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ピンボールの魔術師や政治運動、恋愛や失恋などの私的な話に至るまで。ここで紹介するコンセプト・アルバムには、様々なストーリーが込められている。夢中で聴いた思い出のアルバムで、素晴らしいストーリーを展開してくれた23組の音の語り手を紹介しよう。

デヴィッド・ボウイ 『ジギー・スターダスト』(1972)

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デヴィッド・ボウイ自身のあらゆる分身の中でも、ジギー・スターダストは究極の人物像だ。燃えるような赤毛を持つバイセクシャルの宇宙人ロックスターは1972年にベールを脱ぐことになった。この架空の人物の名前を冠したアルバムでは、壮麗の極みと言えるサウンドトラックを背景にジギー・スターダストのストーリーが語られ、次第にセックスと愛とロックンロールへの世俗的視点を批評してみせる。


ピンク・フロイド 『ザ・ウォール』(1979)

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ピンク・フロイドを代表する最も有名なコンセプト・アルバムのひとつ。『ザ・ウォール』は悩める主人公であるピンクの物語で(ピンク・フロイドのベーシストであるロジャー・ウォーターと、エキセントリックな元メンバーのシド・バレットの二人を融合した人物像がモデルとなっている)、自分の社会的立場と戦いながら、比喩的に壁(ウォール)に見立てた孤独感が次第に強くなっていき、ついには自らの意志で逃亡者となっていく様が描かれている。


ビートルズ 『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(1967)

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架空の人物サージェント・ペパーズとその仲間の物語ではあるが、ビートルズはこのアルバムで、『リボルバー』で培った土台をはるかにしのぐ音楽的実験を追求するポジションを獲得してしまった。コンセプト・アルバムの最初期に属する最も有名な代表例であり、この素晴らしい四人組が自分たちの殻を破った代表例ともされている。


ボン・イヴェール 『フォー・エマ・フォーエヴァー・アゴー』(2007)

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『フォー・エマ・フォーエヴァー・アゴー』は、心奪われた元恋人への想いを綴ったアルバムと考えられているが、ジャスティン・ヴァ―ノンは、「どうにも動けなくなってしまった状況や癒すことのできない心の痛み」についてのコンセプト・アルバムであると語っている。ウィスコンシンの人里離れた山小屋で録音されたこのアルバムには、孤独、慕情、喪失の強烈なストーリーが巧みに盛り込まれている。


イーグルス 『ならず者』(1973)

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ロサンゼルス出身のグループ、イーグルスの2枚目となるこのアルバムでは、かつての西部開拓時代をベースにしたテーマによって、内なるカウボーイ魂へと導かれる様子が見て取れる。1曲目の“Doolin Dalton”とその歌詞の中の「決闘(duellin)」や「レッドアイ・ウィスキー(red-eye whiskey)」のくだりが印象的だが、ジャケットでのメンバーのカウボーイハットにホルスターの完璧なカウボーイ姿も興味深い。


グリーン・デイ 『アメリカン・イディオット』(2004)

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ビリー・ジョー・アームストロングとその仲間たちによる、今世紀で最も注目に値するコンセプト・アルバムのひとつであり、主人公のジーザス・オブ・サバービアと彼の「怒りと愛」で揺れ動く葛藤を描いたアルバムである。ちょうど始まったイラク戦争に影響を受けて製作されたこのアルバムは、失望した世代から多くの支持を得ることになった。


ジェイ・Z 『アメリカン・ギャングスター』(2007)

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同名の映画からインスピレーションを受けたジェイ・Zの10作目のアルバムで、この犯罪映画にすっかり心を奪われたジェイ・Zは、製作期間中にスタジオに設置されたスクリーンにエンドレスで映画を上映しながら曲を書き上げた。映画の内容は、ノースカロライナの麻薬密売ギャングの実話が描かれている。

ケンドリック・ラマー 『グッド・キッド、マッド・シティー』(2012)

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『グッド・キッド、マッド・シティー』は、コンプトンのドラッグ漬けのストリートで暮らした体験について少年から成人の時期にかけてのストーリーを描いたケンドリック・ラマー自身の自伝的アルバムで、一躍ケンドリック・ラマーの名を有名にしたアルバムでもある。アルバムのコンセプト通り、ジャケットの表紙には「ケンドリック・ラマーによるショート・フィルム」と記されている。


ザ・キンクス 『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』(1968)

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ある種のコンセプト・アルバムである『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』では、何よりも自分自身の思いや感情について語られている。古風な伝統について説明があり、ノスタルジックな英国気質が語られ、自らの内面世界で完結しているアルバムである。


ザ・フー 『トミー』(1969)

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聴覚と視覚、そして話す能力も失ってしまい、ピンボールをプレイするのを生きがいとする子供の波瀾万丈のストーリーが展開される。異論はあれど、『トミー』は、コンセプト・アルバムとしてはトップの位置を占める代表的な1枚である。アルバムの背景となっている物語自体も素晴らしい内容で、1975年には映画化されている。


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