っていることも連日どこかで取り上げられていますけど、そうなるとCDにかけられるお金だったりとか、使えるスタジオの日数だったりとか、多分、昔に較べるとどんどん少なくなっていってるんですよね。でも、そのなかでいろいろ工夫していただいて、うちはやっぱり人数が少ないというのと、僕がレコーディングできるというのもあって、いろんなものが上手くコーディネイト出来て行くことができたんです。

自分のなかでは正直コケる可能性もあるなというのは半分ぐらい思っていたんですよね。コケるというのはサウンドの面で折角行ったのに日本で録ったのと変わらないなって僕自身が感じるという意味なんですけど、そういうふうになる可能性も十分あるなと思っていて、実際そういう話もよく聞いてたんです。機材も含めて日本のようにすべてが整っている環境じゃない中できっとストレスもあるだろうし、それが音楽にも良くない方向で入り込んでしまわないかも心配していました。それこそ二人がベルリンという場所をどう感じるかもまったく分からなかったので(笑)。そもそも日本では、録音してそれを自分のスタジオに持って帰ってきて、歌を録って、そこからまたスタジオに戻って、という感じなので、正直3人でいる時間というのはフル・アルバムだったとしても1週間あるかないかくらいなんですよ。最初に自分がある程度デモを完成させちゃったりするんで、そう考えると連続で2週間弱ずっと一緒にいるというのは日本でもあまりないことなんですよね。全部が自分とバンドに対するテストで、それは光を求めてのテストだったりしたんですよね。これがうまくいけば、自分の音楽人生においてもまだまだ出会ってない音楽だったり、音っていうのがあるんだなっていう。それはすごく希望にもなりますし、ずっと同じところで音楽を作っていると、ギターでもそうなんですけど、なんか使ったフレットばっかりみたいに見えてしまうんですよね。なんだかんだ言って、見たことのないものを追いかけてしまうんで、それがどっちに転ぶのかなと思って行ったところはありますね。別に日本でよかったなぁって言いながら、戻ってくるかもしれないとも思ってたんです(笑)」

【独占配信】ドキュメンタリー『ボン・ジョヴィ:Thank You, Good Night』をディズニープラスで見る 広告

Copyright © 2024 NME Networks Media Limited. NME is a registered trademark of NME Networks Media Limited being used under licence.

関連タグ