Kendrick Lamar, Kendrick Lamar untitled unmastered album, untitled unmastered album, untitled unmastered, aftermath, TDE, Albume,パトカーのランプのような青いライトに照らされ、髪の毛をツンツンにツイストしたケンドリック・ラマーが初めて『untitled unmastered.』の一部をお披露目したのは、2014年12月にアメリカで放送されたスティーヴン・コルベアのテレビ番組だった。このコンプトン出身のラッパーは、レコード会社の重役の白人男性が「俺をたったの10ドル99セントで売った」ことを描写した、名前の付いていないトラックを披露している。この曲はサプライズ・リリースされた4枚目のアルバムに“untitled 03 l 05.28.2013.”として収録されている。その初披露から13ヶ月後の2016年1月に「ザ・トゥナイト・ショウ・スターリング・ジミー・ファロン」に登場したケンドリック・ラマーは、“Untitled 2”という曲で痺れるようなパフォーマンスを見せた。そして、この曲はアルバムの8曲のうち、Gファンク・ジャムの“untitled 08 l 09.06.2014.”と、不機嫌そうなシンセ曲“untitled 02 l 06.23.2014.”の2曲に組み合わされている。

2015年3月にリリースされた傑作『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』の後、ケンドリック・ラマーがこんなにも早くニュー・アルバムを出すと予想していた人はほとんどいないだろう。世間では、この『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』の完璧なクオリティがカニエ・ウェストのアルバム『ザ・ライフ・オブ・パブロ』のリリースを遅らせたとする意見もある。ケンドリック・ラマーが彼のヒーローであるトゥパック・シャクールと出会ったことは、政治的役割に大変革をもたらした。その顕著な例として、クリーヴランド州立大学でポリス・ハラスメントに抗議する学生たちがケンドリック・ラマーの“Alright”を合唱したことや、『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』がテイラー・スウィフトやザ・ウイークエンドよりも多いグラミー賞11部門にノミネートされたことが挙げられる。アメリカの人種差別やケンドリック・ラマーの精神衛生に関する80分間の探索は、聴く者を容易く圧倒してみせた。

『untitled unmastered.』では「ピンプ、ピンプ……万歳!」というフレーズが断続的に用いられており、これが表面上は前作との関連性を示している。しかし、それは正しいのだろうか? カニエ・ウェストの最新アルバム『ザ・ライフ・オブ・パブロ』、そしてドレイクが4月にリリース予定の『ヴューズ・フロム・ザ・シックス』という、2016年リリースの2大ラップ・アルバムに挟まれ、このアルバムはジャズのフィルターを通したヒップホップの8曲すべてで、断固として市民の権利を呼びかけ続けている。しかし、ケンドリック・ラマーはこのアルバムを「未完成のデモ」と呼んでおり、各曲のタイトルには日付が使われ、大半が2013年から2014年にかけて『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』のセッション中にレコーディングされたことを示している。

そのため、このアルバムを34分間のB面のコレクションと見なすのは簡単だろう。しかし、アルバムの主軸となるものは、来たる破滅を暗示し、サンプリングを多用した黙示録のような“untitled 01 l 08.19.2014.”(「少年に触った牧師は逃げ場を求めて走る……谷も山もすべて塵になる」)から、立場を入れ替えて自分を嘆く姿を冷笑するファイナルトラック(「お前の計画はクソじゃない、俺は掘っ立て小屋に住んでるよ、ビッチ」)まで、信仰や物質主義、人種的プロファイリングを通して、滑らかに進行していく。ローファイでとりとめのない“untitled 07 l 2014 – 2016”はわずかに不快だが、アルバムの曲の大半はケンドリック・ラマーが常に現在進行形のアーティストであることを示している。

メッセージはどれも馴染みがあり、密度が高く熟考されているが、決して凝り過ぎていたり、あからさまに激怒していたりはしない。実際に浮かび上がってくるのは、ケンドリック・ラマーの繊細な世界観だ。彼は自分が大物であることを理解しているが、自身の富やエゴを快く思っておらず、信仰や警察による蛮行、そして黒人のアメリカについて、自分の立ち位置を常に考えている。“untitled 06 l 06.30.2014.”に登場するシーロー・グリーンを除けば、このアルバムに大きなサプライズは入っていないのだ。

しかし、もしこれが本当に切れ端のコレクションだとしたら、「ピンプ、ピンプ……万歳!」の喝采に加わるしかないだろう。

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