40位 スピリチュアライズド『アンド・ナッシング・ハート』

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『アンド・ナッシング・ハート』は、ジェイソン・ピアースがこれまでのキャリアで書いた最も感情的で心動かされるような作品の一つだ。周囲の世界に対する疲弊にも近い怒りや絶望感に満ちた本作で、ジェイソン・ピアースはこれまでで最も儚く、虐げられたような歌声で人間の感情を捉えている。「痛みと向き合って/それをどこかへ追いやらないといけないんだ」と本作の最も傑出した楽曲の一つである“The Morning After”でジェイソン・ピアースは歌っている。彼が歌う痛みとは裏腹に、『アンド・ナッシング・ハート』はこの不確かな時代において、人間の回復する能力や乗り越えるべき恐怖に向き合う方法に焦点を当てた、最も暗い場所に希望を見出すようなアルバムでもある。

39位 サッカー・マミー『クリーン』

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サッカー・マミーとは、世話の焼ける母親とは程遠い、ソフィー・アリソンという名の21歳のシンガー・ソングライターのことだ。バンドキャンプに投稿した、寝室でレコーディングした楽曲で話題となり、スロウダイヴやリズ・フェアとのツアーを経て彼女がリリースしたデビュー・アルバムが『クリーン』である。ナッシュヴィル出身のソフィー・アリソンは通っていたニューヨーク大学を休学して、プロデューサーのゲイブ・ワックスと共に、暴力的なまでに正直な自己反省や、インスタグラム時代のアイデンティティの形成、10代の恋愛における不可思議さや残酷さを歌った、か弱くも恐れ知らずな10曲のギター・ソングを完成させている。彼女の悩ましいヴォーカルや、遊び心溢れるディストーションのアウトロ、そして歌詞(「全部あなたのせいにすることにした(“Flaw”)」)に、聴く者は殴られたような衝撃を受けるだろう。本作のリリース後、彼女は初期の楽曲をリメイクした“Henry”とブルース・スプリングスティーンをカヴァーした“I’m On Fire”をリリースしている。もっと聴きたい。

38位 マック・ミラー『スイミング』

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マック・ミラーがオーヴァードーズによって不慮の死を遂げる1ヶ月前にリリースされた、通算5作目となるこの輝かしい『スイミング』は、彼に名声を与えることとなった「フラット・ラップ」と呼ばれる学生向きのヒップホップからはかけ離れたものであるが、決して悪い意味ではない。豊穣な楽器陣のサウンドや弾けるビートに乗せて、マック・ミラーは公衆の目に晒された自身の人生や、自身が抱える痛みを率直に歌っている。心に葛藤を抱えながらも、未来を楽観視する心情をピアノや透き通るようなストリングスに乗せて歌う、天に昇るような“Come Back to Earth”から、自身の依存症と向き合う、ファンクに彩られた“What’s The Use?” に至るまで、マック・ミラーは多ジャンルや煌めくようなプロダクションを巧みに飛び交い、ここ数年で最高の出来ともアルバムを完成させた。マック・ミラーにはやるべきことがたくさん残されていたと、心を引き裂かれるような形で思い起こさせる。

37位 パーセルズ『パーセルズ』

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ダフト・パンクも認めた、オーストラリア出身で現在はベルリンを拠点としているダンスロック集団であるパーセルズは、太陽やカクテル、ミラーボール、そして歓楽に満ちた人生のための夢見心地な楽曲を作り上げている。抜け目がなく生意気な5人のサーファー集団は、遊び心がありながらも考え抜かれたプールサイド・ポップのコレクションを完成させ、今年の最も後世に残るであろうデビュー・アルバムの1枚を堂々と届けてみせた。70年代や80年代の音楽を初め、彼らのロボットの友人による『ランダム・アクセス・メモリーズ』の要素が存分に詰まった本作は、それでいて新鮮で生き生きとした、人間らしさに溢れるものである。

36位 ジャネール・モネイ『ダーティ・ コンピューター』

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ジャネール・モネイはこれまで、ポップにおけるアウトサイダーだった。これまでの複雑ながらも多くのことを成し遂げてきたキャリアにあったテーマは形を変え、新たなモードで正反対に舵を切っている。待った甲斐のあった『ダーティ・ コンピューター』は、彼女のメインストリームでの認知をさらに広げるものとなった。グラミー賞の最優秀アルバム賞にノミネートされたことを知らされた時の彼女の涙ぐむ表情が、すべてを物語っていると言えよう。難産だった『ダーティ・ コンピューター』に収録された“Django Jane”の中で、ジャネール・モネイは主要な音楽賞で黒人アーティストたちが迫害されてきた歴史に言及している。「グラミーは家族で引き継がれていく」というフレーズは、自身のキャリアにおける野心を表しているのかもしれない。政治的でありながらも楽しさに溢れた『ダーティ・ コンピューター』は、壊れたハード・ドライヴと、それと向き合っていくことがテーマとなっている。 “Screwed”で歌われる目前に迫った悲運に繋がる、快楽的な「スイミングプールでのセックス(“Crazy, Classic, Life”)」から、“PYNK”のミュージック・ビデオに登場する女性器をイメージしたコスチューム、“Make Me Feel”での気ままな祝福に至るまで、ジャネール・モネイは一度として足を踏み違えていない。

35位 ターンスタイル『タイム・アンド・スペース』

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今後、こんなロック・アルバムを聴くことはないだろう。楽しさを最優先事項に置くことに何の躊躇いも持たないことで知られる、ヘヴィ級ハードコア・バンドのターンスタイルは、『タイム・アンド・スペース』でそのマントラをさらなる高みへと導いている。“Disco”でのアフロスウィングのビートや、激しいヘヴィなリフが響く“Real Thing”、ミートローフを彷彿とさせるピアノ・サウンドの“High Pressure”、“Time and Space”でのベルやホイッスルのサウンドをもって、ターンスタイルはハードコアをこれまでにない新たな境地へといざなうことに成功している。

34位 カニエ・ウェスト『イェ』

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カニエ・ウェストのファンにとっては奇妙な1年となった。カニエ・ウェストは今年、研究すべき供給過多になるほどのプロデュース・アルバムをリリースしてくれた(そのうちのベストは、このリストの上位にランクインしている)。その一方で、ホワイトハウスを訪問して物議を醸すことにもなっている。そんなアルバム群の中でも、カニエ・ウェスト自身によるこのアルバムはその大部分を体現しているものになっていると言えよう。『イェ』は、甲乙つけがたい、急いでまとめられたような、短くて(収録曲は7曲)、いくつかの問題のあるリリック(“I Thought About Killing You”のそれは特に顕著だ)が含まれたアルバムである。未来に向けたアジェンダを提示してくれることを期待してしまうカニエ・ウェストというアーティストにとって、『イェ』は一見すると不発弾のようにも思えてしまう。しかしながら、もう一度きちんと聴いてみれば、実験的な要素も含まれているし、奇妙で短いこのアルバムは、カニエ・ウェストが今も衰えていないということを示している。彼はアルバムの中で、自分にできる唯一の方法で自身のメンタルヘルスと向き合っている。「俺は君の胸が大好きなんだ/同時に二つのことに集中できることを証明してくれるから(“All Mine”)」というリリックがその一例だ。カニエ、その調子で伝えていってくれ。

33位 イヤーズ&イヤーズ『パロ・サント』

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『パロ・サント』のコンセプトは、ジュディ・デンチがナレーションを務めた艶やかな映像の中で前もって提示されていた。そこで描かれていたのは、ロボットの支配者のために人間たちがキャバレーのステージに出演するというディストピアの世界で、それはセカンド・アルバムに向けた横柄なまでのイヤーズ&イヤーズの野心を感じさせるものだった。スペイン語で「聖なる木」を意味するタイトルが付けられたこの『パロ・サント』は、宗教(“Preacher”や“Hallelujah”)とセックスという二つがテーマになっている。ポップ・ミュージックの福音伝道者であるオリー・アレクサンダーは、(ストレートを自覚する相手との情事に思う心の取っ掛かりについて歌った、感情を吐露するような異性的な服装を好む人々のバンガーである)“Sanctify”などの楽曲を通じて自らの魂を浄化させ、苦い過去の恋人たちに向けた歌詞をこのバーン・ブックに綴っている。そしてそれらが、弾むようなハウスのビートや、ネプチューンズがブリトニーに提供した2000年代初頭のR&Bのような装飾でコーティングされている。オリー・アレクサンダーがこの世代における最も重要なポップスターの一人であることを改めて証明することとなった『パロ・サント』は、自らの数珠を投げ捨て、近くのダンスフロアに駆け込みたくなるような作品だ。片膝を曲げて彼に敬服することにしよう。

32位 J・コール『KOD』

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ジョー・コールが『KOD』をリリースした時、彼は頭文字を使えば同時に3つの意味を持たせることができることを証明した。『キッズ・オン・ドラッグス』に『キング・オーバードーズド』、そして『キル・アワ・ディーモンズ』。アルバムのタイトルが提示しているように、ラップ界の皇族は、これまでで最も正直な一枚となっているこの通算5作目のアルバムで、依存症や薬物の文化を雄弁に攻撃している。インタールードの“Once An Addict”で彼は自身の母親が抱えるアルコール依存症について歌い、“KOD”では自身の幼少期や、その過程で周囲を囲んでいた薬物について率直にラップにしている。J・コールによって(ジャズやトラップ、サウンドクラウド・ラップを横断する)焼け付くようなプロダクションに乗せて届けられた『KOD』は、大胆で光り輝くようなアルバムである。

31位 アメン・デューンズ『フリーダム』

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最先端を行く音楽ファンの間で知る人ぞ知るヒットとなり、じわじわと成功を収めていったアメン・デューンズのアルバム『フリーダム』は、この順位に入るにふさわしい。このアルバムはまさにそうした繊細さを扱った作品で、ゆっくりと築き上げられ、ゆっくりと燃えていくような独特の雰囲気を持つ霞みがかったインディ・ロックがデーモン・マクマホンの優しい歌声に乗せて提供されている。犯罪歴があり、偏屈者としても知られる伝説的なサーファーのミキ・ドラにちなんで名付けられ、彼の人生をテーマにした楽曲“Miki Dora”は、デーモン・マクマホンのアプローチを最も凝縮して表している楽曲だと言えよう。『フリーダム』というアルバムは、人生における複雑で輝かしくない部分を美しいものへと変貌させる能力があることを証明している。

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