5位 タイラー・ザ・クリエイター『コール・ミー・イフ・ユー・ゲット・ロスト』
一言で言い表せば:真にオリジナルな存在がキャリアでも最も技術的な面で素晴らしいパフォーマンスを披露している。
タイラー・ザ・クリエイターの通算6作目となるアルバムで最も決定的な瞬間は“Lumberjack”だろう。この曲はネタありきの自身のキャラクターを踏襲しながら同時にシリアスに受け止められなければならないというタイラー・ザ・クリエイターが10年間取り組んできたミッションを紐解くものとなっている。「みんな俺を笑って、聴く耳を持たなかった」と彼はラップしており、そのやりとりは魅力的で誇らしげだ。そのサウンドは経験を積んだ手の付けられないヒーローが振り返ってナレーションする映画のエンディングのようだ。予測不能でありながら見事な16曲が収録されたアルバムでタイラー・ザ・クリエイターは今回も一周回った視点を届け、祝福されることを求めている。もちろん、我々はそれに従うことになった。
鍵となる楽曲:“Lumberjack”
『NME』のレヴュー:「このアルバムはタイラー・ザ・クリエイターの様々なサウンドを網羅した集大成であり、成長とは必ずしも直線的ではなく、アーティストは多くのものになり得ることを示している」
4位 セルフ・エスティーム『プライオリタイズ・プレジャー』
一言で言い表せば:ポップなバンガーでありながら極めて知的な名言も兼ね備えている。
資本主義ではよくあることだが、「セルフケア」という概念も背広組にあっという間に取り込まれて、肌の角質を落とす高価な顔パックや薬剤を売りつける方法になってしまったりもする。『プライオリタイズ・プレジャー』というタイトルからして一見空虚なスローガンのように思えるが、レベッカ・ルーシー・テイラーはそのセカンド・アルバムで自己愛という厄介な現実を深く掘り下げて、ひねくれたポップ・ミュージックを使って、受け入れられない世界で自分を受け入れることの意味を探求している。
鍵となる楽曲:“I Do This All The Time”
『NME』のレヴュー:「自信に満ちて堂々とした『プライオリタイズ・プレジャー』は見過ごせないほどダークで笑えるウィットに満ちている」
3位 ウルフ・アリス『ブルー・ウィークエンド』
一言で言い表せば:イギリスにおける最高のバンドが野心的でシネマティックなサード・アルバムで成層圏へと突入した。
2017年発表の『ヴィジョンズ・オブ・ア・ライフ』に続く待望の『ブルー・ウィークエンド』はローラーコースターのようだ。40分の中に2日間で展開された出来事が詰め込まれている。“The Beach”における友人との喧嘩、“Delicious Things”における見知らぬ人との浮気、“Play The Greatest Hits”におけるハウス・パーティーでキッチンをめちゃくちゃにすること、“No Hard Feeling”におけるバスタブで元彼について泣くことなど、それを通してバンドはこれまで以上に大胆でワイドスクリーンの似合うサウンドに達し、ライバルへのハードルをまた一段引き上げてみせた。
鍵となる楽曲:“Delicious Things”
『NME』のレヴュー:「『ブルー・ウィークエンド』はイギリスの音楽界の頂点に位置する彼らの地位をさらに強固なものにする鳥肌ものの傑作である」
2位 リトル・シムズ『サムタイムズ・アイ・マイト・ビー・イントロヴァート』
一言で言い表せば:止められない才能による壮大なストーリーテリング。
オーケストラが展開する“Introvert”の冒頭からリトル・シムズが本気であることは明らかだ。グライムとトラップのビート、金色に輝くホーン、映画レベルの野心が複雑に絡み合っている。祝祭的な“Woman”から“I Love You, I Hate You”における辛辣さ(「あなたは精子提供者、それとも父親?」)まで、『サムタイムズ・アイ・マイト・ビー・イントロヴァート』は愛、憎しみ、制度的人種差別、長く離れていた痛みといった重いトピックを取り上げ、身近に引き寄せて、イギリス最高のラッパーの核心に切り込む豊穣な旅へと連れて行ってくれる。
鍵となる楽曲:“Woman”
『NME』のレヴュー:「時代を超えるプロジェクトであり、リトル・シムズをUKで最も最高のアーティストの一人として確固たるものにする作品だ」
1位 サム・フェンダー『セヴンティーン・ゴーイング・アンダー』
一言で言い表せば:ジョーディーの英雄による心に響くセカンド・アルバムはイギリスのギター界における地位を固めることになった。
ここ数ヶ月の間にサム・フェンダーのライヴを観たことがある人は、ある一つの曲の、ある一つのフレーズが背筋を震わせ、会場を一つにしたことを知っているはずだ。「怖くて彼を殴ることができなかった」とサム・フェンダーは“Seventeen Going Under”でいじめについて歌っている。「今ならすぐにでも殴るだろう」私たちの多くは日々のなかで口に出さない軋轢や後悔を抱えていて、それは沸騰するまで長年にわたって煮詰められることになる。サム・フェンダーの目覚ましいセカンド・アルバム『セヴンティーン・ゴーイング・アンダー』はそうした侮辱や失恋の感情を認識して声に出すことで、破滅的な方向へと向かう前に食い止めようとする大胆で賢明な一歩を踏み出している。
パンデミックの早い段階で国民保険サービスに隔離するように命じられたサム・フェンダーは強制的な自宅での時間を若い頃の自分を振り返り、その頃に受けた痛みやあざを数えることに使っている。彼は哀れみを拒否して、代わりによりよい友人、兄弟、恋人になるだけでなく、こうした試練の時もよりやさしくなれる存在になろうと生まれ変わるという考え方を受け入れている。“Spit Of You”では悲しみを、“Mantra”ではメンタル・ヘルスの問題を取り上げ、多くの人が悩み苦しむ問題への名言を探し当てている。
ヒーローであるブルース・スプリングスティーンへの憧れは“The Dying Light”などで残っているものの、“Last To Make It Home”ではザ・ウォー・オン・ドラッグス、“Get You Down”ではザ・キラーズといったアメリカーナの領域にも踏み出したことで、サム・フェンダーはその最良の部分を捉えて立ち上がることのできるサウンドへと強靭化している。タイトル・トラックが何よりも伝えているのは、これこそサム・フェンダーができるようになりたいと思っていたものであるということだ。
鍵となる楽曲:“Seventeen Going Under”
『NME』のレヴュー:「生と死、愛と失恋、怒りと後悔に触れるサックス満載のロックによる壮大な作品で、サム・フェンダーは知的で重厚なアルバムにするべく現実を深く掘り下げている。おそらく多くの人々が彼の語る確執や人間関係を自分のものとして認識できるだろう」
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