5位 フォールズ(7/30 GREEN STAGE)

Yuki Kuroyanagi

Photo: Yuki Kuroyanagi


現在のUKシーンにおいてギター・ミュージックの最前線にいるバンドだが、そのポジションを日本でも、苗場でも可視化しようというファンの思いを感じたライヴだった。最新作『ライフ・イズ・ユアーズ』からの“Wake Me Up”で幕を開けたが、キーボードのエドウィン・コングリーヴの脱退の影響はあまり感じられず、むしろジャック・ビーヴァンのドラムの推進力は上がっているようにさえ感じる。“Mountain at My Gates”や“My Number”といった代表曲が続いたところで、アンセム“Spanish Sahara”が投下されたのだが、中間のブレイクでは自然と前方の観客がみな座り始め、前方エリアにはグラストンベリーを彷彿とさせるような旗を持つ人までいて、今のUKにおいて宝とも言えるバンドであることを無言で伝えようという熱をいろんなところから感じる。“Inhaler”や“What Went Down”の所までくると盤石の態勢だったが、愛されるバンドになったことを実感したライヴだった。

4位 スネイル・メイル(7/30 WHITE STAGE)

Kazuma Kobayashi

Photo: Kazuma Kobayashi


サウンドチェックで鳴らされているファズのギターの音からして素晴らしい。渇いているのに芯がある。これはいいライヴになるんじゃないかと思っていたが、期待を上回るようなライヴだった。リンジー・ジョーダン嬢はオアシスのTシャツを着用し、ベーシストはバケットハットで、UKかと突っ込みたくなるが、USだろうがUKだろうが90年代インディをイミテーションではなく、今として鳴らせてしまうのが彼女の魅力だと思う。新作のタイトル曲“Valentine”から始まったライヴは、一切の嫌な虚飾がなく、デビュー作の“Speaking Terms”や“Golden Dream”といった珠玉の楽曲が披露されていくもので、MCで語りかける言葉も冗長ではないが、そのまっさらな人柄が伝わってくる。時に芝居がかった表情なども見せるが、それもあくまでコメディ的タッチの範囲内で、芯にあるのは飾らないパーソナリティだ。ラストはもちろん名曲“Pristine”だったのだが、真っ当であることの素晴らしさを感じるライヴだった。

3位 ムラ・マサ(7/31 WHITE STAGE)

Masanori Naruse

Photo: Masanori Naruse


海外アーティストとして今年のフジロックで最後の出演となったのがムラ・マサだったのだが、素晴らしい締めくくりだったと思う。2016年のフジロックで衝撃を与えた彼だが、あの時はまだ荒削りなところもあったし、プロダクションという点では発展途上のところもあった。けれど、9月にサード・アルバム『デーモン・タイム』が出ることが発表されているけれど、そのディスコグラフィーでちゃんと武器が揃っていることが証明されたのがこの日だった。“Demon Time”から始まったライヴは3曲目の“1 Night”で早くも最初のピークを迎え、“I Don’t Think I Can Do This Again”も観客からの歓迎を受け、中盤はリリースされたばかりの“2gether”、“Blessing Me”、“Hollaback Bitch”といった新作の曲で盛り上げていく。もちろん、最後には“What If I Go?”や“Firefly”といったアンセムが待ち受けているのだが、コロナ禍を経て、すっかり大人になったムラ・マサの姿がそこにはあった。

2位 ジャック・ホワイト(7/30 GREEN STAGE)

David James Swanson

Photo: David James Swanson


今年リリースした2連作からの名刺代わりの1曲“Taking Me Back”からだったのだが、2曲目の“Fear of the Dawn”が始まった瞬間に爆笑してしまった。ロックンロールを一度もクリシェにしなかった彼が奏でるギターは強度が違う。3曲目には早くも“Dead Leaves and the Dirty Ground”が演奏されて、これがヘッドライナーのステージであることを実感する。カルチャーが多様化した現代においてもヘッドライナーというのはできる限り多くの人を満足させる責任が伴うわけで、今のジャック・ホワイトがいるのはそういう場所だ。そこからは“Hotel Yorba”もデッド・ウェザーの曲も“Fell in Love With a Girl”も飛び出し、華々しく中日を彩っていく。アンコールではザ・ラカンターズの“Steady, as She Goes”も演奏され、最後はもちろんあの曲だ。マイクを通さずに歌ってみせるジャックの姿は求道者のようで、ロックという言葉がどんどん形骸化していく時代を射抜く痛快なステージだった。

1位 ホールジー(7/31 GREEN STAGE)

Jasmine Safaeian

Photo: Jasmine Safaeian


あの日、苗場のステージに立っていたのはザ・チェインスモーカーズとの“Closer”でメガヒットを飛ばした女性シンガーでもなければ、再生回数を積み上げるためのコラボレーションの女王でもなかった。そこにいたのは現在27歳で、昨年母親になったアシュリー・ニコレット・フランジパーネその人だった。かねてから女性としてのメッセージが話題になっていた“Nightmare”から始まったが、目も眩む黄色の髪とボンテージ風の衣装でステージに上がったホールジーはその存在感からしてまったく違った。トレント・レズナーらを迎えた最新作も象徴的だったけれど、様々な観点において尊厳としての闘いのためにパフォーマンスをする姿がそこにはあった。アンチを糾弾する“Easier than Lying”、『マニック』からの“You Should Be Sad”や“Graveyard”、オンラインがあくまで魑魅魍魎の跋扈する他愛もないファンタジーだとしたら、ライヴにあるのは強烈な生身の本音だった。フジロックのようなフェスティバルに足を運び続けるのはこういう瞬間を目撃できるからなのだと思う。

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