10位 オリヴィア・ロドリゴ『サワー』

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一言で言い表せばテイラー・スウィフトの流儀を汲んだ一分の隙もないポップ・パンクによる物語。

“Drivers License”と“Good 4 U”がバイラルで記録的なヒットとなったことで、オリヴィア・ロドリゴほど2021年を自分のものにしてしまった新人アーティストはいない。コメディタッチの自虐的な表現と堂々とした率直な物言いをかけ合わせてオリヴィア・ロドリゴはティーンエイジャーにしかできない方法で失恋の断片をドラマチックでエモーショナルな乱高下へとまとめ上げている。“Brutal”に登場する「私はクールでもなければ頭もよくない/縦列駐車すらできない」という一節は今年を象徴する一節の一つかもしれない。“Jealousy Jealousy”ではデジタル社会での比較文化から逃れることで自分の不安を認識している。その意味でも『サワー』は今の時代意識から生まれたものかもしれないが、オリヴィア・ロドリゴの才能は長く続いていくだろう。

鍵となる楽曲:“Good 4 U”

『NME』のレヴュー:「Z世代ならではの多才さで自分の視点を失うことなく、ジャンルからジャンルへと跳び移り、曲の中で具体的な詳細を突き詰めることで極めて個人的なことを共感を生む普遍的なものへと昇華させている」

9位 ターンスタイル『グロウ・オン』

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一言で言い表せば:今、世界で最も勢いに乗るバンドの一つが境界なき実験的ハードコアで見せた輝き。

『グロウ・オン』の幕開けを飾る波打つシンセのループで誤った判断をしてはいけない。その先には1分には一度スリルが訪れる旅路が待ち受けることになるのだから。バルティモア出身5ピースによる爽快感溢れる4作目のアルバムは、“Blackout”、“Don’t Play”、“Holiday”といった曲であなたをモッシュピットに引きずり込んで、叫ばせることになる。その後、“Underwater Boi”、“Alien Love Call”、“No Surprise”といった曲で静けさのある不思議な高みへと連れて行き、“‘T.L.C”、“Wild Wrld”、“Dance-Off”といった曲でステージダイヴしてバンドによる騒がしいパーティーの現実へと戻ってくるのだ。それが35分という魅惑的な時間に詰まっている。ターンスタイルのフロントマンであるブレンダン・イェイツは冒頭の“Mystery”で「あまりに長くかかってしまった」と歌っている。そう、『グロウ・オン』のような欠点のないアルバムを生涯を通して待っていた人もいるかもしれない。

鍵となる楽曲:“Underwater Boi”

『NME』のレヴュー:「本作は従来のカテゴリーを排除しており、そのおかげでよりスリリングとなっている」

8位 ホールジー『イフ・アイ・キャント・ハヴ・ラヴ、アイ・ウォント・パワー』

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一言で言い表せば:常に発明を起こしてきたポップ・スターはナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー&アッティカス・ロスと組んで身体をテーマにした強烈なホラー・アルバムを作った。

妊娠は人生において最も美しい体験で、新しい生命が誕生するのは陽の光や虹のようだともしばしば言われるが、ホールジーは自身の4作目でそうした物語を拒否して、イメージやアイデンティティ、愛と過去の快楽主義、母親にふさわしいとされる家父長的な判断といったものへの懸念を取り上げている。トレント・レズナーとアッティカス・ロスによるプロデュースと共にホールジーはそうした重い題材と同じくらいヘヴィなサウンドを採用している。インダストリアル・ロック、ドラムンベースのブレイクビーツ、強烈なシューゲイザーなどに跳び移りながら、それは心躍るほど赤裸々な作品になった。

鍵となる楽曲:“I am not a woman, I’m a god”

『NME』のレヴュー:「このアルバムに明るく安心できる雰囲気はなく、非常に激しいものであるのは言うまでもないだろう。そして、ホールジーにしか作れなかった説得力のあるアーティストとしての宣言にもなっている」

7位 アーロ・パークス『コラプスド・イン・サンビームズ』

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一言で言い表せば:ロンドン発のアーティストによるマーキュリー・プライズを受賞した見事なデビュー・アルバム。

「あなたは自分が思っているほど一人ではない」とアーロ・パークスは『コラプスド・イン・サンビームズ』からの代表曲“Hope”で歌っている。これはマーキュリー・プライズを受賞した本作の全編を通して出てくるメッセージだ。イギリスが殺伐とした新型コロナウイルスの第二波を迎えている真っ最中にこのあたたかく、やさしい曲のコレクションは届けられた。ジャジーな音色とローファイなサウンドによる音の中でアーロ・パークスの歌詞はメンタル・ヘルスの問題、セクシャリティ、成人を迎えたこと、無償の愛といったものを描いている。

鍵となる楽曲:“Hope”

『NME』のレヴュー:「アーロ・パークスはZ世代の声なのかもしれないが、間違いなくこの先何十年もあらゆる世代・背景を持ったリスナーたちを慰める普遍的な物語を伝えていくことになるだろう」

6位 ニック・ケイヴ&ウォーレン・エリス『カーネイジ』

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一言で言い表せば:ダークな大御所は新型コロナウイルスの混乱をキャリアの高みへの冒険へと変えてみせた。

ニック・ケイヴは『カーネイジ』についてパンデミックでザ・バッド・シーズのツアーができなくなって自身の人生を「棚卸し」した時に生まれた作品であり、「共同体の崩壊にまつわる残酷にして美しい作品」だと説明している。不吉に脈打つ“Hand Of God”から“Albuquerque”の気の遠くなるロマンスまで、ニック・ケイヴとウォーレン・エリスは新型コロナウイルスの騒動と混乱を描くために豊かな音のタペストリーを生み出しており、歌詞で平和、パニック、政治的揺動、愛、団結といったものに新しい考えを提示している。私たちが経験したことを記録したアルバムとなれば、それはこの傑作になるだろう。

鍵となる楽曲:“Hand Of God”

『NME』のレヴュー:「『カーネイジ』はニック・ケイヴ&ザ・バット・シーズの後年の傑作、2013年発表の『プッシュ・ザ・スカイ・アウェイ』、もしくは2004年発表の『アバトア・ブルース/ザ・リール・オブ・オルフェウス』以来の最高傑作と言えるだろう。2人の巨匠がメロドラマの力を使ってピークを迎えている」

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