2023年、音楽ファンが物足りなさを感じる瞬間は一瞬たりともなかった。至る所で、レコードは1年の間に感じられた痛み、傷、愛、喜び、そしてその間のすべてを体現することになった。おそらくそれはスフィアン・スティーヴンスの『ジャヴェリン』やデペッシュ・モードの『メメント・モリ』の喪失感、ミリタリー・ガンの『ライフ・アンダー・ザ・ガン』やガール・ギャングの『スパンキー!』の無謀とも言える奔放さ、アマレの『ファウンテン・ベイビー』の探究心溢れる実験性などになるのだろう。『NME』のグローバル・チームが選んだ50枚のアルバムはあらゆる人間の体験を体現し、大切に持ち続けていく価値のあるものだ。

50位 リル・ヨッティ『レッツ・スタート・ヒア』



2023年で最も意見が割れたレコードといったらどれだと思う? ラップ界のスーパースターは『レッツ・スタート・ヒア』でガラッと一変して、サイケ・ロックを取り入れて生まれ変わることになり、これに敵うのはアンドレ3000によるフルートを主体とした冒険作ぐらいだろう。しかし、リル・ヨッティはその底なし沼にハマることでこの魅惑的な旅路の先頭に立ってみせた。

49位 デペッシュ・モード『メメント・モリ』



今現在のミレニアムのベスト・アルバムとも言える本作は結成メンバーであるアンディ・フレッチャーの悲劇的な死の前にすでに取り組まれていたが、この漆黒の死への瞑想とも言える作品は悲劇的なニュースの文脈もあってよりその深みを増している。「必ず死ぬことを忘れるな」という意味のラテン語のタイトルを通して、スタジアム・サイズのエレクトロのアンセムが収録された本作はカタルシスとクリエイティヴな高揚感を同じくらい与えてくれる。

48位 ガール・ギャング『スパンキー!』



ガール・ギャングのデビュー・アルバムを聴いていると、汗が壁を滴り落ちる地下のライヴへのチケットを手に入れたようだ。エネルギッシュで若々しい闘争心とこぼれんばかりの気合い、素晴らしい冗談を挙げるまでもない多くの個性、インドネシアのパンク・トリオは恐れることなくライオット・ガールからの影響を受けつつ、死ぬほどの時間をそこにかけてきたのだ。

47位 アイヴ『アイヴ・アイヴ』



2022年にK-POPの王座を争う存在として登場したアイヴは4月にリリースされたデビュー・アルバム『アイヴ・アイヴ』でその卓越性を確固たるものにしてみせた。“Kitsch”の向こう見ずなポップから“Heroine”のやわらかな復活力、“Not Your Girl”のアップビートな激しさまで、長所を全方向で発揮して、スリリングな歩みを繰り広げている。新鮮なアイデアと完璧なエネルギーで最初から最後まで輝き続け、彼女たちの話題性を正当化してみせた。

46位 カロルG『マニャナ・セラ・ボニート』



コロンビア人シンガーのカロルGはリリース時に全米アルバム・チャートで1位を獲得した通算4作目のアルバムでも歴史を作る人物として道を切り拓き続けている。ロメオ・サントス、シャキーラ、ショーン・ポールといったレジェンドを迎えて大きくスウィングしながら、時の試練にも耐え得る重量級のレゲトン・アルバムを完成させている。

45位 オリヴィア・ディーン『メッシー』



希望と期待に満ちたオリヴィア・ディーンの荘厳なデビュー・アルバムは2000年代のネオ・ソウルに影響を受けた初期の音源のサウンドを新たに爽快感のあるものに再構築してみせた。『メッシー』はオリヴィア・ディーンの家族の歴史と恋愛上の失敗に言及しながら、率直な歌詞だけでなく、リズムと音色のパレットにおいてもクリエイティヴ面での再活性化に繋がった。階段を駆け上がるスターがより大胆で勇敢な自分自身へと向かう姿を見ているようだ。

44位 CMAT『クレイジーマッド、フォー・ミー』



CMATはカントリー・バラードのようでもあり、友人との無秩序な声のやりとりのようにも聴こえるそんな曲を作る不思議な才能の持ち主だ。「アブストラクトな失恋アルバム」と評されたアイルランド人アーティストのセカンド・アルバムは、ポップ・カルチャーへのくだらない言及にせよ、「Good enough to know you / Was all I wished to be(あなたと知り合えただけで十分ということだけを望んでいる)」という胸をえぐる歌詞にせよ、傷心の痛みと否定を美しく衝撃的でありながら完全に奇抜な形で描いてみせる。

43位 ザ・ローリング・ストーンズ『ハックニー・ダイアモンズ』



61年間の活動、24枚のアルバム、メンバーの死(安らかに、チャーリー・ワッツ)を経て、世界最高のロックンロール・バンドがその旅路に終止符を打つと考えても致し方ないだろう。もちろん、それは間違いなのだけれど。長い期間を経てのザ・ローリング・ストーンズの新作はイギー・ポップやオジー・オズボーンの大胆な作品を引き出したプロデューサーのアンドリュー・ワットの下に到着することとなり、70年代以来のベスト・チューンを送り出すことになった。ポール・マッカートニー、レディー・ガガ、スティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョンのゲスト参加も悪くない。

42位 ギース『3Dカントリー』



ブルックリン出身の5人組によるセカンド・アルバムに過ぎないが、キャリアのこの段階にあるほとんどのバンドよりも広がりのあるサウンドを実現している。圧倒的な楽器群とキャメロン・ウィンターの半ばうめいているようなヴォーカルによって『3Dカントリー』は仰々しいプログレのような大作でありながら、全編、混沌に満ちている。

41位 ベネフィッツ『ネイルズ』



「英国を再び灰色にする(Make Britain Grey Again)」という保守党のミッションが展開される中で、何ができるのか? パンクが役に立たず、答えがない中で残されているのはノイズと鬱憤、一抹の共感だけだ。ティーズサイド出身のベネフィッツによる堂々たるデビュー作は誰も立ち上がらない中で自分自身のために立ち上がるモニュメントのようだ。キングスレイ・ホールは“Flag”で次のように叫んでいる。「Privilege won’t save you / Eton won’t save you / People who speak Latin will not save you(特権はあなたを救わない/イートン校はあなたを救わない/ラテン語を喋る奴はあなたを救わない)」

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