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前作『インディ・シンディ』の前にはキム・ディールの脱退があった。最新作『ヘッド・キャリア』のリリース直前にはギタリストのジョーイ・サンティアゴがアルコールとドラッグの問題を治療するためにリハビリに入った。けれど、ここのところのピクシーズを見てると、どこか健全な印象を受けるのはなぜだろう? 23年ぶりのアルバムとなった『インディ・シンディ』から僅か2年で新作をリリースし、サポート・メンバーだったベーシストのパズ・レンチャンティンも正式メンバーとしてバンドに加入を果たしている。新作は長年のプロデューサーだったギル・ノートンに代わって、新たにトム・ダルゲティをプロデューサーに起用している。再結成後のキャリアの歩み方というのは難しい。けれど、最近のピクシーズを見てると、再結成ありきの再結成ではなく、真っ当にアルバムを作って、真っ当にツアーを回る、つまりバンドをやっていくということに自然とフォーカスしているように思えるのだ。その象徴とも言えるのが、最新作『ヘッド・キャリア』に収録された“All I Think About Now”だろう。キム・ディールへの感謝を綴り、パズ・レンチャンティンがヴォーカルを務めるこの曲は、今のピクシーズの状況を物語ってると言える。来日直前となった今回、話を聞くことができたドラマーのデイヴィッド・ラヴァリングから伝わってきたのも、そんなバンドの雰囲気だった。ピクシーズの最新インタヴューをお送りする。

新作はピクシーズver2.0って感じかな。俺たちにとってすべてが新しかったんだ

――昨年、ヨーロッパを主体としたツアーも行っていますが、あらためてライヴもやってみて新作『ヘッド・キャリア』についてどんな手応えをお持ちですか?

「『ヘッド・キャリア』に関しては、すごく満足しているんだ。前に『インディ・シンディ』をリリースした時は、実はライブで新曲を演奏した時のオーディエンスの反応がイマイチだった。でも、今回の『ヘッド・キャリア』に対するみんなのリアクションはすごく良いんだよね。本当に嬉しいよ」

――あなたたちにとってどんな作品になっていると思います?

「新しいチャプターとまではいわないけれど、ピクシーズver2.0って感じかな(笑)何故そう思うかというと、それはベースのパズ・レンチャンティンが加入したから。彼女とは3年活動しているけど、レコーディングの時点から彼女がいたのは初めてなんだ。だから、俺たちにとってすべてが新しかったんだよ。プロデューサーも新しかったし、本当に新しい章といった感じだった。それは音楽からも感じ取れるんじゃないかな。」

――活動を初めて、もう結構長いですよね?

「そう、かなりの年月だよ(笑)30年。そろそろ車いすを探さなきゃ(笑)」

――(笑)。その長い活動期間を経て、”今”新しいチャプターが来たということは、ここからまた新しい30年が始まるのでしょうか?

「だと思う。俺たちは、みんな自分たちがやっていることを心から楽しんでいるからね。少なくとも、俺たちはずっと活動を続けたいと思っているよ」

――さきほどパズの名前が出ましたが、前作『インディ・シンディ』との違いは何と言っても、ベーシストのパズ・レンチャンティンの存在です。彼女のレコーディングへの貢献を教えてください。

「彼女は新作の前から既に貢献してくれていたし、もう3〜4年経つけど、俺たち野郎3人にとっては、彼女はまだ”新しい女性”なんだ。数年たっても、彼女の周りに自分たちがいる時は、いまだにちゃんと振る舞わなきゃって思う(笑)。恥ずかしい思いはしたくないからね(笑)。彼女が加入したことで、自分たちの態度や振る舞いが本当に良くなった。そこは、俺たちにとっては大きいんだ。それに、彼女は本当に素晴らしいミュージシャンだから、それに感化されて、俺自身の演奏もより良くなったと思う。彼女の前で下手な演奏をするのはこれまた恥ずかしいからさ(笑)。能力もあるし、俺たちと気も合うし、彼女は最高だね」

――サウンド的にはなにをもたらしてくれていると思いますか?

「彼女は、演奏する時にクレイジーになりすぎない。パズはピクシーズを理解しているからね。ピクシーズのサウンドがどう聴こえるべきかを熟知しているんだ。だから、自分一人で突っ走らずに、俺たちに上手く合わせることができるんだよ」

――パズ・レンチャンティンはバンドに加わる時は緊張したと語っています。そうした側面をあなた自身も感じるところはありましたか?

「彼女が緊張したというのは俺たちも聞いたけど、俺たちの方が彼女より緊張していたね(笑)」

――今回、レコーディングに入るまでに楽曲をちゃんと知るための期間があったそうですね。レコーディングに入るまでのプロセスというのはどのようなものだったのでしょう?

「そう。6~8週間の準備期間があったんだ。その期間はとにかくリハーサルをしまくった。80年代から、その期間をもうけるチャンスは実は一度もなくてね。今回それができて本当に良かったよ。曲をしっかりと学ぶことができたし、レコーディングするまでには演奏に心地よさを感じられるようになっててね。その期間があったおかげで、スタジオでの作業が本当にスムーズだったんだ」

――今回なぜその期間をもうけようと思ったのですか?

「まずは、その時間があったから。それに、まだ挑戦したことのない新しい試みを試してみたかったんだ。以前は、本当に時間がなかったんだよね。でも、今回は曲をすべてしっかりと理解しているから、今度来日する時も、事前にあまり練習しなくてすむよ(笑)。演奏に気を取られることがないから、ライブをもっと楽しむことができるんだ」

ほとんどのファンが昔のピクシーズのサウンドを求めていると思う。でも、まだみんなの期待を裏切るようなサウンドは作っていないと思うんだ

――正直、フランク・ブラックも自身で言及している通り、新作を作る必要があるかと言えば、必ずしもそうじゃないという意見もあると思うんです。そこについてはどう考えてましたか?

「俺たちは、どんどん発展していくことができるバンドだと思うんだ。曲作り、レコーディングが本当に大好きだし、それは変わらない。活動を楽しんでいるし、ただそれを続けていくだけさ。それが俺たちにとっては自然なことなんだ」

――ピクシーズのサウンドと言えばギル・ノートンが長年関わってきたわけですが、今回プロデューサーにトム・ダルゲティを起用した理由について教えてください。

「さっきも話したように、俺たちにとって最新作はピクシーズver.2.0なわけだけど、パズとのレコーディングも新しい経験だし、いっそのことすべてを新しくしてみないかということになったんだ。ベース・プレイヤーが新しいなら、プロデューサーも新しくしてみようってね。そこでトムを起用することにした。彼には前に会った事があって、素晴らしい人間ということもわかっていたし、スキルもあり、彼が今まで手掛けてきたレコードも良い作品ばかりだしね。それでトムに頼もうということになった。流れもスムーズだったし、楽しかったね。6週間くらいかかると思ったけど、3週間しかかからなかった。トムとレコーディングの前にさっき話した準備期間をもうけたこともあって、かなりスムーズだったんだ。俺のドラムなんて、2日間で録り終わったよ(笑)。残りの3週間なんて、俺は何したらいいかな?って感じだったね(笑)」

――“All I Think About Now”はキム・ディールに向けて書かれた曲だとフランク・ブラックも語っていますね。あなたはこの曲の歌詞を知った時、どんなことを思いましたか?

「この曲作りが元々どのようにして始まったかというと、既にリハーサルした何曲かをレコーディングする期間が3週間くらいあって、残り2日になった時に、パズが『私、曲のアイディアがあるの』と言ってきたんだ。そして、彼女がその曲を歌ってプレイしてきて、俺たちがそれに何を合わせるかをその日の夜までに考えて、曲ができ上がったんだ。そして、その次の日に曲をレコーディングした。この曲は俺のお気に入りでもあるんだけど、面白いことに、新しいメンバーによって書かれたにもかかわらず、アルバムの中で一番ピクシーズっぽいんだよね(笑)。いろいろな意味で、すごく特別な曲だと思う」

――この曲も含めてですが、今のピクシーズはいろいろあったバンドのキャリア全体を祝福しながら、ちゃんと未来を見据えているような、そんな印象を受けるんですが、どう思いますか?

「30年活動しているけど、ほとんどのファンが昔のピクシーズのサウンドを求めていると思う。一度活動を休止してからまた戻り、2014年から2枚アルバムを出したわけだけど、みんなが昔の作品とそれを較べることもわかっている。でも、俺たちは新しい作品も同じくらい好きでなければならないんだよね。新しい曲を書く度に、少し怖くて不安にもなるけれど、俺たちは自分たちから出来上がるピクシーズ・サウンドに満足しているし、ピクシーズのサウンドを崩してもいないと思う。今のところだけど、まだみんなの期待を裏切るようなサウンドは作っていないと思うんだ(笑)。この調子で、ピクシーズ・ミュージックを作り続けていけたらいいなと思っているよ」

今は80曲くらいレパートリーがあるんだけど、俺たちはセットリストは書かないんだ。次に何を演奏するかは決めずに、ステージで決めていく

――あなたはピクシーズというバンドに在籍していて、バンドとして達成できた最も誇りに思えることはなんですか?

「俺自身は、ちょっと違う角度からそれを見ている。メンバーとはもうずっと長くいるし、あまりピクシーズを意識することはないんだ。でも、最も誇りに思えることが何かと言えば、それは俺たちの今のクルー。彼らは俺たちと3年一緒にいるけど、みんな人間としても本当に素晴らしいし、常に俺たちが心地よく演奏できる空間を作ってくれる。一緒にいるのが彼らだからこそ、どこで演奏しても自分たちが常に一つでいられるんだ。彼らのことは、心から誇りに思ってる」

――今後もアルバムは出るんでしょうか? ピクシーズの今後の活動における理想はどんなものだと考えてますか?

「もちろん。ツアーの後に作り始められたらと考えているよ。まだ車いすに座るには早すぎると思うから(笑)、アルバムは作り続けていきたい。理想はないね。今やっていることを、何も変えずに続けていくだけ。それが俺たちさ。今の状態に満足しているし、それがピクシーズだから、目標や理想はないんだ。みんなが俺たちのショーに来てくれれば、それでいいんだ(笑)」

――ニュー・アルバムのリリース直前にギタリストのジョーイ・サンティアゴがリハビリに入ることを宣言しましたね。バンドメンバーとして非常に辛かったと思いますが、どのように受け止めましたか?

「良いことだと思ったよ。実際、ここ10年の中でジョーイは一番上手く演奏できていると思う。本当に良かったよ。彼に対する印象がよくなっただけなく、演奏までよくなったんだからね。メンバー全員、すごく嬉しいんだ。ツアー中だったわけじゃないし、彼ができなかったのはアルバムのプロモーションくらい。しかも、彼がリハビリに入るという話題が宣伝にもなったしね(笑)。まあ少し大変なこともあったかもしれないけど、結果的にすべてが上手く機能したからそれでよかったんだ」

――今、ライヴでやってて一番興味深い昔の曲はどれですか?

「今は80曲くらいレパートリーがあるんだけど、俺たちはセットリストは書かないんだ。次に何を演奏するかは決めずに、ステージで決めていく。だから、毎回セットリストは違う。でも、そのせいで演奏すべき、みんなが聴きたい定番の曲を演奏し忘れてしまうことがあるんだ(笑)。だから、今は、定番の演奏すべき4〜5曲だけは常に演奏することにした(笑)。その時その時で演奏したい曲、演奏する曲は変わるから、何が一番興味深いかは決められないね」

――間もなくですが、2月には日本での公演が行われます。どんなライヴにしたいと思ってるか、教えてください。

「90分、ノンストップのロック・ショーになるよ(笑)。昔の曲と新曲が混ざったセットになる。今のところ、それがすごく上手くいっているんだ。日本でのショーも、良いショーになると思うよ」

――日本であなたが覚えている思い出があったら、教えてください。

「サマソニだな。2014年だったと思う。クイーンが出演していた年で、俺たちは違うステージで演奏することになっていたんだけど、その前にクイーンが既に演奏しているのが聴こえたんだ。俺はクイーンの大ファンなんだけど、一度もショーを見たことがなかったから、何十メートルか先で彼らが演奏していると思うとすごく興奮したよ。しかも、それを日本で経験するなんてね。全然日本っぽい思い出じゃないけどさ(笑)」

――今日はありがとうございました!

「こちらこそありがとう! 来日を楽しみにしているよ」

来日公演詳細

Hostess Club Weekender
日時/会場: 2017/2/25(土)、26日(日) 新木場スタジオコースト
OPEN/START:12:30/13:30
25日(土):Pixies / MONO / Girl Band / Pumarosa
26日(日):The Kills / Little Barrie / The Lemon Twigs / Communions
価格:2日通し券13,900円、1日券8,500円(税込・各日別途1ドリンク)

Hostess Club Presents Pixies with BO NINGEN
日時/会場:
2017/2/27(月)EX THEATER ROPPONGI
Ticket:¥8,500(税込 / Standing)¥9,500(税込 / 指定席)
※1ドリンク別途
OPEN 18:00 /START 19:00

リリース詳細

アーティスト名:Pixies(ピクシーズ)
タイトル:Head Carrier(ヘッド・キャリア)
レーベル:Play It Again Sam / Hostess
品番:HSE-3624
発売日: 発売中!
価格:2,490円+税
※日本盤はボーナストラック2曲、歌詞対訳、ライナーノーツ (大鷹俊一)付
1. Head Carrier
2. Classic Masher
3. Baal’s Back
4. Might As Well Be Gone
5. Oona
6. Talent
7. Tenement Song
8. Bel Esprit
9. All I Think About Now
10. Um Chagga Lagga
11. Plaster Of Paris
12. All The Saints
13. Baals Back (Live)*
14. Um Chagga Lagga (Live)*
*ボーナストラック

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