13277810_832035106929919_584410498_nやったこと、やらなかったこと、そして、とりわけ15年前の功績が取りざたされることの多いバンドであるザ・ストロークスにとって、「フューチャー・プレゼント・パスト(未来、現在、過去)」という言葉は、多くの含みを持つ言葉だ。「過去(パスト)」は、ファンがそこに回帰するように騒ぎ立てているにもかかわらず、常に逃れるためのものだった。「現在(プレゼント)」はそこそこ売れたソロ作や、ノスタルジアに駆られて定期的にフェスに出演することを意味している。そして、そして「未来(フューチャー)」は結局のところ、彼らが常に訊かれながらも、確かな答えをほとんど出すことができていない質問ということになる。つまり、「ザ・ストロークスはニュー・アルバムをリリースするのか?」ということだ。3年ぶりにサプライズで発表した4曲を収録したこのEPでさえそのことに対しては何の保証もしていない。「もし全員の意志が一つになって、その態勢に入ったら」という言葉も、ジュリアン・カサブランカスが喜んでやろうとする限りはということを意味している。

本来の質問はおそらく、「ザ・ストロークスは次のアルバムを『作るべき』なのか?」だ。結局のところ、彼らが契約上リリースしなければならなかったアルバムは2013年発表の『カムダウン・マシン』が最後だった。一切、ライヴで披露することもなく、プロモーション活動もしなかった作品だ。さらに、メンバーがそれぞれ仕事について話す時には、嫌気や抜け目のなさ、諦めが織り交ざった様子が垣間見え、過去20年間で最も素晴らしく、インパクトのあったバンドが、まるで利便性のために一緒になって、つまらない結婚をした夫婦のように感じられる。彼らは『フューチャー・プレゼント・パスト』で世間の反応を見たり、主張の正しさを確かめたり、実験的なテーマを用いたりと、様々なことを行っているのだが、それ以上に、例の質問に答えようとしているように感じられるのだ。

「Untame me, it’s not my midlife yet(僕を飼い慣らさないで。まだ中年じゃないんだから)」と、ジュリアン・カサブランカスは“Oblivius”の冒頭で訴える。この曲は、軽快に奏でられるハイハットと複雑に重なるギターが交錯しながらファルセットのヴォーカルが聴き手に真っ向から現実を突きつけるものであり、もしくは比較的最近の楽曲“One Way Trigger”を彷彿とさせる。より野心的で、自らのかつてのスタイルを発展させた形で、常にシンクロするわけではないにもかかわらず躍動感に溢れている。これは我々が知るザ・ストロークスである。しかも、この曲ではちゃんとシンクロしているのだ。そして、それはおそらくドラムのファブリジオ・モレッティのリミックス・ヴァージョンがより顕著で、本作に微妙かつよりサイケ調のニュアンスを加えている。一方、“Threat of Joy”はメンバーが作詞の仕方を忘れたのではないかと思わせてしまうようなタイプの曲だ。“Someday”や“When It Started”を思い起こさせるような、つられてしまいそうな単調なリフに、ジュリアン・カサブランカスのいたずらっぽいアドリブを足して作られた、まるで初期の頃に臆面もなく立ち返ったような楽曲となっている。

しかしながら、“Drag Queen”こそ、本作の中で最も心を惹きつけられる曲であり、「全員の意志」が向かう可能性のある方向性を示している。この曲が持つ濃厚さと不協和音はジュリアン・カサブランカスが2014年にリリースしたソロ・アルバム『ティラニー』とどこか似ている。だが、特にニコライ・フレイチュアのベースとジュリアン・カサブランカスのワイルドで抑えのきかないヴォーカルが醸し出すインダストリアルなハミングには、PiLやジョイ・ディヴィジョン的な要素も含まれている。たぶん、このEPに与えるべき最高の称賛は、もしこれが誰の曲か知らず、どんなサウンドであるべきか――あるいはあり得ないサウンドは何か――という先入観がなかったら、きっととても特別な作品に出会えたと思えるということだろう。『フューチャー・プレゼント・パスト』と共に、ザ・ストロークスは、我々も、そしておそらく彼ら自身も決して思いもしなかった境地へ達してしまったのだ。いわば、ロックンロールの未来へとね。

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