JORDAN HUGHES/NME

Photo: JORDAN HUGHES/NME

ザ・ストロークスのデビューアルバム『イズ・ディス・イット』を手掛けたプロデューサー、ゴードン・ラファエルが、ロンドンのハイド・パークで行われたブリティッシュ・サマー・タイム・フェスティバルのレヴューを「The Zine」に寄稿している。

ザ・ストロークスがロンドンでライヴを行うのは5年ぶりで、ザ・ストロークスがヘッドライナーを務めた6月18日公演では、大勢の観客で賑わう中にアレックス・ターナーやマイルズ・ケインといったアーティストの姿も見られた。

このレヴューで、ゴードン・ラファエルはザ・ストロークスを「素晴らしい」と評価する一方、サポーティングアクトの面々を批判している。

この公演では、ベック、フューチャー・アイランズ、テンプルズ、パブリック・サーヴィス・ブロードキャスティング、ザ・ウィッチーズ、ハインズ、ゲンガー、ヤク、キーラン・レオナルドがサポーティングアクトを務めている。

ゴードン・ラファエルは次のように綴っている。「僕は開始すぐにビッグステージでパフォーマンスを見ていたんだが、15秒も経たないうちに吐き気がするくらいの怒りが込み上げてきたよ。これまで僕が世界中で聴いてきた99.9%の音楽による経験が、僕の魂や身体にそういった拒絶反応をもたらしたんだ」

「つまらないドラムのビートに、存在感のないギターと“ギターに従うだけの”ベースライン、そしていかにもショウビズ的な歌い方をした媚びたような奴が、面白味がなく詩的でもない曲を歌っている。見ているうちに、どこか安全な場所へ逃げたくなるような吐き気がみぞおちからこみ上げてきたよ」

さらに、レヴューはこう続いている。「これまでの人生を通してこんな風に感じることばかりだったので、今の音楽が特別に悪いとかじゃない。ただ、多くの人が凄いって崇めたり、注目したりする音楽に対して、自分が同じ価値を見いだせないだけだ」

ゴードン・ラファエルの酷評の対象になったのは、前述のバンドだけではなかったという。

「僕は、この的外れで弱々しい音楽(もちろん観衆は一緒に歌いながら踊っていたよ!)が発する、吐き気のする音波からできるだけ遠ざかろうとして走った。すると、最近のデジタル機材やMIDI機材がずらりと揃ったステージの前にたどり着いたんだ」

「僕は思わず『ウソだろ』と息をのんだよ。これから誰がこのステージに上がってくるのかは知らないが、その“機材”を一目見て『きっとこれは苦手なやつだ!』と思ったんだ。M-Audioのロゴが目に入れば、Abeltonでループさせて、プラスチックみたいな音ばっかりが出てくるんだろうってことがだいたい分かるからね。案の定、出てきた奴らがやったのはMIDI音楽だった。ヴォーカルは会社重役みたいなお堅いパフォーマンスをしていて、『最悪な音楽』を聴いた時に起こる、あの吐き気を催すような感じがまた押し寄せてきた。一酸化炭素を吸いこんで死ぬ直前みたいな感覚だ。そう、僕はまたステージから逃げ出した。ライヴに来て1時間で、人気はあるけど音楽として成り立ってないものを2回も服用してしまった。『うーん、これは悪い兆候だ』と感じさせられたよ」

ゴードン・ラファエルはパスなしでバックステージに逃げ込もうとした矢先に、「聴き飽きた録音をベースにした演奏をする、観たくないことが分かりきったバンド」のステージにつかまってしまったという。

「勘弁してくれ! このステージから僕の耳に漂ってくる音も、歌詞も、コーラスも、楽器の音色もどれ一つとして僕を逃がしてくれない。そこで、僕はそのハーム(苦痛)とハーモニーをなんとか軽減しようと、耳にトイレットペーパーを詰め込んでみたんだけど、それでも身体にその音楽が突き刺さり続けた」

ようやくヘッドライナーのステージを見ることができた時の心境をゴードン・ラファエルは、次のように綴っている。「ザ・ストロークスが僕のプロデュースしたアルバムの曲を演奏しているのを聞くと、いつも心の底から高揚感が押し寄せてくる。もちろん、純粋にね! 『イズ・ディス・イット』の曲で始まった歴史的ステージは、すぐさま僕を素晴らしいムードで包んでくれた(間違いなく、観客も同じだったはずさ)」

さらに、次のように続けている。「ザ・ストロークスの演奏は素晴らしかった。アルバートはバンドの支柱って感じで、真っ赤なフライトスーツが似合ってた。楽々とギターを抱えて力強いリズムを生み出し、ヒリヒリするような熱気が彼を絶好調に高めていた」

「もちろん観客は大盛り上がりだ。ジュリアンはこれまでステージで見たことがないくらいよく喋っていたよ。彼らの演奏は驚くほど上手かったし、これまで通りパワフルだった。アンコールの3曲も良かったし、やっぱり常に最高で大好きなバンドだって思えた(特にライヴで見ると最高だ)。“Take It or Leave It”、つまり、それ以外に選択肢はないね!」

「はっきり言って好きじゃないバンドは世の中にたくさんいる。でも幸運なことに、僕の手がけてきたバンドのなかでもストロークスはいつだって楽曲と歌詞に力強い尊厳を抱くことのできるバンドなんだ」と、ゴードン・ラファエルは文を結んでいる。

なお、ゴードン・ラファエルはザ・ストロークスだけでなくレジーナ・スペクターもプロデュースしている。

そして、ザ・ストロークスのフロントマンであるジュリアン・カサブランカスは、2013年発売の『カムダウン・マシン』以来となるザ・ストロークス名義の楽曲に取り組んでいることを明かしている。

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