10位 ソフィー “Immaterial”
マドンナの“Material Girl”がパラレル・ワールドから生まれたように、ソフィーによる過剰とも言えるナンバー“Immaterial”は『オイル・オブ・エヴリ・パールズ・アン・インサイズ』における最もポップな瞬間だ。クラップや電子音のスタッカートによる陽気なサウンドが押し寄せる“Immaterial”は、聴く者をナムコのゲームセンターのど真ん中にいるかのような場所へと連れていき、その音で身体を洗い流してくれる。プロデューサーやアーティストとしてのソフィーとポップ・チャートとの関係性は、目抜き通りのオートクチュールのそれと同じだ。ソフィーの音楽は、未来の音楽なのだ。
9位 クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズ feat. デイム・ファンク “Girlfriend”
よりタフな仮面を身につけたクリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズのカムバック・シングル“Girlfriend”は、最初の数秒で彼女がより生々しくラフな新時代へと突入したことを告げてくれる。「クリス」と官能的な声で囁かれ、ビートが生を受けるのだ。「武器に銃弾を込める男たちと、羨望で息をのむ女たち」と最初のヴァースで陽気に歌い上げるエロイーズ・ルティシエは、ジェンダーについての同様のステレオタイプを手に取り、笑顔を浮かべながらそれを転覆させている。堂々としたマッチョイズムを身に纏い、エロティシズムを軽快に操りながら、“Girlfriend”はファンクで腰をくねらせる、痛烈な一撃となっている。“Girlfriend”は作り手と同じくらいに移ろいやすく、恐れを知らない楽曲なのだ。
8位 ロビン “Missing U”
「あなたが残していった空っぽの空間がある/あなたはもう側にいないから」とポップの女神はソロとして8年ぶりの新曲となった“Missing U”で歌っている。まったく、ロビンがいなかったこの10年のほとんどの期間の間、私たちが抱えていた感情と一緒じゃないか。おかげで、私たちはなおさら彼女を好きになったのだけれども。空白の期間を経て、ロビンはまたさらに成長して帰ってきた。純粋なアルバムである『ハニー』を通して描かれている、愛や喪失、悲しみへの繊細なアプローチは、憂いに沈む見事な名曲として仕上がった“Missing U”に結晶化されている。期待していたようなバンガーではないのかもしれないが、私たちに欠かせない楽曲になったことに違いはない。
7位 アイドルズ “Never Fight A Man With A Perm”
ブリストル出身のパンク・バンドであるアイドルズは、輝かしいセカンド・アルバム『ジョイ・アズ・アン・アクト・オブ・レジスタンス。』をもって、毒された男性性の解体を自らの得意分野にしてみせ、この推進力に溢れた“Never Fight A Man With A Perm”で、そんなメッセージを自身の得意分野であるウィットや血の気に乗せて届けている。しなやかなギターのリフを芯に据えながら、フロントマンのジョー・タルボットは「お前は男じゃない、お前はリンパ腺だ/お前はソーセージの手を持ったデカい首みたいな野郎だ」のような思わず笑ってしまう歌詞を歌い上げ、支配的な男性性に自らの存在価値を見出している獰猛な男たちを攻撃している。それでも、ジョー・タルボットは最後にこう約束している。「口を閉ざすことにするよ/一緒に出かけようぜ」。アイドルズの言う通り、すべては愛なのだ。
6位 サンフラワー・ビーン “Twentytwo”
年を取ると忘れてしまうことの一つが、自分が22歳だった時に、22歳という年齢を若いと思っていなかったということだ。自分が22歳の時は、その時が一番歳を取っているのだから。サンフラワー・ビーンのアルバム『トゥエンティートゥー・イン・ブルー』のタイトルトラックであるこの楽曲で、ニューヨーク出身の3ピース・バンドはニール・ヤングの“Old Man”を彷彿とさせる若年の倦怠感や、『噂』期のフリートウッド・マックへ続く道のりへと舵を切っている。「自立してる。今はそうやって自分を見てる。もう22歳になったから」と歌うサンフラワー・ビーンは今年、ポップスターとして着実に成長していることを証明してみせた。
5位 チャイルディッシュ・ガンビーノ “This Is America”
チャイルディッシュ・ガンビーノは政治的な方向へ舵を切ったこの楽曲で、様々な二項対立を用いている。オープニングの陽気なゴスペルを暴力的なトラップのビートと入れ替え、ダンスに満ちた側面と、警官による暴行や銃による暴力が横行する側面に言及してアメリカを対照的に描き、ブラック・カルチャーを祝福しながら、黒人たちの苦しみにも言及している。“This Is America”は人々の間に議論を生み出し、世界についての不都合な真実に目を向けさせるという、優れた音楽の役割を見事に果たしてみせた。
4位 アークティック・モンキーズ “Four Out Of Five”
イーグルスの“Hotel California”を宇宙時代にアップデートしたような、『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』の中では最も商業的な楽曲と言える“Four Out Of Five”で、アレックス・ターナーは私たちを月面にある「情報と行動の比率」と名付けられたタコス料理のレストランに案内してくれる。オールドスクールのインディ・ファンにとっても、最新作の中では最も口当たりのいい楽曲となっている、キャッチーなリフやシンガロング向きのコーラスが入った“Four Out Of Five”は、アークティック・モンキーズのライヴにも難なく溶け込むことができる楽曲ではあるものの、チグハグなギター・ポップやアレックス・ターナーの名声を確かなものにした鋭い観察眼から書かれる歌詞という地点から何光年も離れているという事実に変わりはない。アレックスをシェフィールドから連れ出すのは構わない……ただ、もしかすると二度と帰って来てくれないのかもしれないよね。
3位 パーケイ・コーツ “Wide Awake”
自分たちらしさを突き詰めれば突き詰めるほど素晴らしさを増しているバンドの1つであるパーケイ・コーツにとって、2018年は自らが現代におけるトーキング・ヘッズの被っていたアートポップの王冠の正当な継承者であることを証明する年となった。パーカッションで軽快に飛び跳ねながらも、カウベルで音に厚みをもたせている“Wide Awake”は、現代におけるインディ・ファンクの名曲だ。
2位 ザ・1975 “Love It If We Made It”
この星の現状に言及しながら、ザ・1975はニュースの見出しを織り交ぜてミレニアル世代が抱える生きづらさを昇華させ、足を止めて思わず耳を傾けたくなるような楽曲を生み出した。さりげないシンセサイザーやジョージ・ダニエルの力強いドラムに乗せて、薬物中毒に屈したラッパーや西側諸国の社会で疎外された移民たち、世界のトップに君臨するおぞましい大統領たちに向けて叫ぶマット・ヒーリーの言葉は、屈強な魂ですら破壊してしまうほどの力を持っている。ベルトコンベアの上に流され続ける悍ましい想像からようやく目を背けることができるのは、ゴスペルの歌唱隊と共に「“I love it if we made it”(何かを成し遂げられたら最高だよ)」と楽曲のタイトルにもなっている言葉がコーラスとして荘厳に響いてくる時だ。そのわずか6語の単語には、力強い希望のメッセージが込められている。
1位 アリアナ・グランデ “No Tears Left To Cry”
2018年の締め括りとして届けられた“thank you, next”は、今年のアリアナ・グランデを代表する曲になったのかもしれないが、“No Tears Left To Cry”こそ彼女の才能が最も表れている楽曲である。“No Tears Left To Cry”の最初の1分間には、ディズニー映画『ファンタジア』を彷彿とさせるオープニングや、オペラの降臨、そしてフロリダ出身のアリアナ・グランデの代名詞である、弾むようなヴォーカルが詰め込まれている(この点に関しては『スウィートナー』のタイトルトラックも聴いてみて欲しい)。オープニングを経て“No Tears Left To Cry”が幕を開けると、歯切れのいいビートや終わりの見えないフックへと雪崩れ込み、そんな彼女の勢いに押されて曲が終わるや否やリピートしたくなってしまう。私生活に降り掛かった困難な状況の数々に直面した12ヶ月を経て、見事な復活劇を演出してみせた“No Tears Left To Cry”は、今年のベスト・ポップ・ソングであり、音楽がしばしば果たしてきた癒しとしての役割や、自分自身を洗い流し、新たなスタートを切るための手助けになるという音楽持つ底力を証明している。現代における最高品質のポップ・ソングだ。
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