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EUからの離脱がイギリスの音楽業界に深刻なダメージをもたらすとして、多くのイギリスのアーティストや音楽業界の主要な組織らがEUからの離脱の再考を求める公開書簡に署名している。

テリーザ・メイ首相が現在進めているEUとの交渉には多数の反対が寄せられており、議会が大いに混乱するなか、テリーザ・メイ首相はEUの指導者たちと物議を醸している条件について「再協議」する意向を示している。

今回、アニー・レノックスやエンター・シカリ、ザ・リバティーンズのカール・バラー、ネイディーン・シャー、ビリー・ブラッグ、ブラーのデイヴ・ロウントゥリーら多くのミュージシャンが、音楽家ユニオンやインディペンデント・ミュージック・アソシエーション、ミュージック・マネージメント・フォーラム、ブリティッシュ・アカデミー・オブ・ソングライターズ、アット・ザ・ドライヴ・インやエド・シーランが所属しているコンポーザーズ&オーサーズ・アンド・ザ・ミュージック・プロデューサーズ・ギルドら音楽業界の主要な組織らと共に、EU離脱に反対する公開書簡に署名している。

公開書簡には「EUからの離脱はUKの音楽業界が大変な脅威に晒されることを意味しています」として、次のように記されている。「EUを離脱した後のイギリスとしては、消費者やファンに作品を届けるのに価格が上がってしまうのは目に見えており、国際的な市場へのアクセスもまた大変になります」

公開書簡は次のように続けられている。「票を投じたのが離脱であれ残留であれ、誰一人としてこのような状況に対しては投票していません。このような悲惨な状況から抜け出す策を見つけることは必須であり、我々の現在の影響力や貿易の自由を維持するために別の選択肢を検討してもらおうと、今回みなさんに呼びかけているのです」

公開書簡の全文は以下の通り。

「この書簡に署名している私たちは、UKの音楽業界のアーティストやプロデューサー、マネージャー、ビジネス、プラットフォームを代表して、EU離脱や離脱に対するイギリスの現在の方向性に対する懸念を表明します」

「EUからの離脱は、UKの音楽業界が大変な脅威に晒されることを意味しています。EUの関税同盟や単一市場、付加価値税制度、(そのすべてであれ一部であれ)規制制度から離脱することは、グローバルな市場における我々のリーダーシップを初め、輸出入やツアーの自由、アーティストや作品をプロモーションする自由を脅かすことになりかねません」

「音楽業界はUKの経済に45億ポンド(約6,400億円)もの貢献をしているほか、世界的に成功を収めているUKのアーティストたちは、25億ドル(約3,500億円)の輸出を生み出しており、世界規模のデジタル音楽市場において今も急速に成長を続けています。あらゆるアーティストのビジネスの核となっているライヴ市場は、UKの経済に10億ポンド(約1,400億円)の貢献をしており、ツアーや作品をプロモーションする際の移動の自由がその根底にはあります」

「EUによって提案された(コンテンツの著作権管理を一括化する)デジタル・シングル・マーケットの改正は、その多くがUKによって提起されたものあり、消費者やテクノロジーのビジネスの規模をさらに拡大し、また、新たに可決された(ウェブサイトなどにアップロードされたものの著作権の有無のチェックを義務化する)EUの著作権法改正案は、主要なプラットフォーム上における我々の業界の産物の価値を守るためのものです。これらの保護が受けられないことになるUKの音楽業界は、EUに留まる各国と比べて大きな不利が生じることになります」

「(ロビー団体)UKミュージックによってなされた、関係者にEU離脱が音楽業界に与える影響についての見解を聞いた調査によれば、今後の音楽業界にいい影響を与えるだろうと答えたのはわずか2%でした」

「EUを離脱した後のイギリスとしては、消費者やファンに作品を届けるのに価格が上がってしまうのは目に見えており、国際的な市場へのアクセスもまた大変になります。ライヴ・イベントは延期やキャンセルの危機と隣り合わせになり、イギリスの商業に与えてきた経済的な利益や文化的な貢献は徐々に弱まっていくことになるでしょう」

「票を投じたのが離脱であれ残留であれ、誰一人としてこのような状況に対しては投票していません。このような悲惨な状況から抜け出す策を見つけることは必須であり、我々の現在の影響力や貿易の自由を維持するために別の選択肢を検討してもらおうと、今回みなさんに呼びかけているのです」

ディヴィエイト・デジタルのCEOでミュージック・フォー・EUのオーガナイザーの一人であるサミー・アンドリュースは次のようにコメントしている。「このように音楽業界の様々な派閥が一つにまとまることなど滅多にありません。しかしながら、『ミュージック・フォー・EU』にこれまでに集まっている署名のリストは、現在の混沌とした、あらゆる側面におかしな結果をもたらすことになるであろう状況に対する懸念の大きさをハッキリと示しています」

彼は次のように続けている。「EUからの離脱は世界を牽引するイギリスの音楽業界にとって紛れもない災難です」

一方で、ゲット・ケイプ・ウェア・ケイプ・フライのサム・ダックワースは次のように述べている。「現代は繋がりの時代であり、なくなりつつある権利や貿易を妨げる障壁は過去のものであるべきです。我々は自分たちよりも大きな文化の家族から孤立してはいけないのです。ステージや市場、チームを共有するという点において、EUからの離脱は予測できない結果をもたらすことになるでしょう」

「音楽は経済における大きな部分を占めており、訪れる人たちをイギリスに歓迎する最初の役割を担っています。この状況が続くよう、今後のガイドラインや約束、安全性の保証などがなされることが必要不可欠なのです」

公開書簡に署名したアーティストらのリストは下記の通り。

Paloma Faith
Alan McGee
Annie Lennox
Nick Mason – Pink Floyd
Chrissie Hynde
Carl Barat – The Libertines
Nadine Shah
Stuart Camp – Grumpy Old Management
Dave Rowntree – Blur
Association of Independent Music (AIM)
Beggars Group
Billy Bragg
Music Managers Forum (MMF)
Public Service Broadcasting
Enter Shikari
David Arnold
Jamie Cullum
Musicians Union (MU)
Music Producers Guild (MPG)
Featured Artist Coalition (FAC)
Fran Healy – Travis
Broadwick Live
Kilimanjaro Live
Incorporated Society of Musicians (ISM)
Coda
Boomtown Festival
Nitin Sawhney
Fleet River Management
Solo Agency
British Academy of Songwriters, Composers & Authors (BASCA)
Blood Red Shoes
British Sea Power
Get Cape Wear Cape Fly
Ben Robinson – From The Fields – Blue Dot / Kendal Calling
Ed Harcourt
Cll Jon Tolley – Banquet Records
Lightning Seeds
Stephen Budd
The Subways
Red Grape music
Peggy Seeger
David Manders – Liquid management
Beach Riot
Ralph Lawson – 20/20 vision recordings
Craig Jennings – Raw Power
Danny Goffey – Supergrass
Revered And The Makers
Mark Davyd
Sammy Andrews – Deviate Digital
Cliff Fluet
Emma Greengrass
Simon Esplen
Alistair Norbury
Paloma Faith
Marillion
Emmy The Great
Danielle Perry – Miss Perry Presents Ltd
Cannibal Hymns
Tigercub
Stephen Taverner – East City Management
Carwyn Ellis – Pretenders
Band Of Skulls
Chris Carey – Media Insight Consulting and FastForward
Ros Earls – 104db management
Jonathan Wood – Ooosh! Tours Ltd
Peter Quicke – Ninja Tune
Laurence Bell – Domino Recording Company
John Giddings – Solo Agency
Amy Bee Sting- Oh My God! It’s The Church
Bill Ryder-Jones
Ellie Giles – Step Music Management
Kevin Fleming – Warp Records
Andy Edwards
Mick Patterson
Kat Kennedy – Big Life Management

デーモン・アルバーン、リタ・オラ、ジャーヴィス・コッカー、エド・シーランらは先日、EU離脱に抗議するためのテリーザ・メイ首相への公開書簡に署名して、万が一イギリスがEUを離脱すれば、「自ら築いた文化的な牢獄」の中でイギリスの音楽業界における「幅広い声」が無視されることになると警鐘を鳴らしている。この公開書簡はボブ・ゲルドフによって書かれたもので、ブライアン・イーノ、プライマル・スクリームのボビー・ギレスピー、ジョニー・マー、ニック・メイソン、アラン・マッギー、ウィリアム・オービット、ペット・ショップ・ボーイズのニール・テナント、ロジャー・テイラー、ポール・サイモン、スティングらも署名している。

今年9月には、英国レコード産業協会も、2017年における世界中でのイギリス人アーティストの売上をもとにEU離脱が与えうる悪影響に警鐘を鳴らしている。英国レコード産業協会は、イギリスのEU離脱によって音楽の輸出入に経済的な悪影響が出ないようEUとの「強力な」同意が必要だと述べている。

英国レコード産業協会による発表によれば、2017年におけるイギリスの音楽の輸出額は4億800万ポンド(約538億円)という過去18年で最高の数字を記録しており、同年に世界中で購入されたアルバム8枚のうちの1枚がUKのアーティストの作品になる計算になるという。

英国レコード産業協会の最高経営責任者であるジェフ・テイラーは、EUとの交渉の重要性について次のように説いている。「UKの音楽は世界中の音楽ファンの生活を豊かなものにしているのみならず、海外での売上やUKを訪れる多くの観光客を魅了することで、イギリス国内の経済にも大きく貢献しているのです」

また、UKミュージックの最高経営責任者であるマイケル・ダガーは先日、EU離脱について「将来的に世界をリードする可能性を秘めているアーティストにハンマーで殴るようなダメージ」を与えることになると警鐘を鳴らしている。

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