20位 グリーン・デイ “Basket Case”


グリーン・デイはアルバム『ドゥーキー』によって、たとえシラフの時でさえ下らない冗談に笑ってしまうような、「葉っぱ」好きの愛すべきヤツらとして認識されたが、スリー・コードが小刻みに揺れるこの曲には、それ以上の何かが潜んでいる。ビリー・ジョー・アームストロングは、恍惚とした狂気の下に存在する不安と恐怖を歌っており、そしてアウトサイダーの抱くこの感覚は、グリーン・デイがこの後、彼らのキャリアの中で探求していくものとなるのである。


19位 アッシュ “Girl From Mars”


幼稚園から出てきたかのように若くフレッシュな、北アイルランド出身のトリオ、アッシュは、火星人との失われた恋を歌ったこの曲で大躍進を遂げた。アッシュはアルバム『1977』で、SFへの愛と、息もつかせぬグランジ・ポップを融合させ、最高に活き活きとした姿を見せており、1990年半ばの、パンク・ブームの再来に親しみやすい側面を与えてくれたことが、彼らの功績であろう。ブリットポップ旋風の中では、アッシュは見過ごされることが多いが、“Girl From Mars”は、ティム・ウィーラーとメンバーらがブリットポップの名曲に匹敵するほどのサビを作れるということを証明している。


18位 ブラー “Song 2”


アメリカの音楽の影響を5年ほど軽蔑し続け、その間グランジ・ブームをものともせずブリットポップを生み出したブラーは、1997年に、非常にアメリカ的な、例えるならEdinburghという地名をエディンバラと正しく発音できないくらいアメリカ的なアルバムを世に送り出し、世間を当惑させた。“Song 2”はいろいろな意味において、ブラーの中で最も馬鹿馬鹿しい、2分間「ウーフー」と圧倒的なリフが敷き詰められただけの曲だと思われたが、古いことわざにあるように、賢い人でなければこんなにも頭の悪そうな曲は作れないはずで、その意味において“Song 2”はこの曲の立ち位置をよくわかっていたのである。


17位 ウィーザー “Buddy Holly”


もしも、アメリカの国民的コメディー・ドラマ「ハッピーデイズ」を舞台にしたミュージック・ビデオがなかったら、この曲はここまで輝かしく飛躍的なスマッシュ・ヒットになっていただろうか? リヴァース・クオモは、ポップスとグランジを混ぜ合せる時はさりげなさが大切だと考え、厚みのある音をかき鳴らすギターに、馬鹿っぽいコーラスを合わせたのだ。プロデューサーを務めたザ・カーズのリック・オケイセックは、この曲がヒットすると分かっていた。サングラスを決して外さない男は、信頼できる男だ。


16位 エミネム “My Name Is”


衝撃的な出来事だった(いまだにそうだ)が、事実、エミネムのこの曲のオープニングをもって、本名であるマーシャル・マザーズは一度戦いの場から姿を消してしまった。この曲も基本的にはとても愉快だが(にぎやかなミュージック・ビデオがそのことを一層強調していた)、エミネム自身が複雑さを持つラッパーであるように、表の皮をめくれば、実際にはかなり不穏なテーマを扱ったものであることがわかる。エミネムという企業は一筋縄ではいかないものであり、この曲はそのほんの始まりに過ぎなかったのである。


15位 レディオヘッド “Street Spirit (Fade Out)”


アルバム『ザ・ベンズ』の最後のトラックである“Street Spirit (Fade Out)”は、この記念碑的なアルバムの結びとしてふさわしいと同時に、心もとなくもある。これまでの楽曲の深層心理が露わになるように、バンドがマイナー・コードで静かなる反乱を企てているのに乗せて、トム・ヨークが「砕けたタマゴ……死んだ鳥(cracked eggs…dead birds)」とミステリアスに唱えている。トム・ヨークがこの曲を「最も悲しい歌」のひとつに挙げているのも、不思議ではない。


14位 スウェード “Animal Nitrate”


この曲は当時、音楽メディアの時代の寵児であった、スウェードのデビュー・アルバムからの通算3枚目のシングルで、バンドについての嘘を吹き込む人々を一蹴している。“Animal Nitrate”は、バーナード・バトラーによる、当時の彼らにとっての最高のコーラスと、抜きん出たギターの才能を惜しみなく披露しており、ブリット・アウォーズの画期的なパフォーマンスではブレット・アンダーソンがひどく骨張った尻を叩いてみせた。


13位 プライマル・スクリーム “Loaded”


「やりたいことができる自由が欲しいんだ/それから金持ちになりたい(We wanna be free to do what we wanna do/ And we wanna get loaded)」、カルト的人気を誇る映画『ワイルド・エンジェル』から、ピーター・フォンダの声をサンプリングしたのは、単にかっこいいキャッチフレーズだったからではない。この言葉は、プライマル・スクリームにとって実質的な活動理念の役目を果たしていたからだ。彼らは自由の喜びやハチャメチャな楽しさを信奉し、アシッド・ハウスとレイヴをメインストリームの関心事へと変えていく。そしていつの間にか、このヴォーカルはほとんど乗っていない、とりとめのない7分の曲が、彼らの作品の中で最も愛された曲の1つになっていた。


12位 マドンナ “Vogue”


マドンナは、人気の絶頂で1990年代という新しい時代に一歩を踏み出した。この曲は元々、アルバム『ライク・ア・プレイヤー』からのシングル“Keep It Together”のB面用に、新しくタッグを組むことになったシェップ・ペティボーンと共にレコーディングしたものである。しかし、“Vogue”に見られる、古き良きハリウッドを参照している歌詞や、ハウス調のピアノの音色、サルソウル・オーケストラの“Ooh, I Love It (Love Break)”の大胆なサンプリングが溶け合う様は、単なるB面曲として捨ておくには、あまりにもったいないものだった。


11位 ザ・ヴァーヴ “Bittersweet Symphony”


ザ・ヴァーヴが何度も繰り返した解散劇のうちの一度目は、バンド名の先頭に新しく「ザ」を加えて華々しく再結成したものでったが、最初のストリングスがストーンズの元マネージャー兼プロデューサーであるアラン・クレインを誘い出すことになった。アラン・クレインは、アンドリュー・ルーグ・オールダムがカヴァーしたザ・ローリング・ストーンズの“The Last Time”の版権を持っており、音源が無断でサンプリングされたとしてリチャード・アシュクロフトと仲間たちを訴え、印税の支払いを迫った。それもこれだけの名曲だからだろう。違うだろうか?


10位 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン “Killing In The Name”


2009年のクリスマス・チャートで、「Xファクター」優勝者ジョー・マケルダリーが1位を獲得することを“Killing In The Name”によって阻止しようとするキャンペーンは、ちょうどレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンがうんざりするようなアメリカの階級社会に対してあげた雄叫びが、どれだけ熱く燃えるものであったかを改めて思い出す良い機会となった。その炎は、ザック・デ・ラ・ロッチャが人種差別やクー・クラックス・クランに関する韻を踏みながらアメリカの警察に繰り出した痛烈な批判という油を注がれ、トム・モレロのトレード・マークである白熱したリフによってここまで大きく育ったのだ。


9位 マッカルモント&バトラー “Yes”


バーナード・バトラーはどこまで欲張りなのだろうか。スウェード時代の曲でランキングの上位を飾るだけでは飽き足らず、デヴィッド・マッカルモントと共に魔法のようなポップスを作り出していたのである。そして、デビュー・アルバムのリリース前にこのペアも解消してしまういつも通りの展開に陥るのだが、だからといって、みんなが拳を突き上げて一緒に歌う“Yes”の功績を汚すことにはならないし、これは彼らの作品の中では最高の曲として最も売れたシングルであることに異論をはさむ余地はない。


8位 ダフト・パンク “Da Funk”


“Da Funk”は彗星の如く現れた。重厚さに脈打つような、痛烈なハウス・ポップである。しかし、貴重なインタヴューの中でダフト・パンクが明かしたところによると、この曲は、ハードコアなヒップ・ポップ・チューンを作ろうと挑戦した(そして失敗した)後に書かれたという。代わりに2人は当時のお気に入りの1曲(ウォーレン・GのGファンクの名曲“Regulate”)にジョルジオ・モロダー的なシンセを盛り込むというアレンジで、この曲の制作にリベンジしたのだった。


7位 ビースティ・ボーイズ “Sabotage”


ビースティ・ボーイズはパンク・グループとして始まったので、彼らが本来の音楽的な影響の元へと立ち返るのは自然なことだ。“Sabotage”は、有機的なヒップポップのビートにオルタナティヴ的な胴体が組み合わされ、見事な1曲に仕上がっている。そして忘れてはいけないのが、駆け巡るギターと、起動力のあるビートの後ろに潜むユーモアと皮肉を強調してくれた、スパイク・ジョーンズの素晴らしい映像が、この曲とずっとリンクしているということだ。


6位 オアシス “Supersonic”


“Live Forever”と双子のような関係の曲として、ノエル・ギャラガーによる冷徹な歌詞と、「俺らの弟(our kid)」リアムのいつもの反抗的な歌い方、ジョージ・ハリスンの“My Sweet Lord”をなぞったギターのリフが合わさって、オアシスのデビュー作“Supersonic”が出来上がった。「I need to be myself/ I can’t be no-one else,(俺は俺自身でいる必要がある/他の誰かになんかなれない)」と母音を伸ばしてリアム・ギャラガーが歌うと、ギャラガー兄弟の、何とも自信に満ちた宣言が辺りから漂ってくるようだ。


5位 マニック・ストリート・プリーチャーズ “Motorcycle Emptiness”


アルバム『ジェネレーション・テロリスト』を酷評する人はいるが、まともな感覚の持ち主ならは“Motorcycle Emptiness”を悪く言う人はいないはずだ。この曲はマニック・ストリート・プリーチャーズが手にした華麗なる頂点の一つだと言えるもっともな理由を持っている。ジェームス・ディーン・ブラッドフィールドによる最高のフレットさばきに支えられ、リッチー・ジェームス・エドワーズのいつもながらに素晴らしい作詞の才能により完成したこの曲は、今日でも魂を揺さぶるエレジーとして、その光を失うことなく輝き続けている。


4位 レディオヘッド “Paranoid Android”


レディオヘッドが自らこそが新ピンク ・フロイドであることを明かし、“Anyone Can Play Guitar”からのファンたちを一蹴した1曲である。1995年リリースの『ザ・ベンズ』で確かな実績を残した後、レディオヘッドは“Paranoid Android”という性急な1曲と共に戻ってきた。“Bohemian Rhapsody”のような壮大なこの曲で、ジョニー・グリーンウッドは面白いギターの在り方を試したり、トム・ヨークは「グッチ好きの子豚ちゃん」をあざ笑ったりしている。しかしそれが支持を受けて、今やレディオヘッドはこの宇宙を支配している。


3位 スウェード “Stay Together”


ヴァレンタイン・デイにリリースされたブレット・アンダーソンとバーナード・バトラーが共に活動していたスウェード最後の曲は、9分間のめくるめくロマンティックなドラマに仕立てられていた。ブレット・アンダーソンの歌詞は、ある薬物中毒者が薬と愛の間であがく様子を語っており、バーナード・バトラーのフレットさばきは威勢よく大胆で、神々しささえ秘めている。楽曲の壮大な世界観は、バンドの人間関係に訪れようとしている変化をまったく暗示してはくれなかった。「Stay Together?」、彼らが一緒であると言わんばかりに…。


2位 ニルヴァーナ “Smells Like Teen Spirit”


あの荒々しい4コードのリフは、ゴージャスな髪型へのこだわりを持ちすぎるヘア・メタルへの弔いの鐘であり、スパンデックス・スーツの終焉であり、小綺麗な1980年代ロックのための葬送行進曲だ。カート・コバーンはそういったことにあまり関心がなかったようで、この曲とボストンの“More Than A Feeling(宇宙の彼方へ)”に通じるものがあることを認めているのだが、両者の違いの決定打となったのは、カート・コバーンが嘲りと苦しみをこの新たな虚無主義の賛美歌に込めて作り上げた、怒りを露わにするリフとヴォーカルに他ならない。パンクに間に合わなかった世代の若者たちは、自分たちなりの雄叫びを手に入れた。


1位 パルプ “Common People”


パルプは、世の中のちょっと変なことを茶目っ気たっぷりに落とし込み、ブリットポップという沼地の上に燦然と輝くこの曲を作り上げた。ジャーヴィス・コッカーは、“Razzmatazz”や“Lipgloss”で、半笑いとキッチュな味付けをもって自身のルーツを批判したが、“Common People”は階級格差の観察においては、至って真剣となスタンスをとっている。“Common People”はジャーヴィス・コッカーの実体験に基づいたもので、階級から自由になり、その結果、我々の多くにとってのアンセムとなったのだ。

ザ・ヴァーヴとしての来日からは8年ぶり、ソロでの来日としては16年ぶりに来日公演を行うリチャード・アシュクロフト、来日公演の詳細は以下の通り。

NME JAPAN presents リチャード・アシュクロフト ジャパン・ツアー2016

大阪
10月4日(火) ZEPP NAMBA
OPEN 18:00/START 19:00
TICKET:1Fスタンディング¥8,500、2F指定席¥9,500(税込・1ドリンク代別)

東京
10月6日(木) ZEPP TOKYO
OPEN 18:00/START 19:00
TICKET:1Fスタンディング¥8,500、2F指定席¥9,500(税込・1ドリンク代別)

10月7日(金) ZEPP TOKYO
OPEN 18:00/START 19:00
TICKET:1Fスタンディング¥8,500、2F指定席¥9,500(税込・1ドリンク代別)

公演の公式サイトはこちらから。

http://ashcroft-japantour.com

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