SHAMIL TANNA/NME

Photo: SHAMIL TANNA/NME

ケンドリック・ラマーやフライング・ロータスのライヴやレコーディングに参加してきたブランドン・コールマンが4月に来日公演を行うのを記念して、NME Japanでは昨年『NME』に掲載されたケンドリック・ラマーのカヴァー・ストーリー・インタヴューを掲載します。

ブランドン・コールマンは、カマシ・ワシントン、サンダーキャット、ロナルド・ブルーナーJr.などと共にケンドリック・ラマーやフライング・ロータスの諸作で演奏しているウェスト・コースト・ゲット・ダウンの中核メンバーで、その類まれなテクニックによって、スティーヴィー・ワンダーやアリシア・キーズらとも共演を果たしてきました。

第58回グラミー賞で最多の5部門を受賞し、2015年のアルバム・オブ・ザ・イヤーで各メディアのトップを総ナメすることになった傑作『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』で明確になったケンドリック・ラマーの哲学を掘り下げます。

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現在、多くの賞賛を受けるケンドリック・ラマーだが、この男が実際に“空を飛べる”と思っていたとしても許されるだろう。28歳のウエスト・コースト出身のヒップホップ・キングは、まさに彼の“Alright”のビデオ・クリップでそれをやってのけたが、どこからが特撮でどこからが彼のスーパーパワーなのかを判断するのは困難だ。

昨年6月30日にリリースされた、政治色の強い“Alright”のミュージック・ビデオは、彼がロサンゼルス、サンフランシスコ周辺を宙に浮きながら走り、街灯の上に立ってラップを披露し(ケンドリック・ラマーは撮影のために横断歩道に現れたが、これはロスの情報サイト「lalive.com」でもトップストーリーとして取り上げられた)、その下では、よく見かけるようなストリートの日常が流れる。それから、ケンドリック・ラマーは白人の警察官に拳銃で撃たれ、そのまま地面に落下するという内容になっている。

2015年はケンドリック・ラマーにとって、さらに大きな飛躍を急激に遂げた非常に重要な年となった。2015年3月に、これまでのヒップホップ史上の中でも、最も野心的な作品の一つと言われる『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』を彼はリリースした。本作は複雑でありながら眩いばかりの輝きを放っており、2013年のアルバム『イーザス』発表以来、次回作の待たれているカニエ・ウエストを触発し、最新作の制作にとりかからせたとも言われている。

「(人々の間で)ボブ・ディランやビートルズ、ジミー・ヘンドリックスが語られるように、このアルバムについても語ってほしい」、「俺の時代がやって来たら、俺は、孫やその子供の年代まで語り継がれる存在でいたいんだ」とケンドリック・ラマーはイースト・ロンドンのスタジオで語った。

ケンドリック・ラマーは、長寿には誰も興味がないような地域で育った。ケンドリック・ラマーが生まれ育ったロサンゼルスのコンプトンは、近年ギャングスター・ラップの聖地であり、ギャング集団のクリップスとブラッヅの抗争が激化し続けているような地区である。彼の友人が致命的な襲撃を受け、その祖母から駐車場で洗礼を受けるようにと頼まれた時から、ケンドリック・ラマーは暴力団グループの生活から足を洗った(ケンドリック・ラマーは2013年に洗礼を受けている)。

ケンドリック・ラマーは、16歳の時にトップ・ドッグ・エンターテイメントと契約をし、K-Dotの芸名のもと、レーベル・メイトであるアブ・ソウル、スクールボーイQ、ジェイ・ロックとともにブラック・ヒッピーを結成した。K-Dotとして2010年に発表したミックステープ『Overly Dedicated(オーヴリー・デディケーテッド)』の中のトラック“Ignorance Is Bliss”はドクター・ドレーの目に止まり、彼の才能を垣間見せたが、その翌年に発表した『Section.80(セクション80)』が大きな評判となりアフターマス・レコードとの契約をとりつけている。そして、2012年の『グッド・キッド、マッド・シティー』でメジャー・デビューを果たし、ヒップホップ界を引き継ぐ優れた才能をより多くのファンが目にすることになる。2013年にはビッグ・ショーンとコラボした“Control”でビッグ・ショーンに激しい扇動の一句を捧げ、それは地球上のすべてのラッパーの息の根を止める(ビッグ・ショーンを含む)ほどの衝撃だった。そして彼は、彼のヒップホップの道をそのまま突き進んでいく。

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