10位 レイチェル・チノウリリ『ホワット・ア・デヴァステイティング・ターン・オブ・イヴェンツ』
ユーモアと切ない感情をブレンドさせてレイチェル・チノウリリは日記のようなデビュー・アルバムでインディ・ポップの一冊に自らの名を刻んでみせた。彼女ならではのソフトなヴォーカルにパンチのあるギターと衝撃的な感情を組み合わせて、『ホワット・ア・デヴァステイティング・ターン・オブ・イヴェンツ』ではディアスポラの試練から逃れることなく、イギリスの若者の精神が完璧に描かれている。
09位 ビリー・アイリッシュ『ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト』
サード・アルバムでベッドルーム・ポップの第一人者はこれまでよりも大胆不敵になっている。ビリー・アイリッシュのヴォーカルは新たな一面を見せ、彼女とプロデューサーのフィニアスは型にはまった曲の構造に挑戦をしかけ、その歌詞は辛辣で痛烈だ。リード・シングルの目を引く一節「あの娘だったらランチに食べられる」は始まりに過ぎなかった。
08位 ムスタファ『ドゥニア』
「どれほどの怒りをもって曲作りをしようともそれは関係ない」とムスタファは『NME』に語っている。「それはいつもある種のやさしさに変換されるんだ」怒りや悲しみが傷ついた美しさへと姿を変える。トロント発のアーティストによる崇高なアルバム『ドゥニア』では故郷、信仰、帰属意識、喪失感といった擦り切れた糸が魅惑的なタペストリーに織り上げられている。
07位 ビヨンセ『カウボーイ・カーター』
ビヨンセの通算8作目となるアルバムについてはカントリー・アルバムとして語られてきた。しかし、全体を見てみると、『カウボーイ・カーター』はアメリカ南部の様々な文化に捧げられたものとなっている。トラップからバウンス、ゴスペルやソウルまで、それは自分のルーツを決して忘れないアーティストによるクリエイティヴィティの最高峰となっている。
06位 ザ・キュアー『ソングス・オブ・ア・ロスト・ワールド』
ザ・キュアーのニュー・アルバムを16年も待つことになったわけだが、ロバート・スミスはキャリア後期における傑作を発表して、さらに2枚のアルバムがリリースされることになるという。悲しみをインスピレーションとしつつも希望に満ちた『ソングス・オブ・ア・ロスト・ワールド』でバンドは妥協することなく、空高くまで上がった期待に応えてみせた。
05位 マグダレーナ・ベイ『イマジナル・ディスク』
マグダレーナ・ベイはまさに野心的な『イマジナル・ディスク』でセカンド・アルバムにありがちなスランプを打ち破ってみせた。アルバムは壮大なコンセプト・アルバムを期待させるかのように始まる。主人公のトゥルーは理想の自分に変身しようと魔法のディスクを額に挿入する。しかし、輝くような新しい自分は手に入らず、トゥルーの身体はディスクを拒絶して、つまらない人間の自分だけが残ることになる。
スムースなロック、サイケデリア、ディスコをブレンドさせることで『イマジナル・ディスク』は人間の在り方について最もファンキーな形で考察している。思慮深い職人技と直球のバンガーの境界線をまたいでみせる『イマジナル・ディスク』は究極のソフィスティ・ポップとなっている。
04位 ニア・アーカイヴス『サイレンス・イズ・ラウド』
新しい世代のためにジャングルを再び活性化させることと、それを傷つきやすさを抱えながらニア・アーカイヴスがやってみせたことはまったく違うことだ。パーティーが止まった後もニア・アーカイヴスは進み続ける。『サイレンス・イズ・ラウド』とは彼女の孤独、悲しみ、不安のサウンドトラックだからだ。
中毒性のあるブレイクビーツに支えられながら、ニア・アーカイヴスはアンセム感のあるフックと痛烈なソングライティングに対する優れた耳を披露している。“Silence is Loud”のけたたましいサイレンに声を上げない人、極めてキャッチーな“Crowded Rooms”を歌わない人なんているだろうか。ブリットポップとジャングルのブレンドは天才的で、鮮やかで美しいデビュー・アルバムとなった。
03位 イングリッシュ・ティーチャー『ディス・クドゥ・ビー・テキサス』
『ブラット』サマーのネオン・グリーンの熱狂の中で突如マーキュリー・プライズを受賞したヨークシャー出身のインディ・ナード、イングリッシュ・ティーチャーによる非の打ちどころのない『ディス・クドゥ・ビー・テキサス』は2024年において決定的なデビュー・アルバムとなった。このサウンドと言葉における冒険はアウトサイダーの賛美として美しいバランスを見出し、どこかあたたかく、受け入れてくれる。
“Not Everyone Gets To Go To Space”で描かれる宇宙から“Albert Road”で描かれる側溝まで、このアルバムには思い、ユーモア、人間らしさが詰め込まれ、この先何年も聴かれていくスタートのピストルとして、自分たちが何処にいて、イングリッシュ・ティーチャーが何処に向かうのかというエキサイティングな問いを投げかけている。
02位 フォンテインズD.C. 『ロマンス』
「誰か突き止めてくれないか/その言葉が何なのか/地球を回している言葉を」とグリアン・チャッテンは“Horseness Is The Whatness”で問いかけている。「だってそれは愛だと思っていたから」『ロマンス』の歌詞において、このアルバムのマニフェストと言えるものがあるとすれば、それはこの一節だろう。その探究心を象徴しながらも、酸いも甘いも描かれ、アルバム・タイトルの感触が内包されている。
フォンテインズD.C.の通算4作目となるアルバムは哲学的探究だけでなく、バンドの幅広い進化の継続という点でも驚異的なアルバムだった。終末的な不安に満ちた本作はノワール調のシネマティックな雰囲気、グランジ、シューゲイザー、揺らぎのあるヒップホップのビートをミックスしながら、彼らに期待することになった比類なきレベルの野心と圧倒的な才気を提示している。
01位 チャーリーXCX『ブラット』
今年2月の時点でチャーリーXCXは次のように述べていた。「言うまでもないけど、私があなたのナンバーワンね」チャーリーXCXは“Von Dutch”で不気味なほどの自信でこう断言している。それは、みんなが「ジュリアのように」と言い始める前、ネオン・グリーンがマストアイテムになる前、“アップル”・ダンスとは何かを知るようになる前、『ブラット』が2024年のベスト・アルバムになる前のことだ。
『ブラット』のカルチャーとしてのセンセーションは目を瞠るものだった。しかし、アルバムとしての『ブラット』、そうした広がりの核にあるレコード、マーケティングの下にある音楽はシンプルに言って桁外れに素晴らしい。ソングライターとして、作詞家としてチャーリーXCXはキャリアの大半を屈託のない態度と赤裸々な弱さの両極の間で揺れ動きながら進んできた。『ブラット』ではその間を自在に行き来し、人間らしさを保ちながら防弾仕様のバンガーを聴かせてくれる。このアルバムはチャーリーXCXのピークであるだけでなく、現代のポップ・ミュージックにおける新たな基準を生み出すことになった。
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