モビー・グレープの結成メンバーであるギタリストのジェリー・ミラーが亡くなった。享年81歳だった。
訃報はモビー・グレープのファン・グループのフェイスブックで発表されている。「悲しいことに昨晩、ジェリー・ミラーが亡くなったことをお伝えしなければなりません」
遺族は「プライバシーに配慮して、敬意を払ってほしい」と求めているとして、「当分の間、電話をかけるのをやめてほしい」とも述べているという。ジェリー・ミラーの訃報について他の情報は明らかにされていない。
ジェリー・ミラーは1966年にピーター・ルイスとスキップ・スペンスと共にモビー・グレープを結成している。スキップ・スペンスは1969年にリリースした唯一のソロ・アルバム『オール』でカルト的な人気を博しており、同年モビー・グレープを脱退している。エリック・クラプトンは1967年にクリームとモビー・グレープで初のアメリカ・ツアーを行った時にジェリー・ミラーのことを「世界最高のギタリスト」と評している。
モビー・グレープは1967年にセルフタイトルのデビュー・アルバムをリリースしており、そこそこの成功を収めたが、時が経つにつれてロバート・プラント、キャット・パワー、R.E.M.のマイケル・スタイプらが曲をカヴァーしており、米『ローリング・ストーン』誌は2003年に史上最高の500枚の121位に選出している。
ジェリー・ミラーが曲を書いた“8:05”、“Naked, If I Want To”といった楽曲はロバート・プラントによって1993年にB面曲としてカヴァーされている。“Naked, If I Want To”はキャット・パワーが2000年にリリースした『ザ・カヴァーズ・レコード』でもカヴァーされている。
モビー・グレープは1966年から1969年までの短期間しか活動しなかったが、1968年発表の『ワウ』、1969年発表の『モビー・グレープ69』と『トゥルーリー・ファイン・シチズン』といったアルバムをリリースしている。
1970年代から1990年代にかけてはメンバーのスキップ・スペンスとボブ・モーズリーが精神疾患や薬物中毒と闘いながら、何度か再結成と解散を繰り返している。最後の再結成は2007年で、ジェリー・ミラーとボブ・モーズリー、ピーター・ルイス、ドン・スティーヴンソンが一度限りのコンサートを行っている。
モビー・グレープの波乱万丈のキャリアにもジェリー・ミラーが動じることはなく、2023年に『ザ・スペクテイター』のインタヴューでジェリー・ミラーは「思うに私は世界で最も幸運な男だよ」と語っている。「健康だし、音楽もあるし、生活のために最もやりたいことをやっている。おそらくモビー・グレープについては騙されたけど、それがどうした。騙されたことがないというなら、それは音楽業界にいたことがないからだよ」
モビー・グレープの最後のアルバムは1989年発表の『レジェンダリー・グレープ』となっている。本作はカセットテープで限定リリースされた後、2003年にリマスターされてCDでリリースされている。
ジェリー・ミラーは1993年発表の『ナウ・アイ・シー』、1995年発表の『ライフ・イズ・ライク・ザット』、1998年発表の『ライヴ・アット・コールズ』、2000年発表の『ランニング・ザ・トレイン』という4枚のソロ・アルバムをリリースしている。これらのアルバムはストリーミング・サービスでは現時点で公開されていない。
ジェリー・ミラーは2021年の『シアトル・タイムズ』紙のインタヴューでバンドの再結成については可能性があると語っている。「たまにもう一度やろうという話をしてたんだけど、でも、新型コロナウイルスで難しくなってしまったんだ」
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