至極のコラボレーションや、見事なデビュー劇、戻ってきたヒーローたちに、悲しいバンガーの誕生、2018年は楽曲にとって豊作の年だった。ここに、そんな中から『NME』が選んだ50曲をご紹介しよう。
50位 シグリッド “Sucker Punch”
2019年の3月にデビュー・アルバムがリリースされることがようやく発表になったシグリッドは、デビュー作のリリースまでファンを焦らしながらも、“Sucker Punch”のような素晴らしい声を使ったシングルの数々でヒットの確率を高め続けている。昨年、“Strangers”をリリースしていたシグリッドは、10月に“Sucker Punch”が相応しいヒットを飛ばすまでの間も、奮い立たせられるような“High Five”で私たちの高揚感を保ち続けてくれていた。 “Sucker Punch”は素晴らしいコーラスによるパーフェクトなポップ・ソングだ。
49位 ザ・1975 “Give Yourself A Try”
2018年5月31日。ザ・1975は、ジョイ・ディヴィジョンから“Disorder”のリフを、ザ・ストロークスからはそのアティテュードを借用して、通算3作目となる最新作『ネット上の人間関係についての簡単な調査』からの最初のシングル“Give Yourself A Try”を携え、黄色い歓声に迎えられながら待望のシーンへの復帰を果たしている。アルバムという大きな括りで見れば、音楽的にはある種の変化球とも言えるこの楽曲で、フロントマンのマット・ヒーリーは「ベビーブーム世代に好かれるミレニアル世代」を自称する自身の内面と向き合い、次のように歌っている。「大麻の中に白髪が落ちていたんだ/まるで現代の議論におけるコンテクストのよう。だから、取ってやったよ」
48位 ブラッド・オレンジ “Charcoal Baby”
デヴ・ハインズはレイドバックしたこの楽曲で、人種的なアイデンティティの奥深くを静かに見つめながら、周囲との孤立や疎外感が個人に与える影響と向き合い、「この時代に奇妙な存在になりたい人なんかいない」と打ち明けている。いびつなギター・サウンドがジャズのサックスと混じり合い、時に痛切な気持ちに襲われながらも、最終的には自分自身を受け入れるような雰囲気を生み出している。
47位 パープル・ディスコ・マシーン “Dished (Male Stripper)”
敏腕のリミキサーとしてゴリラズやクロメオ、ファットボーイ・スリムらのリミックスを手掛けてきたドイツ出身のDJであるティノ・ピオンテックは、“Dished (Male Stripper)”という一撃をもって自らの道を歩み始めている。浮遊感のあるメロディと、エリス・Dによる1987年の楽曲“My Loleatta”のサンプリングがベースになっているこの跳ねるようなファンクは、自らを深刻に捉えすぎる傾向にある今のシーンをまるで風刺しているかのようだ。
46位 ミリー・ターナー “The Shadow”
弱冠18歳のミリー・ターナーは、“The Shadow”をもってクラブ・ミュージックとのケミストリーの才覚を示し、10代ながらも政権入りしてみせたことを示唆している。抗えないビートに歯切れのよりヴォーカル、キラーなスポークンワードからなる“The Shadow”は新たなクラブ・クラシックのようなサウンドとなっている。
45位 J・ハス “Dark Vader”
輝かしいEP『ビッグ・スパング』に収録のJ・ハスにとってのサマー・アンセムとなった、グライムとダンスホールの意気揚々としたマッシュアップである“Dark Vader”は、アフロビートのリズムと軽快な木琴のサウンドに彩られた軽快で輝かしいポップ・ラップだ。歌詞の内容を表面的に見る限り、J・ハスは「武器がこの男に何をもたらしたか分かれば/俺を見ずに、友人のほうに目を向けるはずだ」と刃物を使った犯罪も披瀝している。ナイフを所持していた罪で逮捕(その後、8ヶ月間の懲役刑が言い渡されている)されたことを受けて「BBC ラジオ1」のプレイリストから削除されたという事実がこの楽曲をより痛烈で困惑させるものにしている。
44位 チャーリーXCX “Girls Night Out”
オルタナティヴ・ポップの巨匠であるPCミュージックやスターゲイトをプロデューサーに迎えた、パーティー前の飲酒や友人たちとの夜遊びについてのアイロニーに満ちたこのパーティー・アンセムで、チャーリーは軽快なシンセサイザーやちょっとした木琴のサウンドに乗せて抑揚のないヴォーカルを披露している。そう、木琴がなければ、そんなのはパーティー・ソングじゃないのだ。
43位 カリ・ウチス “After The Storm”
バッドバッドノットグッドがプロデュースを手掛け、タイラー・ザ・クリエイター(制作過程で友人たちを招集して彼女に力を貸したことは言うまでもない)とファンクのレジェンドであるブーツィー・コリンズという2人の逸材が参加した“After The Storm”は、カリ・ウチスが巧みに舵をとる、贅沢なコラボレーション船だ。つらい時期を過ごす友人に手を差し伸べるかのように、カリ・ウチスは「もしヒーローを探しているのなら、鏡を見てみて」と歌い、2018年の時代精神と見事に調和している。
42位 マック・ミラー “Ladders”
マック・ミラーの最後のアルバムとなってしまった『スイミング』の中でも傑出したトラックとなった“Ladders”で、マック・ミラーは未来への楽観(「どうにかして道を見つけよう/それが何マイル先だっていいから」)と、それが崩壊した時の恐怖(「今は調子がいいんだ/けど、きっとそれもすべて崩壊する/夜が来て、光が消えて/昼間がなくなるんだ」)について歌っている。リリースされた当初は、通算5作目の中でもラジオ向けのボップ・ソングとして受け入れられていたこの楽曲も、今ではマック・ミラーの才能を痛烈に想起させる楽曲になってしまった。
41位 レジー・スノウ feat. アナ・オブ・ザ・ノース “Charlie Brown”
いや、この楽曲は『スヌーピー』に登場するドジで愛すべき男の子に捧げたものじゃない。“Charlie Brown”とは、ラッパーのレジー・スノウがアナ・オブ・ザ・ノースとタッグを組み、アイルランド出身のファンク・グループであるリパブリック・オブ・ルースが2008年にリリースした際どい“The Steady Song”をサンプリングして作った楽曲のことだ。透き通ったフューチャー・ポップやSF世界のラウンジで流れるようなシンセサイザー、太陽を周回中の宇宙船で弾いているかのような気怠いギターが響く音楽的な側面とは裏腹に、“Charlie Brown”で歌われている歌詞はそれとは正反対のものだ。「ヘロインをあなたの学校へ買っていった/自分が信じられないほどクールなのがなぜか分からない」とアナ・オブ・ザ・ノースは囁くように歌う。けれど、それはまだ序の口に過ぎない。“Charlie Brown”は人生におけるタブーを辿っていく嬉々とした冒険のような楽曲なのだ。
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