フェンダーのCEOであるアンディ・ムーニーはギターを新たに始める女性が増えていることについて「今日におけるギターの使われ方はパンクの出現時よりもさらに多様なもの」になっていると語っている。
フェンダーは今年の10月に行った調査で、現在アメリカやイギリスで新たにギターを始める人々のうちの50%が女性であるとして、「これまでとは違う文化的な背景やポピュラー音楽の環境」で育ったアーティストたちが「ギターの弾かれ方に変化」をもたらしたと述べている。今回、アンディ・ムーニーは『NME』のインタヴューに応じて、かつて「テイラー・スウィフト効果」と呼ばれていたものが今やさらに持続的なムーヴメントになったと語っている。
「女性のギターへの関心の高さは今も持続しており、それどころか上昇しています」とアンディ・ムーニーは『NME』に語っている。「アコースティック・ギターを初めて手に取り、それを習得した女性たちの多くが、『オーケー。次はエレクトリック・ギターが欲しいわ』と思ってくださっています。私がフェンダーに初めて来た最初の数年間はアコースティック・ギターの売り上げのほうが伸びていましたが、今はそれが逆転しているのです」
アンディ・ムーニーは、オンライン上でギターを買ったり学んだりすることができるようになったことで、男性の多いギター・ショップで女性が「バカにされる」ケースを減らすことになったと語っている。
「必ず参加しなければいけないクラブのような存在になっています」と彼はオンラインでギターを学ぶことについて語っている。「ギターを始めたての人たちは誰しもがバカにされてしまいますが、女性たちにとってはその脅威がさらに増すことになります。私はその光景をこの目で目撃したことがあるのです。熟練した女性のギタリストと一緒にお店に入ったことがあるのですが、店員がその女性のもとへ来て、『旦那さんかボーイフレンドをお探しですか?』と訊いたのです。その質問は、そのお客さんを永遠に失ったことを意味します」
また、ギターを弾く女性が増えた背景には、ロールモデルとして人々に憧れられる女性ミュージシャンが増えたことも要因にあると指摘されている。
アンディ・ムーニーは女性のギタリストが増えたことに言及して、ギターの弾かれ方がいかに「パンクの出現時よりもさらに多様なもの」になったかについて語っている。
「今年、リズ・フェアーにインタヴューした素晴らしい記事を読みました」と彼は語っている。「リズ・フェアーは昔、露出を上げて、可愛く見せるようにレーベルから言われていたそうで、彼らの注文のほとんどは音楽よりも女性らしさについてのものだったそうです。当時、彼女とステージで共演できた女性アーティストはほとんどいなかったそうです。リズ・フェアーは、今では女性アーティストがヘッドライナーを務めるメジャーなフェスティバルも増え、なかには女性アーティストだけが参加するフェスティバルも開催されるようになったと語っています」
「アジアではその傾向がさらに顕著です。まだきちんとした調査は行っていませんが、新たにギターを購入する消費者のおよそ70%が女性だと我々は見込んでいます。それらは、K-POPやJ-POPの影響によるものです。SCANDALのようなバンドの音楽を聴けば、彼女らが未熟なミュージシャンでないことは明らかですし、高い水準で幅広いジャンルの音楽を演奏していることが分かるでしょう」
統計によれば、ギターを手に取る人の中でステージでパフォーマンスしたいと思っている人々の割合はわずか6%であり、初めてギターを購入する人でギターで生計を立てたいと考えているのはそのうちの3%だという。イギリスにおいては新しくギターを始める人の多くが「新しい特技」や趣味のために始めている一方で、新しくギターを始める人口の増加やそのジェンダーの多様さは、新たなスターの誕生を予感させるとアンディ・ムーニーは語っている。
アンディ・ムーニーはギター業界が2014年以来成長を続けていることについて、様々なジャンルにおけるソングライティングやレコーディング目的での購入の他に、人々がギターを手に取りづらいものだと感じなくなったことや、娯楽目的で購入する消費者が増えたことが要因にあると指摘している。
「エレクトリック・ギターの死を語る人たちの言葉を聞くたびに、現実をきちんと見ることに時間をかけてほしいと思っています」と彼は論じている。「私としては、ギターの使われ方はパンクの登場を境に変化したと考えています。パンクが誕生するまでは、ジミ・ヘンドリックやトニー・アイオミなどの男性ギタリストがヒーローでした。人々が憧れたのは彼らのような人たちで、決して真似できないような人たちでした。それがパンクが誕生してからは、3つのコードが弾けて、心意気さえあれば、ステージに立てるようになりました。作曲や演奏用の楽器としてのギターの側面は徐々に薄れ、より楽しむことに重点が置かれるようになったのです」
「今日におけるギターの使われ方はパンクの出現時よりもさらに多様なものになっています。地理的にもジャンルの幅広さにおいても、ギターがこれほどまでに多様に使われたことはこれまでありませんでした」
フェンダーは昨年、ギターをより多くの人に広めるために、新たなサービス「フェンダー・プレイ」をスタートさせている。「フェンダー・プレイ」は、ギターやベース、ウクレレの弾き方を様々なツールやレッスン動画を見ながら学べるアプリとなっている。
しかしながら、ストリーミング・サービスが広まり、ミレニアム世代の興味が様々な分野に分かれている一方で、「フェンダー・プレイ」で最も検索されている動画はオアシスの“Wonderwal”なのだという。
「そうです、あの曲は3つのコードで作られたシンプルな楽曲なのです」とアンディ・ムーニーは語っている。「ギターを初めて自分のものにできたという瞬間を味わえるような楽曲です。自分にとっての最初の到達地点となるのです」
女性ギタリストをめぐる問題についてはハイムも今年のNMEアウォーズの授賞式で言及している。
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