20160108-211831-0切なげに自身の70年代後半のアート・ロック全盛期を思い返していた2013年の『ザ・ネクスト・デイ』を考えると、永遠の未来主義者であるデヴィッド・ボウイもいよいよ追懐を始めたかのように感じる。しかし、それは間違いだ。デヴィッド・ボウイの69歳の誕生日にリリースされた25枚目のアルバム『★(ブラックスター)』では、宇宙船がぐるりと引き返し、月へと方向転換する。新しいアルバムごとに再構築を続ける壮大な記録は、まだその処女性を失ってはいないのだ。

まず、初めに起こった予想外の出来事は、『ザ・ネクスト・デイ』でもバック・ミュージックを務めたミュージシャンたちの代わりに、多才なサックス奏者であるダニー・マッキャスリン率いるニューヨークのジャズの実力者集団を選んだことだ。しかし、これは『★(ブラックスター)』がジャズ・アルバムだということではなく、その可能性を広げたに過ぎない。映画のサウンドトラックのアレンジのような音、荒々しい息づかいのインダストリアル・ロック、ソウルフルなバラード、軽快なフォーク・ポップ、そして、ヒップホップの要素までが入っている。それらすべてが、この賑やかすぎて途方に暮れるような、それでいて美しいアルバムの中に配合されているのだ。

シングル曲の“Blackstar”は、不吉な優雅さを備え、多様な語り手が交錯し、そしてかすかにオカルトの要素を持っており、あなたが期待すべきことに明快な答えを示してくれる。すなわちそれは、予想外の出来事ということだ。2014年の風変わりな楽曲“Sue (Or In A Season Of Crime)”が根本から作り直された形で再現されたジャズのビッグバンドのメロドラマは、非常に大規模で、ドラムンベース的なリズムが加わり、終盤の不協和音は殺意に満ちた歌詞を反映している。

“Lazarus”は、1976年の映画『地球に落ちて来た男』でデヴィッド・ボウイが演じたホームシックの宇宙人、トーマス・ジェローム・ニュートンの目線で描かれている曲であり、さらに、この宇宙人はこの映画をオフ・ブロードウェイに持ち込んだ新作ミュージカル『Lazarus』でも題材にされている。後期のマッシヴ・アタックを思わせる重厚でひっそりとしたグルーヴに、ズタズタに傷ついた時代遅れの男の悲痛がにじみ出ている。

しかし、このアルバムで最も衝撃的なのは“Girl Loves Me”だ。まるで軍隊が迫って来るかのような不穏なリズムのこの曲では、怠惰かつ攻撃的な歌い方で、「Where the fuck did Monday go?(一体、月曜はどこへ行っちまったんだ?)」とデヴィッド・ボウイがラップしている。プロデューサーのトニー・ヴィスコンティは、『★(ブラックスター)』がケンドリック・ラマーのアルバム『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』から影響を受けたと語っているが、デヴィッド・ボウイがヤング・サグやフューチャーも聴いていたなんてあり得るだろうか?

こうしている間にも、ボウイ学者の諸氏は猛然と『★(ブラックスター)』の暗号を解こうとするだろう。ひょっとしたら、アルバムが古代スカンジナビアの歴史やジェームズ一世時代の戯曲、またはアトランタのトラップを参照しているかもしれないと考えるのだ。丁度いいことに、最後に収録されているのは、晴れやかで軽快な“I Can’t Give Everything Away(すべてを渡すことはできない)”というナンバーだ。言い換えると、もし包括的なコンセプトがあったとしても(そして、それがどのようなものか分かりにくくて、楽曲に異なる要素を与えたとしても)、それは何であるかをデヴィッド・ボウイが言及することはないということだ。だって、それになんの面白味があるというのだ?

『★(ブラックスター)』は昔ながらのデヴィッド・ボウイか? 答えはノーだが、そうする意図があったわけでもない。実際のところ、静止することなく、常に興味を掻き立てるこのアルバムから、我々が確信を持てる数少ないことの1つは、デヴィッド・ボウイが伝統的ロックという概念にアレルギー反応を示していることに他ならない。

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