NME Japanでは20周年を迎えた今年のフジロックフェスティバルでベスト・アクトの1〜20位を選んでみました。とはいっても、あれだけ多くのアーティストが出演するフジロックです。すべてのアーティストを観ることはできません。なので、あくまで独断で、編集部で観たいと思ったアーティストのなかから、議論を重ねて、このランキングを作成してみました。みなさんのベスト・アクトとぜひ較べてみてください(写真は後日追加します)。
20位 ビッフィ・クライロ(7/22 GREEN STAGE)
今年、本国UKではフォール・アウト・ボーイと共同ではあるものの、レディング&リーズ・フェスティバルのヘッドライナーを務める彼らが、フジロック幕開け早々のお昼どきのステージに登場した時点で胸が熱くなる。ライヴは来週リリースされる新作『エリプシス』収録の“Wolves of Winter”からスタートしつつも、セットリストのなかでは“Living Is A Problem Because Everything Dies”や“Bubbles”、“Mountains”といった彼らのキャリアを彩ってきたアンセムがライヴならではのスケール感で投下されていく。何度も何度もステージ上から観客への感謝を口にしていた彼らだが、最後にサイモン・ニールが叫んだ「ビッフィ・ファッキン・クライロ」が最高にカッコよかった。
19位 デフヘヴン(7/24 WHITE STAGE)
ラウド勢やエクストリーム勢がやや少なめだった今年のフジロックだが、そのなかで唯一無比の存在感を放っていたのが彼らだった。今年はほとんど雨が降らなかったために、乾いた砂埃が舞っていたホワイト・ステージは彼らにとって格好の舞台だったかもしれない。音源では闇に染め抜かれたその広大なサウンドが、フジの景色と共に実体化するような瞬間がそこにはあった。そして、灼熱の天候のなか身を振り絞るように吐き出されるジョージ・クラークのスクリーム。なかでもハイライトは、驚くほど穏やかな終着地へと辿り着く最新作からの“Gifts for the Earth”と、ライヴを締めくくることになった『サンベイザー』からの“Dream House”。あの音圧に身をゆだねることのできる気持ちよさは格別だった。
18位 スクエアプッシャー(7/23 WHITE STAGE)
レッチリのフリーが「世界最高のベーシスト」と評し、エレクトロニック・ミュージックの第一人者であるスクエアプッシャーが登場したのは2日目のホワイトのトリ。そして、この日のグリーン・ステージのヘッドライナーを務めたベックと同じく彼も初年度の2日目に出演する予定だった。20年目だからこその様々な物語である。時代を切り開いてきた奇才がまず放った音は、身体が軋むこれまでに体験したことのないような重低音。ドラムンベースというジャンルを超越したサウンドで、自らのスーツに映像を浮かび上がらせるプロジェクション・マッピングのヴィジュアルと共に、オーディエンスを異次元へ連れ出すことに成功していた。
17位 ラプスリー(7/22 RED MARQUEE)
4月の初来日から短いインターバルでの再来日となったが、今回のレッド・マーキーで初めて彼女のパフォーマンスに触れた人も少なくないはず。アルバムのジャケットから「白」のイメージがあるが、この日は黒ずくめの衣装で登場。レーベルが同じXLレコーディングということで、アデルと比較されることもある彼女だが、ライヴでは、ソウルフルな歌唱よりも、デビュー・アルバム『ロング・ウェイ・ホーム』で聴かせた、独特の”凛”とした空気感を生み出すことに成功していた。歌い手としての力量向上と、ステージ上の空間構築をより研ぎすませれば、彼女の“現代の賛美歌”は、より多くのオーディエンスを掴むものとなるはず。
16位 トラヴィス(7/23 GREEN STAGE)
実はこの日はフラン・ヒーリーの43歳の誕生日。しかもフジロックも20周年で、トラヴィスもファースト・シングルのリリースから20周年ということで、運命的なものを感じずにはいられない。ライヴは”Sing”で最高のスタートを切り、そのまま”Selfish Jean”、”My Eyes”とトラヴィス特有のどことなく切なく、でもあたかかい楽曲が披露されていく。”Flowers In The Window”はいつも通りフラン一人の弾き語りで披露され、トラヴィスならではの観客との距離の近さが滲み出る。そして、バンド・メンバーが仲良さそうなのがいい。そして、締めの”Why Does It Always Rain On Me?”で、あらためてフジの大自然に囲まれてトラヴィスを観られる至福を噛み締めていた。
15位 ジ・インターネット(7/22 WHITE STAGE)
蓋を開けてみれば、かなり人の入ったなか、スタートしたジ・インターネットのステージ。暑い時間帯のホワイト・ステージながら、あのメンバーによる極上のグルーヴと、フロントウーマンのシド・ザ・キッドの存在感でむしろどんどん熱量を上げていく。なかでも、最新作『エゴ・デス』に収録されている”Just Sayin/I Tried”では、コール&レスポンスを経るごとに会場のヴォルテージが上がっていく様子に嬉しくなってしまった。そして、終盤“Girl”から“Curse”へと畳み掛けていく展開ですっかり観客の気持ちを掴んでいた。ヒップホップを異次元へと導いたオッド・フューチャー一族でありながら、そこには高いミュージシャンシップによって純粋な音楽的快楽があった。
14位 ステレオフォニックス(7/24 GREEN STAGE)
最終日の昼下がり、もう少しでフェスも終わってしまうという心境のなか、晴れたグリーン・ステージで聴くステレオフォニックスほどのシチュエーションはないだろう。彼らは皮肉も風刺も日常もそして愛も、骨太のメロディに載せて描き、真摯に歌い続けてきた。そんな名曲たちが次々と披露されていく。“The Bartender and the Thief”あり、“Maybe Tomorrow”あり、“Pick a Part That’s New”あり、もちろん“Have a Nice Day”ではシンガロングが巻き起こる。ファーストに収録の”Local Boy In The Photograph”を聴きながら、素晴らしい楽曲は時代を経ても風化することなく、むしろ聴き手が年齢を重ねたときに、より心に響くものとなることを痛感していた。
13位 ムラ・マサ(7/22 PLANET GROOVE)
初日の深夜を驚かせたのは、まだ弱冠20歳のムラ・マサだった。その印象は一人ディスクロージャーとも言うべきもの。自分でパッドを叩いて、PCを触り、シンセを弾いて楽曲にテクスチャーを与え、時にはベースを手に取ることも。もちろん、ディスクロージャーほどの完成度はないものの、むしろその時折見られる少しルーズで、ブッ壊れた感じがフロアにリアリティを生み出している。観客とのやりとりはシンガーのボンザイにまかせて、ほぼステージ後方で黙々とトラックに集中する感じも期待通りで微笑ましい。観客の数はそれほど多くはなかったものの、生で聴く“What If I Go?”からの“Firefly”は実に気持ちよかった。
12位 ウィルコ(7/23 GREEN STAGE)
気温も下がり始めた心地よい時間帯、トラヴィスの幸福感残るグリーン・ステージに登場したのがウィルコだった。ライヴ冒頭は、昨年突如リリースされた最新作『スターウォーズ』の曲順通りの流れで進んでいく。“EKG”でのSEから“More…”、”Random Name Generator”と繋げ、フジロック直前に9月にリリースされることが発表された新作から、先日無料配信された新曲“Locator”なんてものも披露される。例の爆裂ドラムが轟く“Via Chicago”からライヴの流れは変わり始め、“Spiders (Kidsmoke)”はその展開で魅せ、そして、言わずもがなの“Heavy Metal Drummer”である。最後は“Impossible Germany”だったが、メンバー自身が気持ちよさそうに演奏していたのが何より嬉しかった。
11位 シガー・ロス(7/22 GREEN STAGE)
ステージ前方にスクリーンが張られた形でシガー・ロスのライヴは始まった。1曲目は先日公開された新曲“Óveður”。スクリーンから透けて時折メンバーの姿が見えるものの、スクリーンにも映像が映し出されいて、僅かにしか見えない。そして、3曲目の“Sæglópur”のイントロでスクリーンが上に上がり、メンバーが前に出てきてからのパフォーマンスがすごかった。名曲“Glósóli”をはじめ、過去最少人数のシガー・ロスで、自身の楽曲を肉体化していく。もちろん、完璧ではない部分もあった。けれど、スタジオの音を再現するのではなく、あくまでライヴ用に作り変えていく、そんな今回のツアーのコンセプトがストレートに伝わってくるパフォーマンスだった。
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