30位 ザ・キラーズ『プレッシャー・マシーン』

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一言で言い表せば:ブランドン・フラワーズ版の『ネブラスカ』だ。

ブランドン・フラワーズはロックダウンの時代にキャニオン・ロックの最大主義を撤回して、幼少期の故郷であるユタ州ネフィを抑えたトーンで内省的に親しみやすい形で描いてみせた。そこではヒルビリー・ヘロインと呼ばれる処方箋鎮痛剤、列車事故の悲劇、小さな街ならではの一体感、制限、孤独などが描かれている。ブルース・スプリングスティーンの『ネブラスカ』ほどの暗さや荒涼とした感じはないが、ギタリストのデイヴ・キューニングのスタジオ復帰作となった『プレッシャー・マシーン』は人々のあたたかさを思い出させるという点で間違いなく傑作となっている。

鍵となる楽曲:“The Getting By”

『NME』のレヴュー:「ここに収録されている曲はスタジアムで見知らぬ人と口ずさむものというよりは夜に最後のウイスキーを傾けながら実存を見つめる時にかける曲となっている」

29位 ジェネシス・オウス『スマイリング・ウィズ・ノー・ティース』

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一言で言い表せば:難しいテーマを扱うことを恐れないカラフルなファンク・ラップ。

ガーナ人とオーストラリア人のハーフである ジェネシス・オウスはデビュー作で劇場的ヴォーカル・パフォーマンスと共に人種や政治に関する痛烈な語りでもって、ありふれたR&B以外の人生を祝福することになった。それは少しゴリラズやTVオン・ザ・レディオと通ずる部分もありながら、全体としては彼ならではのものとなっていて、『スマイリング・ウィズ・ノー・ティース』は彼の豊かな可能性を指し示している。

鍵となる楽曲:“The Other Black Dog”

『NME』のレヴュー:「ジェネシス・オウスは自己認識、視座、アートの力を改めて物語る魅力的なアルバムを届けてくれた。大音量でかけてほしい」

28位 アイドルズ『クローラー』

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一言で言い表せば:ブリストル出身のアイドルズはよりダークで内向的な獣へと進化した。

アイドルズにとって通算4作目となる本作は生まれ変わりである。2020年発表の『ウルトラ・モノ』では喧々諤々とも言える激しさを誇るバンドだったが、『クローラー』では政治的・社会的に辛辣な言葉を抑えて、自己嫌悪と内省に終始している。ミニマルなトラックに乗ってヴォーカリストのジョー・タルボットは依存症との闘いという問題を取り扱い、最も愛されながら不快さとカタルシスの両方を味わわせるUKバンドの新章を切り拓いている。

鍵となる楽曲:“The Beachland Ballroom”

『NME』のレヴュー:「『クローラー』は彼らがどんなバンドなのか、どんなサウンドなのか、何を体現しているのか、そういったものを瓦解している」

27位 サマー・ウォーカー『スティル・オーヴァー・イット』

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一言で言い表せば:全米チャートのトップをとったサマー・ウォーカーによるスモーキーなR&Bの失恋アンセム集。

プロデューサーのロンドン・オン・ダ・トラックと別れたことを公表した後、サマー・ウォーカーは彼女が最も愛する音楽スタイルであるR&Bとソウルを通して恋愛にまつわるトラブルを解き放つことになった。2019年発表のデビュー・アルバム『オーヴァー・イット』における商業化された過剰にセクシーなサウンドから離れて、『スティル・オーヴァー・イット』では失恋にまつわるムーディーなアドヴェンチャーが歌われている。後悔から怒りまで、その間にあるものすべてをサマー・ウォーカーは中毒性のある一発KOのオルタナティヴR&Bのアルバムで歌い、ダメ男に関する警告を届けるという目的を果たしてみせた。

鍵となる楽曲:“Insane”

『NME』のレヴュー:「前作『オーヴァー・イット』が愛についての女性のためのアンセム集だとしたら『スティル・オーヴァー・イット』は別れのためのアルバムだ」

26位 チャーチズ『スクリーン・ヴァイオレンス』

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一言で言い表せば:グラスゴー出身のシンセ・ポップによるトリオは強力な4作目で新たな高みに達した。

壮大なサウンドと見事なヴォーカルに満ちた『スクリーン・ヴァイオレンス』で頭に強く残るのは漆黒の歌詞だ。死について歌われているが、クリス・ブラウンとの作品を支持したマシュメロとの確執によって2019年に殺人予告を受けたこと、そして現代生活における恐怖の両方を考えれば、当然の反応と言えるだろう。このダークなエッジはアルバムを際立たせるのに一役買っており、『スクリーン・ヴァイオレンス』は80年代のホラー映画の装いをまといながら、ヴォーカリストのローレン・メイベリーに現代の不安を吐露させることになった。ザ・キュアーのロバート・スミスも素晴らしい“How Not To Drown”に参加している。好きにならずにいられるだろうか?

鍵となる楽曲:“How Not To Drown”

『NME』のレヴュー:「グラスゴー出身のトリオはストーリー性に富んだ社会批判の一面も見せることでホラーの小作とも言える楽曲を生み出すことになった」

25位 ロイヤル・ブラッド『タイフーンズ』

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一言で言い表せば:ブライトン出身のロック・アクトは贖罪を求めるためにダンスフロアに繰り出した。

酒とドラッグを断ったロイヤル・ブラッドのフロントマンであるマイク・カーは新たな目的意識と表現すべき新たなサウンド言語を獲得した自分に気づくことになった。ダフト・パンク、ジャスティス、ゴールドフラップ、カシアスといったダンスフロアからの影響をこれまで以上に露わにした本作でブライトン出身のデュオはグルーヴと色合いを使うことで、よりオープンで繊細な存在となり、漆黒を抜け出し、ミラーボールの下の輝かしい光へと乗り出すことになった。

鍵となる楽曲:“Limbo”

『NME』のレヴュー:「『タイフーンズ』はこれまでの最高傑作というだけでなく、ロイヤル・ブラッドが自分たちのできることを自由に探求できるようになったことが何より素晴らしい」

24位 スネイル・メイル『ヴァレンタイン』

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一言で言い表せば:深淵にして非常に素晴らしいグランジ・ポップの進化。

2018年のデビュー・アルバム『ラッシュ』に続く失恋アンセム集となった本作はスネイル・メイルことリンジー・ジョーダンにとって耐え難い仕事となる可能性もあったが、『ヴァレンタイン』で彼女は優雅かつ簡単に見事にやり遂げ、完璧にできたバラードと魅惑のメロドラマによって自身のサウンドを成長させた。人生に持ち上がる心の痛みを乗り越える手助けとなる仲間が必要だとして、リンジー・ジョーダンはその筆頭に数えられるだろう。

鍵となる楽曲:“Headlock”

『NME』のレヴュー:「ソングライターとしてリンジー・ジョーダンは人生の葛藤や混乱、そして恋愛に夢中になってしまうことを真っ直ぐ追求し続けている」

23位 バイセップ『アイルズ』

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一言で言い表せば:ベルファスト出身のデュオによる力強いビートはエレクトロニック・ミュージックのエリートの座における一角を約束することになった。

自らの力で影響力のあるブロガーから愛されるプロデューサーへと飛躍することになった2017年発表のバイセップのデビュー・アルバムは彼らがその旅路で発見してきたテクノ、ハウス、ブレイクビーツへのオマージュのような感じだった。しかし、濃密かつ魅惑的な『アイルズ』は鮮やかかつ新たなサウンド・テクスチャーを提供するためにクララ・ラ・サンやジュリア・ケントといったヴォーカリストを起用しており、自身のサウンドを決定づけて極めるところまでステップ・アップしている。

鍵となる楽曲:“Saku”

『NME』のレヴュー:「待つことで得られる歓喜に満ちたレイヴのエクスタシーという見逃されがちな瞬間を極めて芸術的に呼び起こすことができるアーティストはほとんどいない」

22位 シルク・ソニック『アン・イヴニング・ウィズ・シルク・ソニック』

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一言で言い表せば:今年においてバカバカしいまでに最も楽しいコラボレーション・アルバムであり、ものすごくスムースで個性に溢れたコーラスが満載。

シルク・ソニックとして作り上げた贅沢で鮮やかな世界の中でブルーノ・マーズとアンダーソン・パークはダイナミックなハーモニーを発見しながら個々人のアーティストとしての特徴を高め合っている。これほど濃密に構築された音楽がこんなにも難なく響くことは極めて稀だ。このアルバムは“Leave The Door Open”の歌詞に登場するワインのようにヴィンテージな過去のジャンルを再活用することでゴールドかつオールドスクールな作品になっている。ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークの間の信頼と敬意が常に感じられ、コラボレーションがもたらすマジックを証明している。

鍵となる楽曲:“Smokin Out The Window”

『NME』のレヴュー:「魔法はその音楽の作られ方にある。曲は輝かしく、喜びに満ちており、2人の飽くなきクリエイティヴ精神のシナジーによって生み出されている」

21位 ロンドン・グラマー『カリフォルニア・ソイル』

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一言で言い表せば:インディ・ポップ・トリオにとってこれまで最もアップビートなアルバムはフェスティバルでヘッドライナーを務める地位にその存在を押し上げることになった。

ストリングスの響きによる映画的な導入から疾走感のあるタイトル曲から天使の歌声による“How Does It Feel”まで、ハンナ・リードのヴォーカルがここまでパワフルなことはなかった。広大なサウンドをバックに、ノッティンガムでの解散間際の出来事から音楽業界の女性蔑視までを扱う直接的で赤裸々な歌詞とロマンティックなイメージは、“Baby It’s You”や“Lose Your Head”といった魅力的な楽曲を意外にも多幸感溢れるフェスティバル・アンセムにしている。

鍵となる楽曲:“Baby It’s You”

『NME』のレヴュー:「『カリフォルニア・ソイル』は新しいエネルギーに満ちている。クラブ・サウンドの勢いと明るい歌詞に満ちた本作でロンドン・グラマーはこれまで以上に快活で自信に満ちている」

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