不思議なことに新たなものを見つけているはずなんですけど、
そこにあるのは変わらない自分自身だったりもして、その瞬間に絶望を感じたりもするんです
──でも、凛として時雨は、アルバムごとにスタイルやコンセプトを変えるわけでもないですし、新メンバーが加入するわけでもないですし、この3人で凛として時雨というものの深遠な部分をひたすら突き詰めていくという、すごく珍しいですし、ストイックなバンドのように思いました。
「そうしたキャリアのなかで自分自身のなかに見つけられるものを探しているんでしょうね。僕は別に自分のことをストイックだとは思わないですけど、自分のなかから見つけたもので人に何かを伝えようとすると、必然的にそういう考え方になっていくのかもしれないです。より突き詰めていくというか。でも、そうじゃなきゃ見つけられないというか、不思議なことに角度を変えたり、さらに深く掘っていって新たなものを見つけているはずなんですけど、でも、そこにあるのは変わらない自分自身だったりもして。今回も作品を作って、違う角度から掘っていって、掘っていって、でも結局、自分の同じ核に辿り着いたりして。だから、その瞬間に絶望を感じたりもするんですよね。また同じこと歌ってるなとか、また同じものを作ってるんじゃないかっていう。それだけ自分の軸はまだブレていないんだなと自分自身を納得させて(笑)。でも、作品を作り終えると、また同じ自分に出会ってしまったなっていう」
──でも、例えば、レディオヘッドのトム・ヨークなんかを見ていると、これだけキャリアを重ねてきて、ようやく解放されてきたんだなという感じがしますよね。彼らの場合はアルバムごとに明確なコンセプトを掲げてきたバンドですけど、でもトム・ヨークという人の本質は変わらなくて、最近のステージ上の様子を見ると、ようやくいろんな呪縛が解けてきているような。
「僕はアトムス・フォー・ピースを観た時に、あの解き放たれている姿を見て、すごく自由を感じたんですよね。『この人、まるで無重力のなかで音楽をやっているな』と思って(笑)。でも、本人はそうじゃないかもしれないですよね。あのなかでも、すごくもがいているかもしれない。でも、僕も過去にレディオヘッドは何度か観てますけど、その印象よりさらに自由になっている気がしました。きっとあれだけすごい作品を作り続けて、しかも巨大なモンスター・バンドになってしまったことによって、本人が『レディオヘッドは自分たちでエサをやるだけのモンスターになってしまった』というようなことを言ってましたけど、それって想像すると壮絶だなって。その本人がちょっとでも解き放たれている姿を見ると、どういう過程があったのかはすごく知りたくなります。単純にソロというアウトプットができてそうなったのか、キャリアが重なっていったことによって自分のなかで何かを許し始めたのかは分からないですけど、僕にもあの時は解き放たれているように見えました。もっとも真実は分からないですけどね(笑)。僕自身もっと無意識になりたいという感覚があって、ライヴでは特に自分と意識の間に隔ててるものがたくさんあるような気がして、純度としてまだまだ100%になりきれていない感じがします」
──そうやって削ぎ落とされていくと、自然とよりワールドワイドな表現にもなっていくんじゃないですかね。
「洋楽と邦楽の区別って難しいんですけど、最近ストリーミング・サービスも試しにやってみたりしていて、多分、過去のなかで一番洋楽を聴いてる時期で(笑)。漠然とですが、洋楽はすごくダイレクトな存在感を感じるんですよね。音の質感だったりとか、サウンドもそうなんですけど、たまたまラジオで聴いたロイヤル・ブラッドとかも、あれはベースとドラムの2人だけですよね。最初、普通にギターがいると思って、びっくりしてしまって。この音の質感ってなかなか日本では作れないなと思って、それは他の洋楽を聴いてても感じるんですよね。すごくポップなジェイソン・ムラーズでも、エド・シーランを聴いてたりしても、すべてにダイレクトな質感を感じるというか、昔からこの圧倒的な差は何だろうなって(笑)。あんまり普段、人の音楽から自分の音楽に通じる刺激を得ることは少なくて、カッコいいなと思う音楽は本当にいっぱいあるんですけど、そういうのって久しく感じてなかったんですよね。感じたとしても自分とは違うものとして『いいな』って覗く程度の感覚だったりして。今だから感じられるのは大きいと思いますが、そういう刺激を受けたこと自体がすごく嬉しかったんですよね。自分が刺激を受けたり、なにかをカッコいいと思えることって、これから自分の音楽を作っていくなかでも、まだまだ自分が到達できてない場所があるんだなって。だからといって別に洋楽みたいになるわけじゃないんですけど(笑)、そこから得ている刺激みたいなものもすごくあって、状態としてはすごくクリエイティヴではありますね。自分の作品からもちょっとはそこに近づけてるのかなっていうのは、最新作を客観的に聴いた時にあったので、このダイレクトな感じというのは洋楽を聴いた時に感じたものと1mmぐらい重なっているのかもって(笑)。それは(『es or s』の)アナログを作ったことでもそうだったんですけど、ハイレゾだったり、配信だったり、盛んになってきている時代だからこそ、アナログで聴いてみたらどうなんだろう?とか、海外で録ってみたらどうなんだろう?とか、そういうところも音に対する意識の入口として聴いてもらえたら、すごく嬉しいなっていうのはありますね。自分自身も音への意識を持ち始めたのはすごく遅かったんですけど、自分の好きなアーティストが何か新しい試みに取り組んでいると、初めてそこに手を出せたりするじゃないですか。アナログを出したり、ハイレゾを出したりしていると初めて聴いてみようかってなったりするんで、そこに初めて触れてもらうパイプの役割としても今回面白かったかなと思っていて。海外で録って、アナログを出して、あとはそれをリスナーがどう受け取るかは自由なので」
──では、ジーザス&メリー・チェインとの公演もよろしくおねがいします。
「すごく楽しみにしています。『サイコキャンディ』を聴いて、1985年にこの破裂寸前のギター・サウンド、あの独特なアンビ感とポップセンスもすべてが衝撃的に新しかったんだろうなと思って、ここから本当に多くの音楽が始まっていったんですよね。これだけ歪で凶暴なサウンドがもはやノイズに聴こえないということがその証明なんだろうなって」
Interview by Takuya Furukawa
Release
『es or s』
2015.09.02 Out
・初回生産限定盤:CD+7inch Analog AICL-2947~8 ¥4,000(tax out) ※数量限定アナログ盤見開きダブルジャケット仕様+Photobook
・通常盤:CDのみ AICL-2949 ¥1,850(tax out) ※初回仕様封入物あり
Disc1 (CD)
5曲収録/全楽曲NY・スターリングサウンドTom Coyneによるマスタリング
1. SOSOS
2. Mirror Frustration
3. Karma Siren
4. Tornado Mystery
5. end roll fiction
Disc2 (7 inch Analog)
ベルリン・ダブプレイツ&マスタリング Mike Grinserによるマスタリング※初回生産限定盤のみ
Side A: SOSOS
Side B: Mirror Frustration
Live
2015.11.20 FRI
凛として時雨 Tour 2015 FINAL Hyper S.O.S.
神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
OPEN 18:30/START 19:15
TICKET:指定席:¥5,400、着席指定席:¥5,940
2015.11.27 FRI
NME JAPAN presents NME ICONIC ALBUM
THE JESUS & MARY CHAIN
“PSYCHOCANDY” 30th Anniversary Japan Tour
東京都 EX THEATER ROPPONGI
OPEN 18:00/START 19:00
TICKET:アリーナスタンディング 8,800円/指定席 9,800円(1ドリンク代別・税込)
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