レディオヘッドのトム・ヨークと、フランツ・フェルディナンドとスパークスによるFFSをヘッドライナーに迎えた2015年の初開催から2年。今年で3年目を迎えるHOSTESS CLUB ALL-NIGHTERは、開催が正式に発表される前から恒例行事のようにファンの間でラインナップの予想が始まっていた。蓋を開けてみれば、セイント・ヴィンセントとモグワイという2組の素晴らしいヘッドライナーを筆頭に、待ちわびていたファンも垂涎のラインナップが発表されている。開催を数週間後に控え、『NME JAPAN』では独自の視点から見所を考察してみた。ここに、3年目を迎えるHOSTESS CLUB ALL-NIGHTERにおける10の見所を紹介しよう。
1. セイント・ヴィンセントはこれがワールドツアーの1日目
6月に期待を裏切らない3年ぶりとなる新曲を発表したセイント・ヴィンセントは、新曲に先駆けて「フィアー・ザ・フューチャー(未来を恐れよ)・ツアー」と題したワールド・ツアーの開催を発表している。彼女のオフィシャル・サイトを訪れると、ワールド・ツアーの一番上には「19 AUG 2017・・・ TOKYO, JAPAN」の文字が記されている。セイント・ヴィンセントは、HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER(以下HCAN)のヘッドライナーとしてのステージからワールド・ツアーをスタートさせるのだ。ネタバレも何もない。「未来への恐怖」を体現するこの上ない理想的なシチュエーションである。
2. ポーティスヘッドのジェフ・バーロウが、ビーク>として待望の初来日
ポーティスヘッドのメンバー、それもバンドのサウンドを司ってきたジェフ・バーロウが遂に初来日を果たす。この事実だけでも、往年のファンにとっては重い腰を上げるのに十分すぎる理由になるだろう。遡ること1997年、マーキュリー・プライズを受賞したデビュー作に続くセルフタイトルを冠したセカンド・アルバムを引っ下げたツアーのために来日していたポーティスヘッドは、ボーカルのベス・ギヴォンズの体調不良のために直前で来日公演をキャンセルしているほか、2014年にはジェフ・バーロウのソロ公演もキャンセルの憂き目に遭っている。ジェフ・バーロウの初来日は、まさしく「待望」と形容するに相応しい出来事だ。
3. 毎回観客の期待に応えるフル・ヴォリュームのタイム・テーブル
すべてのアクトを、思う存分堪能できるのもホステスが主催するイベントの大きな醍醐味の一つである。23時に始まるマシュー・ハーバートのオープニングDJを皮切りに、ブランク・マスのステージが終演する翌朝4時55分まで、休む暇なく8組のパフォーマンスが2つのステージで展開される。ヘッドライナーを務めるモグワイとセイント・ヴィンセントのステージはそれぞれ90分と70分というヴォリュームあるステージになっているのはもちろん、シガレッツ・アフター・セックスが濃密な45分のパフォーマンスを行うほかはそれぞれのアーティストに60分のステージが用意されており、充実した深夜を過ごす事ができる。
4. 2014年の再結成を経て、21年ぶりとなる待望の新作をリリースしたライド
ライドは今年6月、満を持して21年ぶりとなる新作を発表している。1990年のデビュー以来、1995年の解散までシューゲイザー・シーンを代表するバンドとして活躍したライドは、2014年に19年ぶりとなる再結成を果たしている。再結成当時にマーク・ガードナーは新作について次のように語っていた。「僕らが解散した後も僕らの音楽の重要度は増してたんだ。だから、みんなの望むものをやりたいよ。僕らがライヴでニュー・アルバムをやったらバカだろ。でも、新曲を作らないと言ってるわけじゃないけどね」。ようやく機は熟したようである。ライドは、「ファンが望む」彼らの新しい姿を我々に見せてくれるのだ。
5. あの人たちもラヴ・コールを送るシガレッツ・アフター・セックス
カート・コバーンとコートニー・ラヴの一人娘であるフランシス・ビーン・コバーンは、彼らの“Nothing’s Gonna Hurt You Baby”について「この曲に夢中なの」とインスタグラムに綴っているほか、モデルを務めたマーク・ジェイコブスの看板広告に落書きをする映像にも彼らの楽曲を使用している。バンドがここ日本でも既に高い人気を得ていることは今年5月に行った来日公演をソールドアウトさせた事実からも明らかだが、シンガーのCharaも彼らの楽曲“K”を「買いました」と公言しており、バンドへの賛辞を送っている。初来日以降、海外の大型フェスを初めとしたステージを経験してきた彼らの進化にも注目だ。
6. ファック・ボタンズのベンジャミン・ジョン・パワーが6年振りの来日
ブランク・マスは、英・ブリストル出身のエレクトロ・デュオ、ファック・ボタンズのベンジャミン・ジョン・パワーによるソロ・プロジェクトである。今回の来日は、2011年にイギリスのオール・トゥモローズ・パーティーが主催する「アイル・ビー・ユア・ミラー」でファック・ボタンズとして来日して以来6年ぶりの、ブランク・マス名義では初となる来日公演となる。2013年の『スロウ・フォーカス』以来となる新作が待たれるファック・ボタンズだが、ブランク・マスとしての作品も世界中でファック・ボタンズに勝るとも劣らない高い評価を得ている。既に名盤の呼び声高い『ワールド・イーター』を引っ下げた6年ぶりの来日は必見だ。
7. 9月に新作を控えたモグワイとザ・ホラーズ
まだ見ぬ新作が垣間見えるかもしれないステージほど、心を惹かれるシチュエーションはないだろう。新作のリリースを間近に控えたステージは、オーディエンスのあらゆる想像力を掻き立ててくれるからだ。モグワイは、1999年の『カム・オン・ダイ・ヤング』をプロデュースしたデイヴ・フリッドマンを18年ぶりに起用した通算9作目となる『エヴリ・カントリーズ・サン』のリリースを、ザ・ホラーズは新たに名プロデューサーのポール・エプワースを迎えた5作目となる『V』のリリースをそれぞれ9月に控えている。原点回帰であれ新たなサウンドへの挑戦であれ、進化した姿を我々に見せてくれるのは間違いなさそうだ。
8. ザ・ホラーズとジェフ・バーロウの関係とは
そのザ・ホラーズとビーク>のジェフ・バーロウには、実は意外な関係性がある。ジェフ・バーロウは、ザ・ホラーズのセカンド・アルバム『プライマリー・カラーズ』の共同プロデューサーの一人なのだ。彼が参加するより前に既に収録曲の下地を完成させていたというザ・ホラーズだが、彼らからのラヴ・コールによって両者のコラボレーションが実現したという。しかしながら、彼が手を加えるまでもなく既に素晴らしいサウンドだったとジェフ・バーロウは太鼓判を押している。ベーシストのスパイダー・ウェッブは当時、『NME』に次のように明かしている。「ジェフに言われたよ。『次から自分たちだけでやってみてもいいんじゃないか?』ってね」
9. 実は玄人揃いのビーク>のメンバー
結成当時、ジェフ・バーロウがビーク>について「ビーク>には責任者なんて存在しない。僕たちは3人ともが平等なバンドなんだ」と、音楽サイト「クワイエットアス」に明かしているように、ジェフ・バーロウばかりがフィーチャーされがちなビーク>だが、実はバンドを構成する3人全員がかなりの実力の持ち主なのだ。そんなバンドを構成する、ロバート・プラントのバックバンドでベーシストを務めていたビリー・フラーは、その実力が買われてマッシヴ・アタックのアルバム『ヘリゴランド』でもベースを弾いているほか、ムーン・ギャングスの名で活動していたウィル・ヤングもまた、独自のエレクトロ・サウンドでシーンを席巻した実力派である。
10. レジデントDJ、マシュー・ハーバートの熟練した技術
昨年と同様に今年のHCALもまた、マシュー・ハーバートのステージから幕を開ける。「レジデントDJ」としてホステスに君臨する奇才は、HCANが初開催された2015年から3年連続の出演となっており、HCANでの経験値は他の追随を許さない。ホステス・エンターテインメントの創立初期から所属している彼は、まさにホステスの守り神と言っても過言ではない存在なのだ。そんなホステスのレジデントDJは今年、オープニングを皮切りに3回にわたってステージを披露してくれる。マシュー・ハーバートの経験値に裏付けされた熟練したDJプレイは、3年目を迎えるHCANの潤滑油として深夜の幕張に抜群の安定感をもたらしてくれるはずだ。
公演の詳細は以下の通り。
HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER
出演: St.Vincent / Mogwai / Ride / The Horrors / BEAK> / Cigarettes After Sex / Blanck Mass / Matthew Herbert(DJ)
日程:2017/8/19(土)<サマーソニック2017 ミッドナイトソニック>
会場:幕張メッセ
Open/Start:22:30/23:30
チケット:
一般価格 9,500円(税込)
SUMMER SONIC・SONICMANIA購入者限定特別価格 5,000円(税込)
更なる公演の詳細は以下のサイトで御確認下さい。
http://ynos.tv/hostessclub/schedule/201708hcan/
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