20位 ポスト・マローン『ハリウッズ・ブリーディング』(Republic Records)
一言で言い表せば:賛否を呼ぶトラップの宮廷道化師からのジャンルを超えた楽曲のコレクション。
みんながみんなポスト・マローンを好きなわけではないだろうが、一方で誰しも最低1曲は好きなポスト・マローンの曲があるだろう。これが『ハリウッズ・ブリーディング』の秘密である。17曲も曲数があるのはストリーミングのためでもあり、リスナー自身に曲を選んでもらうためでもある。リリース当時、『NME』は「シンセ・ポップ – ロックンロール – ベッドルーム・インディ – トラップ – ヒップホップ – 別れのアルバム」と評している。ポスト・マローンは多くの感情、そして著名な友人を抱え、豪勢なビートによってすべてを解決しようと試みている。誰しも最低でも3曲は楽しめる曲があり、これらを夏のプレイリストに加えるだろうし、3曲はスキップするかもしれない。ポスト・マローンは儲かって笑いが止まらないだろう。
鍵となる楽曲:“Sunflower”
最高の瞬間:「チャンスをくれよ、そうしたらまた台無しにするから」この“Staring at the Sun”の一節は最高のポスト・マローンを示している。憎めず、嘆かわしいながらも、絶対的に親しみやすいのだ。
19位 アミル・アンド・ザ・スニッファーズ『アミル・アンド・ザ・スニッファーズ』(Rough Trade)
一言で言い表せば:パブでの喧嘩の2019年のサウンド・トラック。
メルボルン出身のパンクスである彼らはステージ前のつばの届くような範囲以外からでも楽しめるが、彼らのデビュー・アルバムはバカバカしいほど楽しいながら、理不尽なまでに素晴らしい曲のコレクションとなっており、わずか29分しかなく、一気飲みのような速さとなっている。
鍵となる楽曲:“Control”
最高の瞬間:“Gakked On Anger”は、金銭的に余裕のない、ベビーブーム世代を嫌うミレニアル世代に特に共感している。「私は家を持っていない、家賃を払えない、床で、車で、テントで寝てる」
18位 ザ・ケミカル・ブラザーズ『ノー・ジオグラフィー』(Virgin EMI)
一言で言い表せば:ダンスフロアの父親たちが戦いを挑む。
分断・攻撃の時代の今、ザ・ケミカル・ブラザーズは畏敬の念を起こさせる通算9作目のアルバムで人々を団結させようとしている。 腕を突き上げたくなるようなアンセムの“Got To Keep On”にせよ、怒りに燃えた“MAH”にせよ、ケミカル・ブラザーズはくだらないことにうんざりしていることを宣言し、これまで出してきたなかでも最高かつ最も独創的なビートをところどころ展開している。
鍵となる楽曲:“Got To Keep On”
最高の瞬間:アルバムの見事なオープニング20分間で、4つのトラック(“Eve Of Destruction”、“Bango”、“No Geography”、“Got To Keep On”)が途切れることなく連続しているところ。
17位 デイヴ『サイコドラマ』(Neighbourhood)
一言で言い表せば:イギリスの次期有力候補がセラピストと話し合っている。
2019年という年は、デイヴが『サイコドラマ』でマーキュリー・プライズを受賞し、一方ではチアゴ・シウバが世界最高のディフェンダーの一人であると再認識され、ドラマでは「トップ・ボーイ」を観て震え上がるという1年だった。そんな当たり年だった今年、業界のベテランは高価な贈り物を用下ほうがいいだろう。というのも、デイヴはまだ弱冠21歳で、『サイコドラマ』は彼のデビュー作に過ぎない。これからの世界はデイヴのものだ。我々はその世界で生きていくだけだ。
鍵となる曲:紆余曲折のなかで展開していく11分もの大作“Lesley”で、デイヴは虐待にあっている妊娠中の女性レズリーと出会う。
最高の瞬間:“Screwface Capital”のデイヴは最高の横柄さだ。「Just know I put both the Ps in opp / At the same time I put the “pay” in paigon(敵に対して2つのPを俺が突きつけてやったことを分かっとけよ/俺は支払いもできれば、異教徒にも代償を支払わせてやる」母音の音さえあれば、デイヴはそれを自在に操ってしまうだろう。
16位 リゾ『コズ・アイ・ラヴ・ユー』(Atlantic)
一言で言い表せば:市井の人々のためのポップスターによる自己愛のアンセム
問題:リゾはどのようにして“Juice”のようなとにかく耳に残る曲を追求することができたのか? 答え:個性とパワフルな歌声、そして自己愛でコップのふちまでいっぱいのアルバムがあったから。サード・アルバム『コズ・アイ・ラヴ・ユー』は彼女を世界的スターにまで押し上げた上、ファンならとっくにご存知のことをますます強力にしてみせた作品だった。すなわち、彼女は“Lingerie” や “Jerome”のような情熱的なR&Bから、“Tempo”のような傲慢なヒップホップに至るまで、すべてをこなす多才なラッパーであり、シンガーであり、フルート奏者なのだ。アルバムは自信に溢れ、よくまとまっていて、素晴らしい楽曲が目白押しとなっている。
鍵となる曲:“Juice”
最高の瞬間:タイトル・トラック(“Cuz I Love You”)冒頭のアカペラ。
15位 フォールズ『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビー・ロスト・パート1』(Warner Bros)
一言で言い表せば:オックスフォードのアート・ロッカーは新たなニュー・ウェイヴのグルーヴを発見した。
制作途中にベーシストのワルター・ジャーヴァースの脱退があったのにもかかわらず、フォールズは2019年の2部作における1作目にして最高傑作で、リズムを強化しながら新しいサウンドとテクスチャーを模索している。その結果、ポスト・ミレニアルの不安が充満し、強迫観念に駆られた10曲が揃うことになった。このバンド史上の最高傑作に挑む対抗馬は、続いてリリースされた姉妹作『パート2』となるが、こちらではロックの獣であることを証明している。イギリスの最も重要なバンドの一つであるフォールズにとって、2019年はまさしく成功の年となった。
鍵となる曲:“In Degrees”
最高の瞬間:降下していく“In Degrees”の17秒間。僕のビールを手にとって。僕は行くよ。
14位 ソランジュ『ホウェン・アイ・ゲット・ホーム』(Columbia)
一言で言い表せば:クール極まりないノウルズ姉妹の一人は自分の故郷へのラヴレターを書いてみせた。
ソランジュの通算4作目となるアルバムは2019年の最高のサプライズの一つだった。ドリーミーなR&Bとモダンなラップのプロダクションを組み合わせて、彼女はヘヴィ級のプレイボーイ・カルティが参加した“Almeda”やグッチ・メインが参加した“My Skin, My Logo”といった楽曲で慣習を打破してみせた。彼女の浮遊感のあるR&Bにこうしたアトランタ出身のラッパーを迎えることで、同じジャンルの他のアルバムとは一線を画してみせた。『ホウェン・アイ・ゲット・ホーム』は短くシャープで、完璧な作品となっている。
鍵となる楽曲:“Binz”
最高の瞬間:起伏のあるエコーのかかったリフレインが“Stay Flo”には登場する。なんて美しさだろう。
13位 スリップノット『ウィー・アー・ノット・ユア・カインド』(Roadrunner)
一言で言い表せば:マスクに身を包んだ中年たちは年老いることはなかった。彼らはさらに素晴らしくなったのだ。
ヴェテランのメタル・バンドが「ポップになった」り、ソフトになったりするトレンドがあるが、とんでもない。熟年となったスリップノットの通算6作目はここ数年でも最もヘヴィで、最も激しく、最も重要な作品になっている。個人的な激動を作品としてまとめ上げ、怒りの時代に声を上げている。
鍵となる楽曲:“Unsainted”
最高の瞬間:“Spiders”に乗ってそぞろ歩きしている自分に気づいた時、自分がスリップノットを聴いていることを思い出すのだ。
12位 ヴァンパイア・ウィークエンド『ファーザー・オブ・ザ・ブライド』(Columbia)
一言で言い表せば:エズラ・クーニグが指揮権を執り、三人寄れば文殊の智恵というわけでもないことを証明してみせた。
6年の不在を経て、エズラ・クーニグは唯一の船頭となり、ニューヨーク発のヴァンパイア・ウィークエンドはこの通算4作目に全力を尽くし、18曲(日本盤は21曲)を収録した本作で、クラシックなカントリーによる恋愛ナンバーから、混沌と逸脱したエレクトロ・ロックまでをも渡り歩いている。ダニエル・ハイムやスティーヴ・レイシーの参加をはじめ、万策を講じてヴァンパイア・ウィークエンドは見事に予想を覆している。それによってユーモアから優しさ、好奇心といった地平から物語を生み出すようになれたのだ。
鍵となる楽曲:“Sympathy”
最高の瞬間:スティーヴ・レイシーが参加した“Sunflower”と“Flower Moon”でのシネマティックなサウンドだろう。
11位 ブリング・ミー・ザ・ホライズン『アモ』(RCA)
一言で言い表せば:生まれ変わったシェフィールドのデスコア連中がオルタナ・ポップに。
ブリング・ミー・ザ・ホライズンは通算6作目となる本作で実験的な方向へと向かった時にメタル至上主義者から批判が来ることは分かっていた。でも、そうしてみせたのだ。グライムス参加のテクノ・ポップである“nihilist blues”、メロウなアンビエント・ナンバーである“fresh bruises”などが、オーケストラ風の感動的なバラッドの“i don’t know what to say”やダニ・フィルスが参加したゴシック・ロック・ナンバーの“Wonderful Life”とトラックリストを分け合っている。驚くことにそれは全体として素晴らしい整合性を獲得している。別れがインスピレーションとなった『アモ』はオリヴァー・サイクス率いる彼らが自身のサウンドを変えながらも、独自のアイデンティティを保っていることを証明している。
鍵となる楽曲:“Mantra”
最高の瞬間:“Mantra”でロボットのような声が「マントラ」と告げ、鎌のようなリフが入ってくる瞬間。
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