これを読んでいるということは自分のことを褒めてあげてほしい。あなたは音楽への信念を12月まで真っ当してきたのだから。ふう。今年リリースされた素晴らしいアルバムに目を向ければ、この12ヶ月というのは過去を振り返りながら前へと進んできた日々とまとめられるかもしれない。
ラナ・デル・レイは3月に『ケムトレイルズ・オーヴァー・ザ・カントリー・クラブ』、10月に『ブルー・バニスターズ』と伝説を塗り替える作品を1枚のみならず2枚もリリースしたが、10年に及ぶ成功までの道を辿るために昔の未発表音源を掘り起こしている。同様にイギリスのロック・バンドであるアイドルズは昨年の挑戦的な『ウルトラ・モノ』に続いて内省的な『クローラー』をリリースして、苦難へと飛び込むオデッセイを次のように締めくくっている。「いろいろあるけど、人生は美しい」これ以上、2021年らしい言葉があるだろうか?
私たちの第1位のアルバムは、前作で幅広い筆致を見せたアーティストによって非常に極私的な機微で作られたセカンド・アルバムとなっている。アルバムは後悔、過ち、栄光、家族、自己実現についての作品であり、ロックダウンによる内省で未踏の領域に踏み込むことになったアーティストによる意志表明である。
というわけで、私たちは吟味に吟味を重ねて、この1年は理解と思慮に満ちた1年だったということに合意することになった。『NME』の選ぶ2021年のアルバム・オブ・ザ・イヤーに異論があればインターネットで教えてほしい。
50位 ドージャ・キャット『プラネット・ハー』
一言で言い表せば:“Say So”が状況を打破するヒットになったその上にTikTokを制覇したアーティストが見事にキャリアを築いてみせた。
ドージャ・キャットはプロデューサーのドクター・ルークと仕事を続けていることもあって論争の余地を残しているが、彼女の音楽にはそれはほとんど表れていない。シンガーにしてラッパーの素晴らしいサード・アルバムは軽快なR&Bの“I Don’t Do Drugs”から、“Need To Know”や“Get Into It (Yuh)”といったセクシーなジャムまで明るいタッチが特徴となっている。TikTokを圧倒するメロディーと率直な物言いに満ちた『プラネット・ハー』は間違いなく楽しめる惑星となっている。
鍵となる楽曲:“Kiss Me More”
『NME』のレヴュー:「『プラネット・ハー』が気兼ねない夏にぴったりの作品とすれば、そのコーラスはサングリアで酔ったような余韻を残すだろう」
49位 インヘイラー『イット・ウォント・オールウェイズ・ビー・ライク・ディス』
一言で言い表せば:善意と素晴らしい雰囲気に満ち溢れたエネルギッシュなギター・ミュージック。
ギター・ミュージックは死んではいないが、インヘイラーほどそこに命を吹き込み、躍動させ、前進し続けることを心に決めたアーティストはほとんどいないだろう。ダブリン出身の4ピースによる心躍るデビュー作はフロントマンのイライジャ・ヒューソンによるパワフルなヴォーカル(心配しないでほしい。彼は父親のボノの真似をするよりも先に行っている)によって支えられたキャッチーなフックと誠実な歌詞を湛えている。インヘイラーの力強いインディ・ロックはこの希望に満ちた青年たちの明るい未来を既に準備している。
鍵となる楽曲:“It Won’t Always Be Like This”
『NME』のレヴュー:「デビュー作はひっくり返った世界の中でバランスを取ろうとするナーヴァスなエネルギーに満ちている」
48位 ケイシー・マスグレイヴス『スター・クロスト』
一言で言い表せば:カントリー・ポップの女王は5作目で離婚について深く掘り下げている。
2018年発表の絶賛されたケイシー・マスグレイヴスのアルバム『ゴールデン・アワー』は真似できない偉業だったが、離婚を扱った『スター・クロスト』では残酷なまでにその内面を剥き出しにするとはファンも予想していなかっただろう。新しい恋愛の始まりの瞬間から離婚届を書く破局の瞬間まで3幕で構成された本作は胸に迫るバラードからジャズ、多幸感のあるダンス・ポップまで、様々なサウンドに満ちている。多彩かつ感情移入もできるこのアルバムは最終的に生きていくことについての作品となっている。
鍵となる楽曲:“There Is A Light”
『NME』のレヴュー:「作者の率直な筆致で描かれた本作は希望が取り込まれており、力強いリスニング体験になるだろう」
47位 ソー『ナイン』
一言で言い表せば:匿名の集団による99日しか聴けなかった消えてしまったアルバムはさらに興味をそそることになった。
笑いというのはしばしば暗い状況を打破する手段になりうる。ソーの1年で3枚目となるアルバムは“Haha”の歌うような笑い声で幕を開けており、人生の残酷でねじれた不条理を前にして笑いたくなる暗い衝動を活用している。『ナイン』の曲の多くには繰り返される童謡のようなメロディーが用いられているが、その陽気さは誤解を生むことになる。アルバムが進むにつれて、そこは死、悲しみ、残酷さにまつわる絶望的な悲しみが帰る家となっている。
鍵となる楽曲:“Fear”
『NME』のレヴュー:「語られる物語に影響を与えずにはいられないが、『ナイン』で描かれる悲しみにもかかわらず、ソーは曲に楽観性と明るい未来への希望を込めている」
46位 ネイオ『アンド・ゼン・ライフ・ワズ・ビューティフル』
一言で言い表せば:ノッティンガム出身のアーティストによる力強い希望の光。
2018年発表のアルバム『サターン』でグラミー賞とマーキュリー・プライズにノミネートされた後、ネイオは3枚目のアルバムで一歩下がって、花(この場合はひまわり)の匂いを嗅いでいる。エレクトロニック・ミュージックから「オーガニックR&B」と自称するサウンドに移行した『アンド・ゼン・ライフ・ワズ・ビューティフル』で33歳の彼女は成功を求められる強力な要請に打ち勝って、時間をとって人生を掘り下げてもいいのだということを実証している。
鍵となる楽曲:“Antidote”
『NME』のレヴュー:「『アンド・ゼン・ライフ・ワズ・ビューティフル』は真にR&Bに捧げられた作品で、ノスタルジックな雰囲気があるにもかかわらず、ネイオは誰にも似ていないアルバムを作り上げた」
45位 ヤング・サグ『パンク』
一言で言い表せば:トラップの先駆者が独創的な2枚目のアルバムでギターを受け入れた。
ヤング・サグはラップの世界において先駆的でありながら広く浸透した存在だが、このセカンド・アルバムで見せた180度の方向転換には多くの人がなお驚かされるだろう。808と特徴的なシンセを使ったヘヴィなラップからギターとドラムをアコースティックな形で使った『パンク』ではポスト・マローン、ドージャ・キャット、今は亡きマック・ミラーらとのコラボレーションがありながら、メロディックで時にナンセンスな歌詞が光っている。
鍵となる楽曲:“Faces”
『NME』のレヴュー:「『パンク』は彼がこれまでリリースしてきた音楽とは違うものだ。彼はラップの世界を超えるヒット曲を作れることを示してみせたのだ」
44位 ブリーチャーズ『テイク・ザ・サッドネス・アウト・オブ・サタデー・ナイト』
一言で言い表せば:スーパー・プロデューサーであるジャック・アントノフによるブリーチャーズの3作目はトンネルの先に光を見出す。
音楽仲間のラナ・デル・レイやブルース・スプリングスティーンに助けられて、ジャック・アントノフによるブリーチャーズ名義のサード・アルバムは切実な歌詞と豊かなトラックによる切れ味鋭い楽曲のコレクションとなった。“Stop Making This Hurt”や“How Dare You Want More”といったサックスを使った楽曲から“What’d I Do With All This Faith?”の瞑想的な瞬間まで、『テイク・ザ・サッドネス・アウト・オブ・サタデー・ナイト』は最高に楽観的なポップ・アルバムとなっている。
鍵となる楽曲:“Chinatown” feat. ブルース・スプリングスティーン
『NME』のレヴュー:「ブリーチャーズのサードアルバムはこれまでで最も強力な作品となっている。これまででも最もまとまりがあり、最も痛烈なリリックと音楽の瞬間が本作には存在する」
43位 ドライ・クリーニング『ニュー・ロング・レッグ』
一言で言い表せば:日常生活をウィットと辛辣さでドライに切り取った本作は日々の平凡さに万華鏡のような感情を見出す。
『ニュー・ロング・レッグ』でドライ・クリーニングのヴォーカリストであるフローレンス・ショウは冷凍フライドポテト、捨てられた芳香剤、片目を閉じた時に視界の隅に見える自分の鼻に思いを巡らしており、そのすべてを魅惑的なものに仕立て上げている。彼女の饒舌で物憂げな瞑想はバンドの他のメンバーによる巧みなフックに支えられ、私たちが長い間聴いてきた中で最もユニークで完成度の高いデビュー作のひとつになった。
鍵となる楽曲:“Scratchcard Lanyard”
『NME』のレヴュー:「ここ数年UKに台頭してきたポスト・パンク・バンドの喋るような硬質な歌に似ているところはありながらも、遊び心のある題材を取り上げ、自分たちを真剣に捉えない素晴らしい姿勢によって他とは一線を画している。これこそ今のパンク・シーンに求められているものだ」
42位 ヴィンス・ステイプルズ『ヴィンス・ステイプルズ』
一言で言い表せば:ロング・ビーチ出身のヴィンス・ステイプルズとケニー・ビーツはラップ天国と言える組み合わせだ。
『ドンダ』や『サーティファイド・ラヴァー・ボーイ』といった長尺のアルバムが苦手な方にはヴィンス・ステイプルズのセルフタイトル作がいいかもしれない。常に求められている存在であるケニー・ビーツがプロデュースした『ヴィンス・ステイプルズ』はわずか22分でありながら、1秒たりとも無駄なく作られている。危険、死、絶望(彼は“The Shining”で「殺されないで」とため息をつき、「俺たちは野垂れ死ぬか、傷心と共に生きるんだ」と述べている)について語った時に辛辣で、事情に通じているその歌詞はケニー・ビーツによる控え目なアプローチによって前面に押し出されることになり、自身の名前を掲げた作品の彼を気が乗らないにしてもショウのスターとして輝かせることになった。
鍵となる楽曲:“MHM”
『NME』のレヴュー:「『ヴィンス・ステイプルズ』でケニー・ビーツはロング・ビーチ最高のラッパーを手助けしてまたもや注目のアルバムを作らせることになった」
41位 ジョイ・クルックス『スキン』
一言で言い表せば:大人になることについて若い女性が考えた力強い旅路。
「NME 100」にも選ばれた彼女はR&B、現代のソウル、ポップ・ミュージックをかけ合わせて、傑作と言えるデビュー作で大人になることの極私的かつ政治的な不安を掘り下げている。“Unlearn You”のようなエモーショナルな曲ではジョイ・クルックスはこれまでになく繊細で、“19th Floor”では日常生活の音も使われており、このアルバムは日記で告白されているような非常に近い距離感を与えてくれる。
鍵となる楽曲:“Kingdom”
『NME』のレヴュー:「ジョイ・クルックスは自分の過去となりたい自分について歌うことで自身の癒やしの能力を発揮して、その畏怖すべき声で道を案内している。それはクールかつ好奇心に溢れ、勢いに満ちている」
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