10位 ラウヴ(8/20 SONIC STAGE)

今の時代におけるリスナーとの関係性がニュートラルに表れているステージだった。ライヴは最新シングルとなる“Love U Like That”から始まったのだけど、バック・バンドはまったくなしで、舞台の上にいるのはラウヴ一人のみ。最初は少し散漫な印象を受けたのだけど、“Paris in the Rain”や“Chasing Fire”といった聴き馴染んだ曲に移ってくると、だんだんと印象が変わってくる。ラウヴは楽曲を通して、その心情を率直に伝えることで、まるで自らのベッドルームに招待するように世界各地にリスナーを築いてきたが、ライヴでもたった一人のステージがまるでベッドルームかのような親密さが観客との間に生まれる。途中でバックトラックが止まるアクシデントがあったり、ステージにそのまま寝転んでしまうような場面もあったが、それも彼の日常の延長のようで、お仕着せのエンタテインメントとは違う感触があった。最後の“I Like Me Better”までは観られなかったが、その人となりを感じるライヴだった。

9位 ノヴァ・ツインズ(8/20 MOUNTAIN STAGE)

Photo: SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.


サマーソニック2日目の最初のアクトとして観られたのだが、素晴らしいスタートを切ってくれた。トム・モレロが諸手を挙げて絶賛し、昨年の『NME』が選ぶアルバム・オブ・ザ・イヤーで8位に入るなど、その実力は窺い知れたのだが、やっと生で観られて腑に落ちた。ライヴは“Fire & Ice”から始まったのだけれど、演奏技術はもちろん折り紙付き。俗に言うミクスチャーの醍醐味をこれ以上なく堪能させてくれるのだけど、プレイヤビリティの過剰なアピールがないことが好感が持てる。それは他の面にも当てはまり、楽曲に込められたメッセージ性だったり、時折見せる遊び心だったり、Vo&Gのエイミー・ラヴとベーシストのジョージア・サウスのキャラクターだったり、どれかが突出することなく、バランスがいい。“Puzzles”ではジョージアが海老反りで演奏したりしてフックを作りながら、最後は“Choose Your Fighter”で、2人とも柵前に降りて初めての日本を楽しんでいた。

8位 ジェイムス・ブレイク(8/18 MOUNTAIN STAGE)

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最後に演奏された2曲、“Retrograde”で圧倒的な音圧を感じて、“The Wilhelm Scream”でそのエモーションに触れた時、彼のキャリアは大きな孤を描いて一周したのだなと実感するような、そんな感慨を覚えるライヴだった。通算6作目となる新作『プレイング・ロボッツ・イントゥ・ヘヴン』のリリースを控えての来日だったが、今年映画のサウンドトラックに提供された“Hummingbird”は披露されたものの、新作のモードではなく、ライヴ冒頭を飾った“Life Round Here”や“Limit to Your Love”を初め、ファーストやセカンドからの楽曲が数多く演奏されることになった。しかし、懐古的な印象というのはまったくなくて、むしろ本来のジェイムス・ブレイク像が甦ってくる嬉しさのほうが勝っていた。序盤で演奏された“CMYK”も鮮烈だったし、キャリアでも屈指のダンス・トラックである“Voyeur”も素晴らしく、彼が音楽的に立つ交差点を改めて見せてくれるようなライヴになっていた。

7位 リアム・ギャラガー(8/20 MARINE STAGE)

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日にちは違えど、ブラーがヘッドライナーを務めるフェスティバルでリアム・ギャラガーも同じステージに立った。それが2023年ということであり、一つ今年のサマーソニックを象徴する出来事だったのではないか。“Roll with It”と“Country House”の頂上決戦も今や昔、あれから30年近くが経ち、紆余曲折を経ながら、右往左往する評価の中で時が過ぎるのを待って、両バンドともUKロック史に名を残す輝かしいレジェンドとしての地位を確立することになった。エクストラ公演とセットリストを比較するとダイジェストになるのは仕方ないが、あの時間の中で“Morning Glory”も、“Rock ‘n’ Roll Star”も、“Stand by Me”も、“Wonderwall”も、“Champagne Supernova”もやったんだから上出来だろう。セカンド・ドラマーとして息子のジーン・ギャラガーが参加したことも話題となったが、それも含めて、今回のステージはここまでサヴァイヴして歩んできたことへの祝福だと思っている。

6位 ムラ・マサ(8/18 MOUNTAIN STAGE)

Photo: SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.


冒頭、“Love$ick”を自らのパーカッションを交えながら披露し、“1 Night”に、“bbycakes”とキラー・チューンを立て続けに投下していく。こんなに初っ端から突っ走って大丈夫かと思ったが、結論から言えば杞憂だった。午前3時過ぎという深い時間からのステージだったにもかかわらず、その後も熱狂が冷めることはなかった。17歳の時に作った曲という紹介で初めて世に音源を出した曲“Lotus Eater”を披露したかと思えば、クレイロとのコラボレーション“I Don’t Think I Can Do This Again”が中盤のブリッジとなり、“2gether”のエモーショナルな展開へと繋がっていく。最新シングル“Drugs”はきっちりとハイライトを演出し、ピンクパンサレスとのコラボレーション曲“Just for Me”ではUKトレンドの最前線を感じさせてくれる。最後は“What If I Go?”と“Firefly”という初期の楽曲の2連発で、全体として再生回数の論理だけではない誠実なディスコグラフィを築いてきたことの証明と言えるステージだった。

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