40位 リアーナ『アンチ』

rihanna-anti
「あなたの”Shit”をグリッターで飾らせて/金色に変えてみせるから」と、SZAをフィーチャリングしたオープニング曲”Consideration”でリアーナは歌い上げる。リアーナは通算8枚目のアルバムとなる本作をもってして、世界屈指のポップ・スターでありながらも、少し奇妙で、少し変わり者で、少し賤しくなることなど恐れていないことを証明している。もちろん”Work”や”Kiss it Better”のような必殺曲も収録されてはいるが、キーの低い壮麗なR&B、ムーディでサイケデリックなファンクに彩られた本作は、彼女にとって変わり者の旗をはためかす絶好の機会となった。


39位 グリーン・デイ『レヴォリューション・レディオ』

Green Day-revolution Radio
ハリウッド・スターから右翼の象徴に上り詰めたロナルド・レーガンが大統領を務めていた頃にグリーン・デイは結成された。ジョージ・ブッシュ・シニアが税金の公約に関して国民を裏切った1991年にグリーン・デイは『カープランク』を発表し、2004年にジョージ・ブッシュ・ジュニアが中東を進撃していた時代に発表された『アメリカン・イディオット』は、「情報時代のヒステリア」の時代精神を忠実に定義したサウンドトラックとなった。『アメリカン・イディオット』ほど明確に政治的ではないものの、『レヴォリューション・レディオ』はそのエネルギーとパンクを現実世界の欠陥――トランプ帝国の支配下に置かれた恐怖に満ちた、もう真実が重視されない社会――に向けている。グリーン・デイ、今こそ彼らが必要なのだ。


38位 スレイヴス『テイク・コントロール』

Slaves-take control
ケント州出身のパンク・デュオであるスレイヴスは、粗野なリフに非現実的なユーモアを融合させた2015年のデビュー・アルバムでファンを獲得した。ビースティ・ボーイズのメンバーであるマイク・Dがプロデュースを手掛けたこの2作目では笑いのトーンを落とし、ニュー・ウェーヴ(バックスター・デューリーが参加した”Steer Clear”)やヒップホップ(マイク・Dが参加した”Consumer Or Be Consumed”)、スラッシュ・メタル(”Spit It Out”)など様々なジャンルを描きながら音楽のパレットを広げている。楽曲を通じて一貫して現代の英国において深まる生活への不満を示しながら、この反権威主義者は自身の信念を自らコントロールすることを要求する。しかも、遊び心は残ったままなのだ。


37位 ソフト・ヘアー『ソフト・ヘアー』

Soft Hair
レイト・オブ・ザ・ピアのフロントマンであるサミュエル・イーストゲーストと、ニュージーランド出身の類稀なるサイコな変わり者、コナン・モカシンとの間に起きた精神的な出会いは、異様なほどに素晴らしい作品を生み出す運命となった。そしてこのグチャグチャとした沼を髣髴とさせる処女作は、我々をガッカリさせなどしない。イーストゲイトのバリトン・ヴォイスやモカシンのネコのようなファルセットが、ファンキーなギター・ラインや打楽器の打ち込みと出逢うことで、アルバムの幕開けを告げるファンキーな”Relaxed Lizard”から”Lying Has To Stop”でスロウに展開される即席の軋んだギタープレイ、憂鬱さに満ちた”In Love”に至るまで、たまらなく奇妙なものを生み出している。アダムとイヴを模倣したジャケットも、妙にアルバムとマッチしている。


36位 スウェット・ショップ・ボーイズ『カシミア』

Sweat Shop Boys
政治的な作品はとことんまで楽しいものになりうるということを証明している。ラッパーのヒームスとリズ・MCによるスウェット・ショップ・ボーイズは、人種差別や無人機攻撃、文化的なディアスポラについてのウィットに富んだライムに、力強い南アジア音楽のサンプリングを織り込ませている。ヒームスはコメディ・ラップ・グループのダス・レイシストの元メンバーであり、リズはクリス・モリス監督のブラック・コメディ映画『フォー・ライオンズ』に出演している俳優でもある。従って、収録された楽曲が愉快で政治的に熱を帯びたものであるのは驚くことではない。本作における最高の楽曲は、アルバムの幕を開ける強烈な1曲目”T5”である。この曲では、単にアジア人であるが故に存在する風習に苦しめられることについて歌っているのだが、キラー・フレーズでそれを自慢してみせている。「俺はこの街を支配しているぜ。俺の名前がサディク(・カーン:ロンドン市長)であるかのようにな」


35位 グラス・アニマルズ『ハウ・トゥ・ビー・ア・ヒューマン・ビーイング』

Glass Animals-How To Be A Human Being
静まり帰った湿度の高い熱帯雨林のようなヴァイブを持ったデビュー作『ザバ』を経て、オクスフォード出身の4人組インディー・バンドは、ツアー中に彼らが出会った人物についてのアルバムを制作するために全力を尽くし、一切、精彩を欠くこともなかった。1曲目の”Life Itself”は彼らにとって初となる徹頭徹尾のアンセムとなったが、ビッグ・チューンが更に続いている。ソファから離れない怠け者について歌った”Seasons 2 Episode 3”ではビデオ・ゲームの効果音を取り入れ、”Mama”s Gun”では聴き手を麻痺させる残忍な意図で、カーペンターズをサンプリングしている。もしかしたら数ある中でも最高の楽曲かもしれない”Pork Soda”には、「パイナップルが僕の頭の中にある/もう誰もいない、だって僕は無能だから」というラインがある。お見事。


34位 レッツ・イート・グランマ『アイ、ジェミニ』

Let's Eat Gramma-I, Gemini
マルチ・プレイヤーのジェニー・ホリングワースとロサ・ウォルトンは見た目もサウンドも気味の悪い2人組である。ノリッチを拠点に活動するティーンのデビュー作について最も不気味だったのは彼女たちのことでもなく、彼女たち自身が「エクスペリメンタル・スラッジ・ポップ」と称する魅惑的な創造性が混乱をきたしていることでもなかった。彼女たちの奇妙なファースト・アルバムは、自分たちの意図していたものを遥かに超越してしまっているにもかかわらず、グリム童話の失われた一編に向けたサウンドトラックのようで、実際”Rapunzel(グリム童話の作品名)”という曲も収録されている。スポークン・ワードのセクションをはじめ、数多のメロディやビート、楽器が楽曲の中に流れ込んでいる。それは確かにマーマイトのようだが、それでいて完全に魅了されるのだ。


33位 マーゴ・プライス『ミッドウェスト・ファーマーズ・ドーター』

Margo Price
ロレッタ・リンの歌詞にあるような、懸命に働きながらもなかなか報われない生活を送っていたテネシー州出身のマーゴ・プライスは、そのエネルギーをアルバムに注ぎ込み、オールドスクールなナッシュヴィルのサウンドや感覚にこだわりながらも、寄せ集めと形容するには程遠い見事なアルバムを完成させた。このアルバムの核となるのは崇高な楽曲”Hand Of Time”であり、父親の農場を買い戻したいという彼女の夢を詳細に歌い上げている。もし彼女がこのようなアルバムを生み出し続けるのなら、私たちは農場の収穫物を失うことになるだろう。


32位 キングス・オブ・レオン『ウォールズ』

Kings Of Leon-Walls
ネオンの光沢と、映画『シティ・オブ・エンジェル』の退廃的な暗闇で浸したかのようなアルバムを作るために、絶頂期のLAノワールの如くフォロウィル一族が戻ってきた。ファースト・シングル”Waste A Moment”は、ハリウッドの下層階級や夢見る人々を描く映画『ショート・カッツ』のモンタージュのようで、”Over”ではパパラッチにしつこく追跡されるセレブリティをマンションの自殺スポットまで追い詰め、”Muchacho”は亡くなった友達や仲間を、映画のマリアッチのような優しさを抱きながら思い出している。このアルバムには撮影監督的視点も備わっているのだ。彼らの昔ながらのメロディックで素朴な原点へと立ち返ることで、『ウォールズ』は、キングス・オブ・レオンにとって『オンリー・バイ・ザ・ナイト』以来最も活気あふれる作品であることを証明している。オスカーの部門を問わない作品だ。


31位 バスティル『ワイルド・ワールド』

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ザ・1975と同じように、バスティルは大きな野心を抱きながら巧みにポップ・ミュージックを生み出している。更にはこれまたザ・1975と同じように、今年届けられたセカンド・アルバムはあらゆる点においてデビュー・アルバムを凌駕している。コンセプトに沿った宣伝をする程のコンセプト・アルバムではないものの、邪悪な架空の企業、WWCOMMSコーポレーションを用いてマーケティングを行ったこのアルバムは、壮大なテーマに焦点を当てている。人生、死、そして政治についてだ。巧妙さを非難することはできないが、バスティルはこの作品で、最大までダイヤルを回している。忍耐について歌った2016年らしさ溢れる楽曲”Send Them Off!”では、スター・ウォーズの”Imperial Death March”を彷彿とさせるトランペットが鳴り響いている。さらには、サンプリングや引用文を楽曲に縫い付けるという、ミックステープで培ったトリックが時折見受けられる。この作品は、デビュー作が1000万枚以上のセールスを記録したバンドにとってすべてをフイにしないためのいいエクササイズとなった。


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