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今年8月、アークティック・モンキーズはキャリアで3度目となるレディング&リーズ・フェスティバルのヘッドライナーを務め、フェスティバルでも最多の観客を集めて、正式に新時代を船出させている。それはこの夏にヨーロッパで行ってきた大規模な屋外公演の締めくくりとなるもので、新しく若い世代の熱心なファンが生まれていることを証明することになった。そうしたファンの多くはTikTokやストリーミング・サービスを通して生まれており、アークティック・モンキーズがパフォーマーとして感情の深さを十分に発揮した最初の楽曲である“505”の急激な成功も一翼を担っていたかもしれない。

2007年発表の『フェイヴァリット・ワースト・ナイトメアー』に収録の“505”はエミネムコールドプレイのヒット曲を抜いて、スポティファイだけで月間平均170万回の再生回数を記録している。この数字はバンドがキャリアを通して意識的にソーシャル・メディアを避けるようにしてきたことを考えると、より感慨深い。それはまるで世界的な注目を集めずにはいられないかのようだ。

アンコールを締めくくる定番となっている“505”に対する熱狂的な反応を見るのはアレックス・ターナーにとっても「純粋に心動かされる」ことだというが、最初はこの曲がリバイバル・ヒットになったことに困惑していたという。「2008年から数年間、ライヴの最後で“505”を演奏していなかったら、今みたいな新しい展開になっていたかは分からないね。自分の手柄みたいに聞こえてほしくないんだけどさ。完全に予想外じゃなかったとしても、こうして関心が集まるのは特別なことだよ」

アークティック・モンキーズは最近のライヴでバックカタログからレアな楽曲を披露している。その中には『ハムバグ』に収録の“Potion Approaching”のムーディなバージョンや『サック・イット・アンド・シー』に収録の見過ごされてきたシンガロング・ナンバー“That’s Where You’re Wrong”などがある。セットリストを変更することでバンドがこれまでに成し遂げてきたことを評価できるようになったとアレックス・ターナーは説明している。「過去の曲なんかを解放する余地というのはまだまだあってね。自分たちにできることを並べたPDFが頭の中にあるような感じなんだよ」と言った後に彼は困惑で眉をひそめる。「PDFじゃない。スプレッドシートと言いたかったんだ」

この愛らしい遊び心と親密さこそ結成20年を迎えたアークティック・モンキーズの現状に対する疑念が本物であるかのように思わせる。来年、彼らはキャリア初となるUKでのスタジアム・ツアーを行うことが決定しており、地元シェフィールドではヒルズボロー・パークで2公演を行う予定となっている。ツアー・スケジュールは来年のグラストンベリー・フェスティバルの日程を避けたものともなっている。

こうしたツアーの規模は既にアレックス・ターナーの気持ちを揺らしている。「このアルバムまではスタジアムでやることに意味がなかったし、今回までは気持ち的にも気構えができていなかったと思う」と彼は語っている。「自信過剰にはなりたくないし、自分たちの曲がスタジアム向きだなんて言いたくもなかった。でも、スタジアムに合うかもしれないと思ったんだよね」

今度のツアーではストリングス・セクションを使わず、代わりに追加のキーボードやシンセサイザーで対応するという。アレックス・ターナーは新作がライヴでも通用することに自信を見せており、『ザ・カー』の感情的な深みと豊かさについて、デビュー・アルバムの有終の美を飾る激しく扇動的なギター・ナンバー“A Certain Romance”を引き合いに出して語ってくれる。「“A Certain Romance”をレコーディングした時に最後のギター・ソロについてプロデューサーとした会話を覚えているんだけど、あの曲の最後では一つの瞬間でいくつものルールを破るようなことが起こるんだよね。言葉を超えて、楽器陣の感情的な部分に光を当てたんだよ。あれ以降、何度も何度もそれに挑戦しているような感じなんだ」

あの曲をまだ誇りに思いますか?

「ああ」と彼はすぐさま答えている。「あの曲は自分たちにも可能だと思っていた以上の野心があったことを示してくれた。当時は曲に何を付け足すかというアイディアでいろいろ苦労していたんだけど、あの曲ではギターが盛り上がっていって、戻ってくるんだ」

テーブルの向かい側で彼は楽しそうに席で身を捩りながらエアギターを始めている。一瞬、アレックス・ターナーは不気味なほど歳月の影響を受けていないかのように見える。目は大きく明るくて、好奇心旺盛だ。鮮烈な若さと奔放な喜びが顔に大きく広がる。「あの曲をレコーディングした時は『やった! やった!』という感じだったんだ」と彼は両手を頭の上に上げてみせる。「『俺たち、一体何をやったんだ?』という感じでね。それまでやってきたことの殻を破ることって少なくとも最初は面白がっていたところがあったんだよ」

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アレックス・ターナーは楽しそうで、落ち着いていて、満足そうに見える。それは当然のことだ。彼は今でも世界でも最大のステージでふざけてみせ、少年時代の親友と音楽を作り、批評家の評価は気にせず、自分自身が楽しむことを大切にしている。『ザ・カー』のアークティック・モンキーズは活気に溢れたインディ・バンドという始まりからは遠く離れてしまったかもしれないが、アレックス・ターナーは後悔はないとして、バトリー・プライオリーで過ごした時間から心あたたまる逸話をもらしてくれた。

「一つの部屋でアイディアを共有しながら、全員が一緒にいるというエネルギーと楽しさはすごくパワフルなものだったよ」とアレックス・ターナーは語って、視線を一瞬テーブルの下に落とした。「例えば、セッションが終わって別れを告げる時のことを考えたら、気付かされたんだ」と自分に驚いたかのように彼は目をうるませている。でも、彼がそれをそのまま見せてくれることはない。

アレックス・ターナーはもう一度、顔をこちらに向ける。「実際、バンドのメンバーがいなくなったら、空気がすっかり変わってしまったんだ。なんて言えばいいのか分からないけど、分かっているのはバンドと一緒にいることがマジックを起こす方法だということでね。他の場所では見つけられないものなんだよ」と彼は訳知り顔の笑みで語った。

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