「このシングルをレコーディングしていた時、隣の部屋のテレビに、先に撮影してあったミュージックビデオが流れていたんだ」。2014年、アレックス・ターナーは『NME』に対し、アークティック・モンキーズのデビュー当時からの環境の変化が、今でもまだ信じられないといった様子で語っている。非公式デモ・アルバムの中でもダウンロード数の多かった『ビニース・ザ・ボードウォーク』に収録されており、特に傑出した存在である“I Bet You Look Good On The Dancefloor”は、ギター・バンドが溢れた世界において不可能とも言える、フレッシュさと個性の両立を実現してみせた。当時、その世界を牛耳っていたのはザ・ストロークス、ザ・ホワイト・ストライプス、そしてフランツ・フェルディナンドやブロック・パーティーだったが、“I Bet You Look Good On The Dancefloor”は一瞬にして、優れた作り手とそれ以外の人との間に大きなクリエイティビティの隔たりを生んだのだ。この曲は世間に受け入れられ、すぐにUKシングル・チャートのトップを独占した。これは前述のバンドたちが、レコード・レーベルの莫大な札束や、広告や宣伝を持ってしても達成できなかった業績である。
また、この楽曲はアレックス・ターナーが書いたなかでも最もストレートな曲の一つであり、2004年の中頃、シェフィールドにあるアークティック・モンキーズのリハーサル・ルームで、一つの曲として形になった最初の楽曲である。また、皮肉中の皮肉だが、この曲はアメリカに影響を受けたポップ・パンクのコードが元になっている。マット・ヘルダースのマシンガンのようなドラムロールが蒔いたアイデアの種は、アレックス・ターナーが猛烈な速さで(聴き逃した人のために)3回繰り返す爽快なギター・ソロの完ぺきな土台となった。歌詞に関しても、アレックス・ターナーのすばらしい作品群の中でも特に優れていると言えるだろう。これとは対立的に、ナイトクラブから追い出されたうるさい下劣なヤツのような表現の辛辣で巧みな皮肉は、最初の6行の歌詞で、巨大なソングライターの新たな才能の到来を告げている。アレックス・ターナー自身はこの評価に対して良い顔はしないものの、“I Bet You Look Good On The Dancefloor”は、現代のイギリスで若く、酔っ払っていて、性欲があり、退屈で怒っていて、そして貧しいとはどのようなものなのかということを完ぺきに要約している。あとから考えると、この勝負についても他のバンドはすっかり諦めていたのかもしれないけれど……。
10月14日でリリースから10周年を迎えた“I Bet You Look Good On The Dancefloor”の全貌について、ここから楽しいファクト・ファイル方式で紹介していこう。
“I Bet You Look Good On The Dancefloor”をめぐる5つの裏話
1. ミュージックビデオは、1971年から1988年まで放送されていた音楽番組「ザ・オールド・グレイ・ホイッスル・テスト」を模して撮影され、バンドはあえて古いカメラを撮影に使用している。(司会者のボブ・ハリスを撮影に呼ぶのを目前のところでやめてしまったが)
2. 「Dancing to electropop like a robot from 1984」という歌詞は、バンド仲間の友人であるレヴァランド・アンド・ザ・メイカーズのジョン・マックルーアのかつてのバンド、1984について言及したものである。ジョン・マックルーアのバンドJudan Sukiには、アレックス・ターナーやマット・ヘルダースも参加していた。
3. 昨今は、アレックス・ターナー本人も、初期のアークティック・モンキーズの曲からは距離を置いているが、この曲に関しては「ライヴで演奏しないなんて考えられない」と2011年に語っている。
4. 曲の完成度を求め3つのスタジオを回っている。最初は、プロデューサーのアラン・スミスとのデモテープの制作。それから、スタジオ「300 miles an hour」にてジェームス・フォードとリッチ・コスティを迎えてのレコーディング、そして最後にジム・アビスを迎えてのレコーディングを行い、それを採用した。
5. イギリスのその週のシングル・チャートでは、2005年の10月、同曲は新曲で登場して1位を獲得。ピート・ドハーティのThe Litt’lansとのコラボ曲“Their Way”も同じチャートに入っていた(22位に初登場)。マクフライの“I Wanna Hold You”が新曲としては2番目の3位につけた。
当時はなんと言われていたか
「リバティーンズのファンにとって“Fuck Forever“が最後の一撃だったといってもいい。シェフィールド出身のアークティック・モンキーズに注目だ:枠にとらわれない若者で適度に節度がある」マイク・スターリー
今はなんと言われているか
金曜の夜が楽しみで、リアーナよりストーンズ流のR&Bを好む人にはいまだに最高の曲だ。
この曲の有名なファン
P・ディディ「多分、俺がアークティック・モンキーズの一番のファンだ。俺たちは兄弟愛に満ちている。俺もメンバーの1人みたいなもんさ。だから、アークティック・モンキーズをけなすのは、俺をけなしているようなもんだ」
カヴァーしたアーティスト
シュガー・ベイブス、ザ・ヴァインズ、そしてトム・ジョーンズ。昨年、コメディアンのビル・ベイリーも即興で『NME』のためにザ・ワーツェルズと共にこの曲をカヴァーした。
この曲が嫌いな人
元デペッシュ・モードのメンバー、アラン・ワイルダーは、2008年にこの曲の制作について「非常に大ざっばで表面的な騒音にすぎない」と語っている。
この曲のその後
この曲はアークティック・モンキーズのキャリア全体の基盤となっている。イギリスのインディーズ界の水準をあげたと言ってもよく、失敗することなく素晴らしい楽曲を世に送り出す印象的なバンドがついに現れることになった。この曲は、2012年のロンドンでのオリンピック開会式でも演奏されたように、いまだに彼らの演奏曲目に入っており、永続的にアピールできる魅力がある。
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